8話 レオ
昼近くなって気温も上がって、雲の隙間から晴れ間が見えてきた。
まだ富士山の周りは雲に覆われている。
レオさんはあっという間に大型テントの設営を済ませた。
ゼインアーツのロロ。
スタイリッシュな大人気テントだ。
1人で使うには大きすぎる。もしかしてこれ以上人数が増えたりするのだろうか。
出来れば増えるのは避けたいけど。
大方の設営が終わるとレオ君は私たちの隣に、当然のように椅子をおいた。
折りたたみの木製の椅子。
なんだか高級感がある。
セレブなのかな。
レオさんは私たちにはコーラを渡しコーヘイさんには缶ビールを渡した。
自分はペットボトルの麦茶を手に持って目の前に立つ。
「やぁ、オラ レオってもんだじゃ。
こんたごど、むりやり参加させられだんず。
よろすぐ、たのむはんでな。」そう言いながら、丁寧に頭を下げた。
どこの方言だか、わからない。
むしろ、今なんて?
葵と私は顔を見合わせて笑った。一気に空気が緩んだ。
葵が笑いながらレオさんに聞く。
「どこの方言ですか?ソレ。もう何言ってるかわかんない」
「津軽弁しゃべってらんず。青森のオラ、標準語も津軽弁もどっちもいけるバイリンガルだじゃ。」
バイリンガル!なのか?
「しかもなんで麦茶なの?そこはビールでしょー?」
「オラ炭酸も酒も飲めねぇだ」
私たちは笑った。
レオさんが標準語に戻る。
「いやぁ、良かった。
ずっと空気悪かったらどうしようかと思ったよ。
ごめんね。無理言っちゃって。
コーヘイが妹とキャンプするって言うからさ、心配で。」
コーヘイさんも嬉しそうだ。
葵は一気に打ち解けたようで、
青森出身なんですかー?とかテントの事とか、予約とるの大変だったとか、盛り上がっている。2人とも打ち解けるのが音速だ。
音速のレオ。
なんかアニメで出来そうだなぁーとぼんやり思った。
「ほいじゃ、ひるげこしらぇるばって、きらいなもんねぇが?」
「んー分かりづらい!標準語でOK!」
葵が笑いすぎて目に涙を浮かべながら言った。
「ゴメンゴメン。それじや昼ごはん作るよ。何か嫌いなものある?って聞いたの」
私も会話に参加しようと発言してみる。
「特にないでーす。何作ってくれるんですか?」
「流しそうめん。今から森に入って竹切ってくる。いくぞコーヘイ」
「えっ?ホントに?」
コーヘイさんがキョトンとしている。
「流石に冗談だよ。流しそうめんのセット持ってきた。
ま、コーヘイ作るの手伝って。2人は遊んでていいよー」
私も手伝おうと思ったけれど、
「大丈夫大丈夫!それじゃ売店で氷買ってきてくれないかな?」
と言われ、葵と売店まで散歩する事になった。
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