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プロローグに近い世界観説明

※ありきたりな展開の作品です。

▼▽ プロローグ 戦いの宿命 ▽▼


「あれは……」

 荒野に立つ少年が遠くを見て呟いた。少年の向いている方向には、対峙したら最後だと思える程の印象を持つ巨大な赤い虎がいた。


 赤い虎の名称は正式には鮮血虎サーベルブラッドといい、とても獰猛で金属すら断ち切る爪と牙を持っている事で有名だ。体表は血の様な赤と艶のある黒の二色の毛で虎模様に覆われている。その赤と黒の毛皮は、禍々しい色合いを好む一部の人に高い需要がある。

 鮮血虎サーベルブラッドの魔物としての脅威度は五レベルだ。五レベルは決して低い物では無い。完全武装した人間の脅威度が三レベルと設定されているからだ。

 鮮血虎サーベルブラッドと一人で対峙している者がいると耳に入れば、


「そいつは自殺願望者だ」と言われてもおかしく無いだろう。


 少年から動く気配は感じられなく、少年は鮮血虎サーベルブラッドをただ見ているだけだ。

 少年の見ている鮮血虎サーベルブラッドの大きさは体長六メートル・体高二メートルで種族的に見ても大きいほうだ。

 鮮血虎サーベルブラッドはすでに少年を目標として補足しているのか、回りに危険が無いか周囲をうかがう様にしながら、少年を逃さないように視線を向けているようだ。

 風で草木が揺れて砂埃が巻き上がった。太陽は頂点にあり、時刻は真昼頃だ。

 鮮血虎サーベルブラッドが少年に向けて静かに駆け出した。周囲に危険が無いと判断したのだろう。


 少年はさほど鮮血虎サーベルブラッドを脅威として捉えていないのか、構える様子も見せない。

 少年の印象は、年の頃十台前半から多くとも十代後半といった年若い印象を受ける。まだ女性のような男性のようなどちらとも判別の付かない中性的な顔立ちだ。

 体長は百七十センチから百六十センチの間と言った所か。線の細い体からはあまり力があるように思えない。目は黒く頭髪も黒く肩までない程度の短髪だ。

 体の全身はボディスーツのようなピッタリした物で覆われており、その上から黒いパンツと黒いジャケットを着ている。

 左腕には腕を隠す程度の直径四十から五十センチ程度の丸い盾が装備されている。右手には何も持っていない。

 腰に剣の装着された鞘が装備されており、剣は真っ直ぐな直剣で刃の刃渡りは八十センチと言った所だろうか。靴は特色のない目立たない物だ。服と身に付ける物を選ぶセンスはあまり良くないのかもしれない。


 鮮血虎サーベルブラッドが少年に向けて駆ける。少年はまだ構えない。

 鮮血虎サーベルブラッドが間近に迫り、後数歩で飛び掛れる位置に着く、そんな所でやっと少年は腰から剣を抜いた。

 鮮血虎サーベルブラッドに対する少年の構えは、胸を盾で隠すだけの隙だらけのように見える。

 だが、鮮血虎サーベルブラッドを一人で相手するつもりなのだ、それは巧妙に作られた隙なのだろう。


 少年と鮮血虎サーベルブラッドが間近に対峙した所でこれから激戦が繰り広げられるのが予想された。

 鮮血虎サーベルブラッドが少年の正面で止まり、大きく右腕を振り上げ、爪がギラリと光る。体長に比例する巨大な爪が刃の様に見える。

 鮮血虎サーベルブラッドが右腕の爪を右下に振り下ろす。その攻撃に対して、少年は胸に盾を構えたまま爪の下に飛び込む事で対処しようとした。


 見ていれば誰もが少年の正気を疑ってしまっただろう。

 当然鮮血虎サーベルブラッドはすぐに右腕の軌道を左下に変える。少年は鮮血虎サーベルブラッドの右腕が軌道を変える瞬間に、鮮血虎サーベルブラッドの右側に飛び出した。

 少年は飛び出すと同時に左手を鮮血虎サーベルブラッドの右手の爪に合わせる様に振り払った。普通ならば少年の手が弾き飛ばされてしまう。そうとしか思えないだろう。

 だが、あろう事か少年の左手は鮮血虎サーベルブラッドの右腕を弾き飛ばしてしまった。盾と爪に火花が散っている事からその激突の凄まじさがうかがえる。


「ウアァァァッ」

 少年は鮮血虎サーベルブラッドの右腕を弾いた後も止まらずに、裂迫の気合の声と共に虎の喉元に飛び込んだ。飛び込むと同時に右手の剣が振り上げられる。

 無謀な事に右手の片手だけでだ。あの太い首に対して片手で剣を振るうなど無謀の極みだ。ましてや鮮血虎サーベルブラッドの体毛は強い伸縮性と元に戻ろうとする弾性が強い。片手で振った剣など体毛に絡め取られてしまうだけだろう。

 だが、少年は苦も無く剣を振り切ってしまった。


 鮮血虎サーベルブラッドに変化は無く、振り下ろし弾かれた右腕を地面に着けたまま動かない。

 少年は敵の喉元という絶好の位置で、振り上げた剣を振り下ろすように構え直した。

 再度の攻撃をするかに見えた少年は、鮮血虎サーベルブラッドの攻撃の予兆を感じ取ったのかすぐに右側に転がってその絶好の位置を捨てた。少年はかそこから更に一歩下がり、胸元に盾だけを戻して剣の構えをといた。


 鮮血虎サーベルブラッドの首から血が吹き上がる。鮮血虎サーベルブラッドは自分が切られた事にも気付いていないのか、それとも斬撃が重要な神経を断ち切ってしまったのか動かない。

 鮮血虎サーベルブラッドは無残に地面に倒れ、少年は返り血すら浴びずに勝敗は決まった。鮮血虎サーベルブラッドにとっては不幸な事に少年は強すぎたようだ。


 少年は皮をはぐ価値も無いと思ったのか、すぐに振り返り歩き出す。戦闘が終了したばかりだと言うのに周囲に警戒する気配も無く、ゆっくりと歩いている。

 その姿は鮮血虎サーベルブラッド程度、所詮雑魚だったと言わんばかりだ。

 少年が足元を注意深く見詰めて歩く。足元に黒く四角い石が見えて、それに近づいた地点で立ち止まった。しばらくして、立ち止まった少年の体が淡い光りを放ち始めた。


「今助けに行くから待っていてくれ」

 少年がそう言った直後、少年の体は強い光りを放ちその場に何も残さずに消え去った。少年は少年の大事な者を助けに行ったのだろう。

 少年の大事な者を害した者は少年の相手をする事になる。その者は少年の強さを知らなかったのだろうか? その者の結末が予想できてしまって哀れでならない……

 


 少しこの惑星の説明をしよう。ここは惑星ザガルディア。

 現在は人類が版図を拡げつつある星であり、千年の過去に、破壊神イリアシア七魔王ペレッグス率いる魔公オブレス達によって人類が滅亡寸前にまで追い込まれた星である。

 人類が滅亡を回避するまでの経緯を説明しよう。


 人類と魔公オブレスは遥かな過去から互いに争っていた。争っていた理由は単純で、大地の覇権を握るためだ。人類と魔公オブレスは何度も大規模な戦争を起こしたが、どちらかが一方的に勝つと言うような事はほとんどなく、戦争は拮抗状態だった。

 千年程前に破壊神イリアシアと呼ばれる存在が突如として出現すると、人類と魔公オブレスの拮抗状態は即座に崩れた。原因は破壊神イリアシアの出現した位置が人類圏だったためだ。

 破壊神イリアシアは人類だろうが魔公オブレスだろうが構わずに攻撃を仕掛けたが、人類は己の生存圏を確保するために戦うしかなかった。


 人類は破壊神イリアシアの力の前に何度も敗北し、魔公オブレス達が敗北して力の弱った人類を見逃すはずがなかった。人類は守勢に回るしかなく、多方面から魔公オブレス達に侵略される事になり、数多の国が滅んでいった。

 全てに敵対していた破壊神イリアシアだったが、魔公オブレス達と争っていたのは出現した初期の頃だけであり、中期からは魔公オブレス達の旗頭となっている。

 その事から破壊神イリアシア魔公オブレス達に取り何かの取り決めがあったのは間違いないが、詳しい事を知る者は当事者である魔王と魔公だけだろう。


 破壊神イリアシア魔公オブレス達による攻勢に、人類の国が数えるほどしかなくなった。その時に、三神エ・セと太古から信仰される三柱の神が大地に降り立った。

 三神エ・セは自らが戦う事はなかったが、人類に十二の神器を与えた。十二の神器は人から十二の英雄を選び出し、人類は十二の英雄を旗頭に反撃に出た。


 人類が反撃に出た結果、多くの魔公オブレスを討ち取り、破壊神イリアシアを魔の最奥地アランシアに押し込めて撃滅したとされている。

 破壊神撃滅時に七魔王ペレッグスは人類側に付き一度は人類を助ける力となったが、後に反旗を翻し、現在では滅びの七魔公アグレサス・オブレスと呼称される事となった。


 少し解らないと思われる用語を説明しよう。

 三神エ・セとは、このザガルディアが生まれた時から存在する神の三柱を指す。大地を守護する神の名を大地神アルヴァリス・大いなる海を治める神の名を大海神ベタリクルス・空を駆り見守る神の名を大空神ガルジアネス三神エ・セの下に様々な属性の神と精霊が従っているとされているが、ここではそこは割愛しよう。


 破壊神イリアシアとは神の一柱と呼ばれているが、実際は千年前に突如として出現し、この星を荒らし回っただけの存在だ。神と呼ばれているのはその超絶的な力の怒りを買わないためであり、復活を恐れるがためである。

 魔公オブレスとは魔を総べる存在達で、非常に強力な固体の魔物や種族の知恵持つ者達の総称だ。魔公オブレスは多くの魔物や種族を統制して人類に対抗し、現在でも世界各地で紛争や戦争を巻き起こしている。魔公オブレスは実に様々な種族から多数出現している事がわかるだけで、過去・現在において数の把握は出来ていない。


 破壊神イリアシアが魔物の側から失われてから、四大魔公ギード・オブレスと呼ばれる存在と、滅びの七魔公アグレサス・オブレスと言われる存在が魔公オブレスの旗頭となった。

 どちらの存在も、数百年前から存在が確認されていないため、現在はおとぎ話のように話に出てくるだけの存在となっている。



 説明を止めて人物に話を戻そう。舞台は移り変わる。

 ここは無機質な部屋で、部屋の中には少女が一人佇んでいる。少女の横には培養装置と言える生物を培養するカプセル状の装置とそれを操作する端末がある。部屋にはそれ以外何も無い。

 部屋は二十メートル四方と言った所で、高さは四メートル程度だ。中央に太い柱が建っており、その柱が部屋を正方形に四分割に区切っている。少女の向かい側の壁に金属製の扉があり、扉は壁の中心点にある。


 長い銀の直髪が時々揺れ動く。その銀の直髪は部屋に佇む少女の物だ。腰まである綺麗で滑らかな髪は、傍にいれば思わず手に取りたくなる事に違いないだろう。

 少女は薄く青い体に張り付くようなボディースーツを体にまとい、その上から先程の少年と同じ黒いジャケットを羽織っている。体形を強調するボディースーツのためボディラインが美しく見える。

 胸元にある直径十センチ程の丸い球形の水晶だけが装飾品のようだ。常に無表情で作り物めいた顔だが、人形のように精巧で美しい。身長は百五十五センチ程だろう。

 先程の少年と似たようなボディースーツであり、少年と同じ黒いジャケットを羽織っている事から、少女と少年は関連性があるように思われる。


 少女は何も考えていないのかただ立ち呆けているだけだ。少女がずっと立ち呆けていると正面にある扉が開いた。

 金属製の扉が開いて、扉から緑色の皮膚をした人型の生物が複数入ってきた。人型の生物の身長は百六十センチから百八十センチ程度で、筋肉が多くついているのが見える。


「ココラ辺ハ誰モ居ネーナ」

「居ルジャネーカ!」

 人型の生物同士が少女を指して会話しているようだ。

 人型の生物は金属製の武具を装備をしており、皮膚が緑色であることから人ではない事がわかる。緑色の皮膚をした人型の生物はゴブリンに多い。

 部屋に侵入した人型の生物はゴブリンだろう。ゴブリンは合わせて七匹が扉から浸入しており、バラバラな装備をしている。金属製の鎧と直剣と盾、防具は同じで弓を持っている者など様々だ。


「降伏スル者ハ家畜トシテ生カシテヤル。ソレ以外ハ殺ス」

 一匹のゴブリンが前に出て剣を突き出し、少女に命令するように言った。

「そう。私はここで敵対する者全てを排除するように命令されています」

 少女は風鈴のような綺麗な声で、機械のように高低無い口調で応答した。少女は興味がなさそうにゴブリン達の方向に手を向け、胸元の水晶に左手を当てた。


「死ヌンダゾ? 良イノカ?」

「排除を開始します。風の精霊よ……」

 少女の胸元の水晶が光りを放ち部屋の中に風が吹き荒れる。少女の口からは魔法の詠唱のような言葉が聞こえる。

 ゴブリン達が歓声を上げて果敢に少女に攻め立てようとする。だが、少女が放ったと思われる風によって、ゴブリン達は転倒させられたり、吹き飛ばされたり、切断されたり、様々な方法で無残に排除されていっただけだった。

 時間にしてわずか十数秒。それだけの時間で部屋の中が血臭で覆われた。


「排除完了しました?」

 少女が首を傾げてそう言った。

 致命傷を負っていなさそうな倒れたゴブリン達を、少女が見えない刃で切断していく。止めを刺しているようだが、生きていようが死んでいようが関係ないようだ。

 しばらくの時間がたち、また多数のゴブリン達が少女の待ち構える部屋に入る。


 少女以外にこの部屋で動く者はいない。それが結果だ。

 少女は変わらずに、ゴブリン達の死体だけが部屋に積み重なっていく……それが幾度も繰り返される。

「また来たの」

 扉が開かれて、少女がまた手を向ける。ゴブリン達がどれだけ来ても結果は変わらないだろう。作業のように淡々と無慈悲に殺戮を繰り返す残酷で美しい死神だ……



 この惑星では一つの禁忌がある。その禁忌について少し説明をしよう。

 禁忌を破る事は普通の生物にとって難しい事で、人類にとってはとても簡単な事だ。

 禁忌を犯す行為が露見する・しないに関わらず、魔物大発生バーン・ブラストと呼ばれる事態を引き起こす事となる。魔物が単に大発生するだけならば、人類は繁栄の為に禁忌を止める事など考えなかっただろう。


 魔物大発生バーン・ブラストが発生すれば、魔物が大量に人類圏に攻め込むだけでないのだ。魔物大発生バーン・ブラストと合わせて、上級魔公ハイ・オブレスと呼ばれる魔を総べる者の上位存在が、人類圏に確実に侵攻してくるのだ。

 現代の十二の英雄でも複数人集まらなければ上級魔公ハイ・オブレスには勝てない。子孫に血と神器が引き継がれている十二の英雄が複数人いてようやく勝てる位なのだ。上級魔公ハイ・オブレスが現れてしまえば、神器持たぬ人々はただ三神エ・セに祈る事しか出来ない。


 禁忌をこのままここに記す事は人類の危険に繋がる。他の書物を読み漁ってもその危険性を理解出来るはずだ。書物を読み続ける意思があるのなら判明する事もあるだろう。


 人物に話を戻すとしよう。場面は再度移り変わる。

 ここの周囲の壁は無機質で、先程の少女の居た部屋と壁が同じような材質をしている事から、先程の少女と同じ建物内のようだ。

 一人の少女と複数の同じ服を着た者達。青い警備員の制服を着たような者達が数十人通路を駆けている。

 通路の広さは高さも幅も二メートル半程度。狭くはないが広くもない。


 少女から感じる気品と気高さが、他の者と少女が一線を画す存在である事を証明していた。一際通路が広くなった場所で彼らは立ち止った。立ち止った場所は高さが三メートル程度で幅は縦横六メートル程度ある場所だ。休憩所のようだ。


「ここの棟はまだ支配が薄い? 人が少ないはずなのに何故? でも、守りが薄いからといってこのまま進んでは、通路で挟撃された時にまずいですわね……」

 少女が来た道を振り返る。ウェーブのかかった綺麗に手入れのされた金の髪が流れる。腰元まである髪は先端がクルクルと巻かれている。

 体に纏うのは金で刺繍された質の良い赤い軍服で、下の部分は膝上まであるスカート状の物だ。スカートの下は黒いストッキングで守られており、更にその下には紐で縛る形状の膝近くまであるブーツを履いている。

 手を守る為に白い絹製の手袋を付けており、その手には水晶で作られた美しい杖が持たれている。杖の先端部分が赤い水晶で作られており、その部分の形状からしても鈍器として使用できるようだ。

 軍服の上から胸元まで金色のリングが大量に連なっている。他にも様々な宝石の付いた装飾品を付けておりセンスの高さがうかがわれる。だが、それらは体全体を覆う白衣でほとんどが隠れてしまっている。


「あなた達はお人形さんまでの通路を確保なさい。わたくしは敵の進行を食い止めるために戦いやすいここで一旦待ち構えますわ」

 少女が制服を着た者達に命令する。


「殿下。それはいけません。我々が」

 制服を着た者達のリーダーらしき者が一歩前に出て少女に提案しようとする。だが、少女は首を振りすぐにそれを却下する。


「あなた達がどれだけいても壁位にしか役に立たない事はわかっておりますわ。早く命令を復唱なさい」

「殿下……ハッ。我々は人形までの通路を確保するために先行します」

 護衛のリーダーらしき者が少女に向けて敬礼する。他の制服を着た者達も続けて敬礼した。少女は敬礼を確認した後頷いて、正面を向いた。


「よろしい。行きなさい」

「数名に背後を守らせます。殿下。御武運を」

 数人の護衛が少女の背後を守り、他の数十人は先の通路へと進んでいった。

 少女は手に持つ杖を構えて正面を睨んだ。正面には武装したゴブリン達が複数見えている。少女が魔法の詠唱を行い、手に持つ杖でゴブリン達を打ち払う。


「火の精霊よ! 私に力を貸しなさい!」

 少女は杖でゴブリン達を打ち倒しながら、時折火炎を放射する攻撃をも同時に行いゴブリン達を一人で蹴散らしている。少女がゴブリン達を蹴散らしていると、少女の後方から断末魔と絶叫が聞こえた。

「殿下! 向こうからも敵襲です。奴らは消耗を気にしておりません。狙いはどう見ても殿下です。我々が今から血路を開きます。どうか先にお逃げください」


「今わたくしがここを離れたら間を持たずに崩壊し全滅します、わっ!」

 少女がゴブリン達を打ち払いながら答える。

「悔しいですがもう手立てはありません、わっ。あと少しでわたくしがこちら側を終わらせます。出来るだけ長く持ち応えて下さ、いっ!」

 少女の背後で構える護衛達は、挟撃のために逆方向から来たゴブリン達に構えた。


「ハッ。お役に立てずに申し訳ありません」

「あの赤い奴さえ来なければ!」

「くそっあの赤い死神さえ来なければ……」

 護衛達が通路に盾で壁を作り様々な残悔の言葉を出し始めた。

「そうですわ、ねっ! 魔公オブレスクラスさえ来なければ何とかなりましたわ、ねっ!」

 少女が最後の一匹を打ち倒すと共に、通路の奥に増援のゴブリン達が見えた。


「ハァ……無駄口もこれまでかもしれませんわ。また、追加が来ましたわ」

「こちら側も来ます! 殿下が向こうを片付けるまで死んでも倒れるな! 殿下に三神エ・セの加護あれ!」

 背後で護衛達が戦いを始め、少女も再度ゴブリン達を打ち倒し始めた。少女に対してゴブリン達はあまり相手にならないようだが、何せ数が多い。

 少女がゴブリンを蹴散らし、護衛達がゴブリンの攻撃に倒れる……


 少女が前面のゴブリン達を全て倒した時、後ろの護衛は一人しか立っていなかった。だが、その護衛も服の変色具合を見るからには致命傷を負っているだろう。


「そっそんな。でも。わたくしは皆の死を無駄にするわけには行きません」

 少女は後方を振り返り、一度泣き出しそうな表情になった。だが、歯をかみ締めてこらえた。そして、冷静に敵の分析を始めた。

(向こうから来たからには少なくとも味方ではないですわね。雑魚だと良いのですけど存在感が違い過ぎますわ。魔公オブレスクラスがもう一体。魔力がほとんど無いわたくしには無理ですわね。せめて道連れに……)

 少女が絶望的な存在を前に魔法の詠唱をはじめた。


 ここまでに記された人物達の出来事は、全て同じ時刻に始まった出来事である。彼らは目的を遂げる事は出来るのだろうか。戦う定めにあるのだろうか。それとも……

 後は彼の追体験に期待するとしよう……


▲△ プロローグ 戦いの宿命 △▲

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