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ホラー小説

深紅の華の生む罪

作者: 無夜
掲載日:2026/06/09

2009/12  C77   無料配布本。ホラー。

「私」は背負う、温もりを宿す死体の形の罪を。


ピクシブには、2012年にアップしている。

私は背負っている。

 裸の女の死体を。

 まだ柔らかく、手足はだらんとしている。

 これは私の罪の結晶。

 神の子が人類の罪の十字架を背負って歩いたように、私は己の罪を背にのせて、歩く。

 女は私と背が同じぐらい。

 男も多数、周囲にはいるのに、女の私が成人している女の死体を抱えて持つ。

 周囲は、私にもこの死体にも、あまり興味をもっていない。

 ざわめきに包まれているけれど、その中にこのことに関するものはなく、皆自分のことで頭の中がいっぱいなのだ。

 死体に触れている腕や頬が気持ち悪い。

 まだ冷たくはない。でも、温かすぎもしない。ほんの少しだけ、私より温度が低いだけ。

 早足で歩くと、女の腕が物にぶつかってしまい、私はあわてて死体を背負い直す。外傷はよろこばしくない。なるたけ綺麗に運ばねば。

 あとで何を言われるか、わからない。

 私は私の罪を運ぶ。

 丁寧に丁寧に運んできて、そして男達が用意した小汚い段ボールに女の死体を入れる。

 でも、納め方があんまりにも乱暴で、私は呻く。

 ここまでかなり気を遣って運んできたというのに。彼女が起きてしまったらどうしてくれるのだろう。

 ああ、それにしても、なんて気持ちが悪いんだろう。

 服と体に、死体の臭いがついている気がする。

「シャワーを浴びてくる」

 私はそう告げて、私はその場を去る。

 早く、罪など埋葬されてしまえ。

 もう見たくもない。

 服を捨てた。死者の穢れがついているから。

 シャワーコックをひねる。

 熱い雨が頭上から降り注ぐ。

 もっと熱くていい。

 これは消毒だったから。

 ほっと人心地ついて、浴室から出た途端、腐敗臭のする腕が背後から私にからみつく。

 あの、罪。

 あの女がからみついてくる。

 私の息はしばし止まった。

 不快感が心を走る。

 せっかく、シャワーを浴びたのに、と。

「ねえ、キスしてよ」

 花瓶が見えた。毒々しい赤い花が差してある。それを見つめながら、私は思う。

 キスをしたら、私の人生、生命、全部この女に食われてしまうに違いない。

「あんたのせいで、死んだのだもの。それぐらいいいじゃない」

 罪が私のうなじや背にキスをして、ほおずりをしてくる。

 死体にそうしてはいけない。

 いけない。

 いけない……。

 私は無抵抗に赤い花を見つめる。

 もしかしたら、どうでもいいかも。

 キスしてもいいんじゃないかと思いながら。



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