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裳羽服津vs風魔

 均衡を破ったのは、一本の手裏剣だった。

 スタ。スタ、スタ。


 続けて放たれた手裏剣を、風魔の隼人は瞬時に避けた。間髪あけずに茂みから現れた勘介が隼人にとびかかった。

 きいん!

 息もつかせぬ素早い攻防。


「あかり!」

 勘介に続いて現れた龍才とサエも、眼前の風魔に攻撃を仕掛けた。


 フッ、とサエは吹き矢を放つ。それを予測していたかのように長吉は刀でそれを打ち落とした。一方、龍才は組頭に襲いかかった。激しく剣を交えながらふたりは位置を移動する。


「おまえたち一族の身元を知ろうと思ったのだが……いた仕方ない」

 組頭の目に大きな殺気がみなぎった。


 あ、龍才がやられる。


 小夜とあかりはそう思った。

 利き手が使えない龍才の右側から、その刃はふり下ろされたのだ。


ガシッ!

龍才はなんと右手の小刀で受け止めていた。


 動かなかった右手で、組頭の刀をひき受け止めた後、左に流し二刀流の状態で戦いを始めた。

ぎりぎりの状況で、龍才は利き腕を取り戻したのだ。火事場の何とやらであった。


 一方、一番形勢が不利なのは勘介だった。

 隼人はめっぽう強かったのである。隼人は風魔ナンバーワンの腕前だったが、あまりに冷酷すぎたため長の候補から外されるような男だった。


 小夜はじっと隼人に狙いを定めた。勘介がまさにやられようとしたその瞬間、小夜はサリンジャーを再度発砲した。


 背中から胸に向かって弾丸は貫いたはずなのに、隼人は振り向き、血走った目で小夜を睨みつけた。


 あまりの形相に一瞬ゾッとしたが、すぐに小夜はあかりの手にあった懐剣を一緒に握ると構え睨み返した。山吹のかたきに敗れてなるものか。


 だがそれは一瞬のことだった。下から勘介が隼人の喉を裂いたのだ。

「ぐはっ」

 大量の血しぶきを吐いて、今度こそ隼人は倒れた。


「ザマミロ、雲才さまと山吹の仇をとってやったぜ」

 雲才の最期の状態を聞いていた勘介は同じように隼人の喉を斯き切ったのだ。そのまま立ち上がりながら倒れている隼人につばをかけた。


 そして大きく手をあげると「アスカ」と叫んだ。先ほどの灰色の鳥が上空から風を切って舞い降りてきて、勘介の腕に停まった。


「アイツを倒せ」

 サエと戦っている長吉を指さすと、アスカを停めていた腕を大きく振りかぶった。アスカは一直線に長吉に向かって飛行すると、ハヤブサのするどい爪で頭を攻撃しだした。


「いたっ」

 驚いた長吉はアスカの攻撃から身をかわすため、あっちこっちへ逃げだした。それと同時にサエの攻撃を避けるのは至難の業であった。


 その様子を見た組頭は自分たちが不利であることを悟った。

「引け、一旦引くのだ」


 四人組が二人になってしまった風魔は、ザッと茂みに紛れて逃げていった。

 後には、龍才とサエの荒い息づかいだけが森に響き渡った。



 きゅーい、きゅーい。


 その鳥の声に、勘介の肩に停まっていたアスカは反応した。キョロキョロと首を回すとバッと飛び立った。

「アスカ!」

 勘介が叫んだがアスカは戻ってこない。そのまま上空に上がると姿を消してしまった。


 全員がその様子を見ていたが、やがてほーほーほー、という声に耳をとられた。

 ふくろうの三回鳴きは裳羽服津衆の合図。


 ぞろぞろと木立の中から現れたのは、炎才をはじめとした裳羽服津衆たちだった。

「やっと見つけたぞ」


 きりりとした目には安心感を抱かせる微笑がたたえてあった。その顔を見た龍才をはじめ裳羽服津の四人は急に緊張感が抜けていくように感じた。


「親方……」


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