十話 心のささえ
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休憩を終え、拠点へ戻ると言う近晴の提案にのり私達は駅を出た
相当数の魔物を倒し、私は飛躍的に成長していた
殺されかけた猛禽類も鎧ごと分断し、その成長ぶりは近晴を驚かせた
「飴雪は異世界の力と相性がいいみたいだな 砂の吸収が悪いやつはもっと時間がかかる」
先程の顔と違い、歳相応に笑んでいる
道中の戦闘はとてもスムーズに進んでいた
しかし、それは突然訪れた
所々身体の爛れ眼球の無い小鳥を殺したところで、包丁が澄んだ軽い音とともに砕け散る
私は知らず目を見開き、固まる
「っ氷結」
それを目にした近晴が突然その破片へと水魔法を飛ばし、熱魔法で氷らせた
咄嗟の出来事で上手く直撃したのは比較的大きな破片のみだった
反射的にそれを両手で受け取る
さらさらと、他の破片は黒い砂となり消えた
本意がわからなくて近晴を見る
彼自身困惑した顔だったが、すぐに新たな魔法を紡いだ
「星屑の蔦」
するすると伸びた蔦は私の持つ氷づけの破片を包み、輪を作る
近晴はそれを私の首へそっとかけた
「あまり大した魔法じゃないから身体的負担は少ないと思う 肌から離さなければずっとそのままだから」
彼は戸惑いがちに私を伺いそっと告げた
その様子に思わず笑みが漏れる
『こんなことしてくれなくても良かったのに でもありがとう 失くしたくないモノだったから』
蔦と氷のネックレスを撫でながら眼を見て告げる
近晴は少し安心したように、照れ臭そうに笑った
丸腰となった私は近晴に戦闘を任せ、周囲の様子に気を向ける
電柱やガードレールに突っ込んだまま停まった車
割れた窓ガラスの破片
大きな地震や嵐など天災でしか、それもテレビの画面越しにしか見たことがないほど、惨憺たる様相をしていた
大人も子供も、道端で死んでいる
多くは魔物に喰われ、その形を留めていない
せいぜい、上の人間が折り重なるように庇った人達だけが綺麗なまま倒れている
こんなことが無ければきっと彼らは今日も変わらぬ日を過ごしていたのだろう
私と、同じように
失われた平穏を痛みと共に実感する
悲しさはなかった
ただ空しかった
一歩間違えれば死んだこの命だ
死ぬまでは生きる
例え、人間でなくなったとしても




