後編
「話がしたい」
夕食を食べ終わり、食器の片づけがすむとソファに座っていた香織がそんなことを言ってきた。並ぶようにしてソファに座った。
「なんだ?」
「あのね……」
シーンと静まり、雨の音が聞こえる。
「私、ずっとこのままでいいと思ってた」
「このまま?」
「うん、人としゃべるの得意じゃないし黙って誰ともしゃべらなければそれで人生が終わっていくんだと思ってた。だから、だからあのね。本当は毎日、話かけてくれたのがすごくうれしかった」
「俺が?」
「うん」
毎日話かけられたのは、好きだからだ。香織がそうしようもなく好きだから。今だって、いやいつだって香織といると心臓の鼓動が早くなった。
「だから、あのね」
どうせなら、今、言っちゃおう。明日ではなくて今日。このお願いを聞いたら告白しよう。好きだと。
「私と、」
香織がこっちを向く。目と目が合わさる。長いまつげと大きな瞳。吸い込まれそうだった。
「友達になってください」
「え?」
「あなたなら打ち解けられそうだから」
「……」
「ダメ?」
「いや、俺は全然大丈夫だよ」
あ~あ、やっちゃった。完璧タイミングのがした。てか先こされた。まさかそうくるとは。この空気で告白とか……無理だ。
「なんか、不満そうな顔してる」
「え?いや、全然まったく。うれしいよ。友達になれて」
めっちゃ動揺してるし俺!
「じゃあ、帰って」
「は?」
「帰って」
ちょっとまて、確かにもう外も真っ暗だけどその流れでそれはないんじゃ。俺の告白タイムは!?
「今からお風呂だから」
「お風呂ね」
「うん、もしかして私の裸見たい?」
「いや、ぜ、全然」
「さっき全部見られた」
そのトラウマを今もってくるか!!確かにあの、胸の膨らみは……
「謝って」
「すみません」
なんかいろいろと申しわけなってきた。てか、こんなキャラだったけ!!でもよしとするかこんな打ち解けられたし。あとは告白だ。明日までにするって決心したからなぁ。どうしようか。
「鞄、そとに捨てるよ」
「あんたは鬼か!!」
「じゃあ早く」
「はぁ~」
なんか、ため息ばっかりしてる気がする今日だけで何回したっけ。
「わっかた。帰る、帰るから」
窓から捨てられそうになった鞄を返してもらい、玄関まで行く。
「ここまででいいぞ」
「うん、早く足治す」
「おう」
「あと、治ったらどこかつれてって」
上目遣いキター!やばい、これは卑怯。絶対ことわれない。でも、友達としてなんだよな。
「まかせろ」
「じゃあね」
「ああ、また」
バタン
ドアが閉まった。
「はぁ~」
これでいいのか。明日、告白する。その決心は絶対にかわらない。でも、友達にもなれたしこままでいいか。十分だよな。
だが、俺にもプライドっていうもんがあるんだ!!
俺は振り返りインターホンを押す。
「なに?」
ドアから俺の好きな、大好きな女の子が出てくる。
「大事な話がある」
「なに?」
「俺は、香織の友達にはなれない」
「え?」
戸惑ってるようだ。だがもう止められない!
「俺は、本当は香織。お前のことが大好きだ」
「わ、私のことが?」
まっすぐと香織の目を見る。
「だから、今まで香織に声をかけることができたんだ。何度無視されてもここまでがんばってこれたんだ。俺は友達なんかじゃなく、恋人にしたい。香織を」
言った。言ってやったぞ。俺!
香織は顔を真っ赤にしていたが告白が終わると呟いた。
「帰って」
一瞬その言葉を聞いて頭の中が真っ白になった。
そんな、やっぱり俺じゃあダメなのか。友達以上にはなれないのか。
「帰って、あなたがいるとなぜか胸の鼓動が止まらない。苦しいぐらいにドクンドクンてなって、痛いの。こんな気持ち初めて。これ以上私を苦しめないで」
香織が自分の胸に手をあてていう。
「私は、私は……」
香織の体がふらついた。そしてそのままバランスを崩し俺に向かって倒れかかってきた。いきなりの出来事で驚いたがその小さな体を受け止める。
すると、唇と唇が触れ合う。そして香織がギュッと抱きついてきた。
その時だけ時間が止まった気がした。時間が動き始めると俺から離れた。うつむいていて表情が伺えない。
「い、今のは……」
「足、痛くてちょっとよろけただけ。もう大丈夫」
そう言ってごまかし顔をあげた。その顔は俺が見た中で世界一いい笑顔だったと思う。そしてこういった。
「足、治ったらデート連れてってね。けんくん」
バタン
ドアが閉まる。
「……」
エレベーターで1階まで下り、マンションの玄関を出る。今、起きた出来事が頭のなかで繰り返されていた。
「……」
ザーーーーーー
未だ雨が降り続けている。
右の頬をつねる。左の頬をつねる。痛い。夢じゃないんだ。信じられなかった。唇に触れてみる。
「……ハハ」
夢じゃない。この俺が、香織と。笑える。すげぇ笑える。初めて名前も呼んでくれた。傘を鞄の中にしまった。叫びたい。全身でこの喜びを味わいたい。
「はぁ~」
ため息をつき、雨の中にかけだした。全身ずぶぬれになりながらも全力で走る。雨の水が気持ちいい。道には誰もいない。いるのは俺だけ。肺に空気をめいっぱい入れ、叫ぶ。
「バカやろうぉぉぉぉぉぉ!!!!」
…………ども。
遅くなりましたorz
最終話です。これで完結です。
これからもがんばっていこうかとw
不束者ですがよろしくお願いしますorz




