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夢の欠片  作者: 神船一
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彼女

 彼女は路地裏を歩いていた。ただ黙々と歩いていた。誰にも関わらせず、自分からも関わらない。それが彼女の生き方だった。顔立ちは中性的で男でも女でもどちらでも通用する美形の顔、だが彼女の体つきから女という事が分かる。胸のふくらみはささやかながら小さすぎずもせず、大きすぎずもない。腰は引き締まり、全体的に丸みを帯びている体型。髪は肩で揃えられている。生まれてから彼女は肩よりも髪を伸ばしたことがない。だが、十代の肌の瑞々しさは失っていない。

 彼女は常に身を危険に投じなければならない彼女にとってできるだけ自分を軽く、素早く動けるようにしておかなければならない。彼女の歩き方からは、見る人が見れば武術に卓越した者だという事に気が付くことだろう。一切体の軸にぶれがない。

「ヘイ。彼女、ちょっと俺らと遊んでかない?」

始めに声をかけてきた、男の取り巻き達がギャハハ、と品の無い笑いを浮かべる。知能の足りていなさそうな軽い声達が彼女をいらだたせる。彼女は、昔から美人だったので、こういったバカの相手にも手馴れている。

「……どけ。」

ドスの聞いた低めの声で男たちを睨み、一蹴する。だが、男たちはひかない、男たちも同様にこういった行為に手馴れているのだろう。ちょっとした事では諦めない。懲りずに彼女へと絡み続ける。自分たちが代金は払うから、や。帰りは送っていくから、などの。下心が丸見えの事ばかりを吐き続ける。それが、余計に相手に悪印象を与えていることを理解しているのだろうか。そう、彼女は疑問を持つ。だが、彼女は歩みを止めない。男たちもあきらめずに彼女に付きまとう。一人が彼女の前に、二人が左右、最後の一人が彼女の後ろへ、完全に彼女は包囲されている。

 相手は4人。対して彼女は1人、この場面だけを見た人がいたら、十代の女の子が男たちに囲まれている、圧倒的に彼女が不利な状況が目に映る事だろう。だが、彼女にとって単なる不良4人衆等脅威でない。ふと、彼女は生ごみの入っていそうな異臭を放つ袋を見つけた。そこで、歩みを止めると男たちは承諾したのだと思い込み。彼女の右にいた男が肩に手を伸ばそうとする。だが、その手が彼女を掴むことは無かった。彼女は身を少し沈め男の手をかわす。そして、立ち上がりながら拳を男の胸に叩き込む。人体には圧倒的に弱い部分が存在する。そこを的確につくことによって一撃で男を撃沈する。男はそのままゴミ袋へと倒れ込む。

 急に場面が変わったことに追いつけていない、左側の男にも拳を叩きこむ。こちらもあっけなく撃沈する。ここで、やっと前後の二人が反応を見せる。後ろの男は拳を構え、手前の男はナイフを突き出す。彼女も小刀は携帯しているが使うほどの相手ではないと判断した。彼女はナイフが突き出される前に男の顎を膝で蹴りぬき黙らせる。振りぬきつつ、後ろの男にも蹴りを入れる。

 前の男と後ろの男がほぼ同時に倒れ、路地裏にはネズミの鳴き声と彼女の呼吸音と不良たちの荒い息遣いのみが残される。そして、彼女は何事もなかったかのように目的地に向けて再び歩み始める。

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