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現れた敵

第十一章

 龍才たちから、そんなに離れていない場所に小夜とあかりはいた。

 小夜は腕の中のあかりの顔が真っ青であることに気付いた。流している汗も脂汗である。


「どうした? どこが悪いのじゃ」

「少し……吐き気がするのです」

 気持ち悪いのを我慢するように目をぎゅっとつぶった。


 木立の中は涼しい風が吹いていたが雑木林だけしか見えず、休めそうな宿や家はどこにも見当たらなかった。目的の村落に行くには、この山を越えなければならない。


 小夜はあたりをきょろきょろと見渡して、一本のならの木元にあかりを降ろした。そこは少し平らになったスペースがあった。


「気持ちは悪ければ吐けばよい。少し馬を飛ばしすぎたようだ」

 背中をさすってやりながら声をかけた。


「申し訳……ございません。水を」

 体に入った毒を出すには水を大量に飲むしかなかった。二日前から食事はもうほとんど摂っていないのである。吐くものはなかった。


 さわさわさわ……

 木立を渡る風は気持ちよかったが、この調子では夜も冷え込むことが予想された。夏なので、野宿も視野にいれていた小夜は、自分が甘かったことを悟った。


 あかりを見ると瞼は蒼い影を作っていて尋常でない様子が伺えた。

 ハッと息を飲んだ。


 そう言えば家賢はあかりが毒殺されるかも、と言っていたではないか。

「毒じゃな?」

 その言葉にあかりは苦笑いするような顔で肯いた。


「なんとか食べぬよう努めていたのですが……なかなかに難しいものがありました。今日、月島さまが、あのようにとんでもない方法で乗り込んでこられる、と分かっていたら意地でも絶飲食を通しました」


「なかなかであったろう?」

「はい。面白ろうございました」

 あかりはニヤリと笑ったが、印象は薄かった。


 しばらくふたりは、楢の木元にじっとしていた。目をつむったままのあかりと、それをじっと見つめる小夜。


 遠くできゅーいきゅーい、と鳥の鳴き声が聴こえた。とんびのような飛び方をしているが、とんびではない。

 あのように飛んでいけたらよいのに。


 そう思ったと同時に、その灰色の鳥は直下降して何かを襲った。

「うわっ!」


 途端に、人間の男が悲鳴をあげながら灰色の鳥に追われて木立から出てきた。

「し、し! あっち行け!」

 バサバサと鳥を格闘している。


 と、同時に、木立から三人の男が仕方なさそうに顔を出した。


 小夜とあかりはキッと表情を引き締めた。



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