深紅の華の生む罪
2009/12 C77 無料配布本。ホラー。
「私」は背負う、温もりを宿す死体の形の罪を。
ピクシブには、2012年にアップしている。
私は背負っている。
裸の女の死体を。
まだ柔らかく、手足はだらんとしている。
これは私の罪の結晶。
神の子が人類の罪の十字架を背負って歩いたように、私は己の罪を背にのせて、歩く。
女は私と背が同じぐらい。
男も多数、周囲にはいるのに、女の私が成人している女の死体を抱えて持つ。
周囲は、私にもこの死体にも、あまり興味をもっていない。
ざわめきに包まれているけれど、その中にこのことに関するものはなく、皆自分のことで頭の中がいっぱいなのだ。
死体に触れている腕や頬が気持ち悪い。
まだ冷たくはない。でも、温かすぎもしない。ほんの少しだけ、私より温度が低いだけ。
早足で歩くと、女の腕が物にぶつかってしまい、私はあわてて死体を背負い直す。外傷はよろこばしくない。なるたけ綺麗に運ばねば。
あとで何を言われるか、わからない。
私は私の罪を運ぶ。
丁寧に丁寧に運んできて、そして男達が用意した小汚い段ボールに女の死体を入れる。
でも、納め方があんまりにも乱暴で、私は呻く。
ここまでかなり気を遣って運んできたというのに。彼女が起きてしまったらどうしてくれるのだろう。
ああ、それにしても、なんて気持ちが悪いんだろう。
服と体に、死体の臭いがついている気がする。
「シャワーを浴びてくる」
私はそう告げて、私はその場を去る。
早く、罪など埋葬されてしまえ。
もう見たくもない。
服を捨てた。死者の穢れがついているから。
シャワーコックをひねる。
熱い雨が頭上から降り注ぐ。
もっと熱くていい。
これは消毒だったから。
ほっと人心地ついて、浴室から出た途端、腐敗臭のする腕が背後から私にからみつく。
あの、罪。
あの女がからみついてくる。
私の息はしばし止まった。
不快感が心を走る。
せっかく、シャワーを浴びたのに、と。
「ねえ、キスしてよ」
花瓶が見えた。毒々しい赤い花が差してある。それを見つめながら、私は思う。
キスをしたら、私の人生、生命、全部この女に食われてしまうに違いない。
「あんたのせいで、死んだのだもの。それぐらいいいじゃない」
罪が私のうなじや背にキスをして、ほおずりをしてくる。
死体にそうしてはいけない。
いけない。
いけない……。
私は無抵抗に赤い花を見つめる。
もしかしたら、どうでもいいかも。
キスしてもいいんじゃないかと思いながら。




