表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/29

旅立ち

その記念すべき日、俺は激痛と共に目が覚めた。


「痛てぇっ!なっ…なんだ!?」


飛び起きたいが、それも出来ない。体がひたすら重かった。


「カイン、おはよ♪」


ミュウ、お前か…。なんで飛び乗るんだ。


「降りろ」


「やぁよ。1人で旅にでようなんていう薄情者は、こうしてガッチリ捕まえとかないと!」


「痛てっ!痛いって!ごめん、悪かったからっ…ギブ!」


思わず悲鳴をあげると、ミュウは満足したのか、フン!と鼻を鳴らして俺の上から退いてくれた。


ちくしょう…!マジで痛かったし!


「なんでお前がいるんだよ…。」


「アリアが教えてくれたの。」


そっかぁ…アリア、心配してくれたんだな。


ミュウとは、ガキの頃から兄妹みたいに育った。


俺の育ての親であるアリアに、俺を預けた冒険者の1人、聖魔導師がミュウの親父だ。俺とミュウは、いつも一緒に戦闘のイロハを叩きこまれていた。


そう、仲がいいからこそ、黙って旅に出ようと思ってたんだ。ミュウはひとつ年下だし、旅に出るとしてもまだ早い。


暫く会えないと思うと、もしか、うっかり泣いちゃうかも……

イヤ、大丈夫だとは思うが!



「ゴメンな、黙ってて。俺、今日から旅に出る。…アリアの事、頼むな。きっと淋しがるから…。」


「ばか!」


なぜか一喝された。


「私のカッコちゃんと見えてる?私も行くに決まってるでしょ。」


なんで…?


「うわぁ…超マヌケ面。」


ミュウは呆れたように腰に手をあて、こっちを睨みつけてくる。


なんなんだよもう…黙ってると可愛いのに。


ああ、確かに白いレザーの軽鎧。揃いの白いブーツ。腰にナイフ。愛用の錫杖。柔らかい金色の髪も今日はポニーテールに纏められている。どこからどう見ても旅支度だ。


でも、なんでだ。

まだ15歳になってもいないのに。


「カインが旅に出るって言い出すのなんて、お見通しだから。前々から、ママにも長老にも、アリアにも、話は通しといたし。根回し、大事だよね。」


え…話を通すって…根回し…?


「カインがもし旅に出るなら、私も一緒に行くって。二人の方が生き残る確率高いでしょ?」


分かったら支度してよ、と急かされる。


呆然としたまま、着替えて。

朝メシ食って。

アリアに見送られて。

村では会う人会う人、激励されて。


俺は旅に出てしまった。

ミュウと一緒に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ