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襲撃

――きた――

 その時あかりは実感した。


 そう。

 ずっと待っていた時が来た。


「そちら高遠藩お預け・お靜の方とみた。その籠、こちらに貰い受ける」

 小さなほうの影が、よく通る声で発した。


 その声、その姿。

 小夜だ。


 あかりは目を見開きながら背中から胸に向かって何かが貫くのを感じた。その気のようなものは、一瞬にしてそのまま小夜の胸へとつながった。


 カショーン


 実際には音などしなかったが、ふたりは感じていた。

 そのまま胸の奥から熱いものがどんどん広がっていく。

『ああ、広がる』


 一方、鈴木隆興は相手が人間の女であったことを知り、俄然がぜん、我に返った。

「おまえら、何者だっ」


「こちら、そこにいるお靜の方に私怨を持つ者なり。我が手にて恨みを晴らしたくそうらええども、そちらが断るとあらば、このまま、大筒にてそこもとらごと吹っ飛ばす所存である。さあ、返答やいかに」


 うっと詰まった鈴木は、周りの者の顔を見渡した。誰もがどうしてよいか分からないようであったが、中には、ほとんど逃げ出さんとしている者もいた。


「わたくしが行きましょう」

 その時、あかりが口を開いた。


「し、しかし……」

「このままでは、そなたたちも巻きこんでしまう。どうせ、わたくしはどこかで処分される身。ここで賊に渡しても惜しくはありますまい」


 そう聞いても鈴木はぎりぎりとしていた。まだ体面を気にしていた。


「時間かせぎは許さんぞ。かせいだとて、これはライフル砲といってすぐに実弾が発射できる最新鋭の大筒なのじゃ。それ!」

 小夜は後ろにいた黒装束の旭に向かって手をあげた。


 その合図で旭は、大筒を少し前にやると火を点火し、そのまま発射した。

 ばああん!!!

 今度はすぐ後ろに落ちた。


「うわっー」

 土と砂のつぶてがモロに体に飛びかかってきた。その破壊力と地響きに侍たちは真っ青になった。


「わ、わかった。わかったから、止めてくれ」

 鈴木は手をあげて止めた。もはやパニックだった。急いで、あかりの足の縄を解かせた。


 あかりは、そのまま黒装束一味に向かってそろそろと歩いた。その顔に微笑みが浮かんでいるのを見ることが出来たのは小夜と旭だけだった。用意してあった馬にあかりを乗せると、そのまま小夜も一緒に乗り川上へ消えてしまった。


「さあ、あんたたちはもう少しここにいてもらおうか」

 旭は大筒を再度、高遠藩一行に向けた。



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