2話 道志みち
私の愛車はリトルカブだ。
私が中3の時、ヤフオクで見つけ、父に頼んで購入してもらった。
オシャレな青緑色に塗装されていて色々な箇所がカスタムされていた。
父はそのバイクを購入後、更に100ccに改造した。
ピンクナンバーを取得し、高速には乗れないけどバイパス等で70km位は普通に出せるバイクになった。
私はバイクに詳しくないけど、このカブは見た目が本当に気に入っている。
普段のアルバイトや友人と遊びに行く時にもよく使っている。
このバイクに乗っていると色々な人に声を掛けられる。
……ほとんどがオッサンだけど。
このバイクは私にとって大切なバディだ。
そんなバイクにキャンプ道具をガッツリ積んで、道志みちを走っている。
道志みちとはライダーの間では超有名なツーリングルートだ。
神奈川県の相模原市から山梨県の富士五湖に続く道で、道の駅どうしは週末には沢山のライダーが集まる場所でもある。
「ん気持ちイイー!」
誰も居ない時に大声を出しながら走る。
走りながら初夏の森の空気を吸い込むとHPが緑ゲージまで回復した気分になる。
緩かな下りを気持ちよく走っていると速度が70km近くまで出てしまっていた。
確か40km制限だったはずだ。
60km以下までスピードを落とす。
ふとミラーを見ると後ろに速そうなバイクが2台来ているのがわかったので左にウインカーを出して減速する。
2人のライダーはお辞儀をしながら更に左手で礼をしながら追い越しをしていった。
峠や山道を走る時は速そうな車やバイクが後ろに来たらなるべく早く道を譲るようにしている。父からの教えだ。煽り運転や不要な渋滞を避けるためだ。
森の中の涼しい空気を感じながら走っていると、対向車線のライダーが手を振ってきた。
私も左手を一瞬ハンドルから離して、手を振り返す。
ライダー特有の挨拶「ヤエー」だ。本来はライダー同士の安全祈願らしいが、ノリの要素が強い。私はこのヤエーが結構すきだ。
父の車の助手席に乗っていても、ライダーを見かけると手を振りたくなるほどだ。
ただ知らない人を手を振るだけなのに、しかも相手のほとんどは中高年男性なのに、旅のワクワクが2割増になるから不思議だ。
更に進み、緩やかなカーブに差し掛かった所で後ろからバイクの排気音が聞こえてきた。
ミラーを確認しようとした瞬間真っ赤なバイクが私の外側ギリギリを対向車線にはみ出しながら猛スピードで追い越ししていった。
急な事に私はふらついたが、なんとか持ち直した。
危なかった。
私が少しカーブで膨らんでいたら、大事故だ。
まさかカーブで無理やり抜かれるとは思っていなかったし、私も50km出ている。
一体何キロで走っているのか。警察はどこだ!どういう神経をしているんだ。
心臓が初恋レベルでドキドキしている。
こんな細い道でそんなにスピードを出してコントロール出来るのか。意味が分からない。
速いバイクが来ると分かっていれば道を譲るのに。
認識した瞬間に追い越されるとは本当に恐ろしい体験をした。
さっきまで良い気分で走れていたのに台無しだ。
道の駅で休憩してリフレッシュしようとウィンカーを左に出した。
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