↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

黄色の生まれ

掲載日:2026/09/04

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 へ? 今日が僕の誕生日だった?

 おお、いきなり祝われたから、何事かと思ったよ。いや~、歳をとるとなんだが誕生日の印象て薄くなるというか、考えなくなるというか。

 ティーンエイジャーのうちは、一年一年が貴重だろう? 自然と自分の誕生日も特別なものと思えるようになる。育ち盛りで、大人へ一歩近づいた感があるかもしれない。

 でも成人を迎えて以降の誕生日は、自分が老いへ向かっていくカウントダウンと化す。ひとつ重ねるたび、確実にジジババへ近づいているんだ。喜べるのは、ごく一部の人だろう。

 祝ってもらうこと、それ自体は悪い気持ちはしないのだけどね。自分が特別扱いされるのはたいていの人の心に響く。「自分」という個が、確かにここへ存在している証のようなものだ。虐げられることの反対を行くから、悪い気持ちはしない。

 それだけ、誕生は大事なものとみなされているわけだ。たとえ自分のものでないとしても、誰かが、何かが生まれたときは気をつけたほうがいいかもしれない。

 ちょっと前に友達から聞いた話なのだけど、耳に入れてみない?


 友達が小学生だったときのこと。

 ある日のクラスで、自分の席に黄色い包みが置いてあったんだ。先に来ていたクラスメイトが、他の子の席の間をめぐりながら同じものを置いているし、すでにいる子には直接手渡したりしている。

「黄色祝い」だと、その子は話したそうだ。今日は黄色いものが生まれた日だから、そのお祝いをしていて、お菓子を配っているのだと。

 お菓子? と友達が自分の席に置かれたものの包みを解いてみる。中に入っていたのは、カステラにとてもよく似た生地を持つものだったみたい。

 ただ、口にしてみると砂糖の人工的な甘さというより、どこか芋と果物の甘みを調和させたような自然的な甘さのほうが混ざる。

 そのアンバランスさに、クラスの面々からは不評よりのレビュー。友達としても、このピンポン玉サイズひとつならともかく、ふたつめはあまり食べたくないなという感想だった。

 でも、その子はそれで構わないという。それを食べた、ということで十分な祝い行動になるからと。

 授業前なこともあり、包みは回収されて、その子の持参していたビニール袋へ入れられていく。そして、その後にちょっとした注意がされる。

 もし、今日から24時間以内に、身体のどこかが黄色くなり始めることがあれば、やってほしいことがある、と。


 友達のケースだと、学校から帰ってすぐだった。

 その日は習い事や遊ぶ約束などもなく、家でのんべんだらりと過ごす予定だったみたいだ。

 けれども、かすかに口の中に違和感を覚える。この感じ、過去の経験から口内炎のたぐいができたかと思い、鏡を見てみたとか。

 すると、前歯から犬歯にかけて、上下合わせて10本ほどの歯がまっ黄色に染まっていたらしいんだ。他の歯はいつも通りの白い色だったのが、よりコントラストを際立たせる。

 学校にいる間はなんともなかった。給食を食べてからも確認し、下校から鏡を見るまでの間に一切の食事はしていない。


 ――これが、聞いていたものか。


 友達はすぐ、冷蔵庫にあった牛乳をコップ一杯飲む。

 直後に鏡を見ると、黄色は嘘のように消えていたものの、24時間のうちは再発する恐れがあるようで、身体の各所にも気を配るようにもしている。


『黄色はね、祝ってもらえないと、全部をまっ黄色にしちゃうんだよ。生き物もそうでないものも全部ね。毎年、てわけじゃないけれど、こうしてささやかに祝ってご機嫌をとってあげるってわけ。

 もしもだけどさ……あのお菓子、こっそり食べきらずにいた人は気をつけてね。黄色の不機嫌をまともにこうむることになりかねないから』


 それを聞いて、味が好みじゃないからと、ひとくちだけでやめていた何人かが残りを食べるようにしたそうだけど……ひとりだけ、頑として食べない子がいたそうなんだ。

 その子は次の日に学校を休む。友達は家が近くだったこともあって、欠席プリントを渡す役目を仰せつかって、家のそばまできたのだけど……思わず息を呑んだ。


 何度か遊びに来たことがあるから、間取りもある程度は分かる。友達の部屋は、向かって二階の右側だ。

 そこの窓と周囲の壁が黄色く染まっていたのだとか。大きなしずくを外からぶつけたかのように、その輪郭は大きく乱れて安定しない。

 チャイムを鳴らすと友達本人が出てきたものの、その手にはパックの牛乳を手にしていた。身体に異常は見られないように思えたが、ほんの数時間前までは身体のありとあらゆるところがまっ黄色になっていたと話してくる。

 その黄色が自分の身体の接しているところから、どんどん広がってこの有様になってしまったとか。

 あの子の話だと、身体を離れてしまった部分の黄色は牛乳で消すことはもはやできない。塗り直したり、建て直したりするしかないとして、実際にその通りの対処をしたのだとか。


 友達としては、この奇妙なやりとり。

 黄色という色そのものじゃなく、黄色い別の何かに対処するすべとして、伝わっているのだろうなと考えているみたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。