16話 何リンガル
レオ
初めて晴ちゃん見た時はな
、なんだが普通の子だな〜って思ったんず。
でもよ、「SUPお手本見せでけろ」って言ったら、ほぼそのまんまの格好でスマホポケットさ入れで、ひょいっと沖さ出ていったのよ。
しかもよ、なんがオシャレなカブ乗ってらし、いや〜、こいはただもんでねぇなって思ったんず。
あっ、ごめん。翻訳いる?
流石になんとなくわかるか。
今回のキャンプは本当にコーヘイが心配だし、流しそうめんしたくて来たんだけど。
なんか普段もチマチマ教授に言われた研究ばっかりしてるけど、もっとなんかした方が良いのかなぁ。
なんて焚き火を見ながら思ったんですよ。
ほら、俺は院生なんだけど、周りのほとんどの人が働いてるわけじゃん?
コーヘイも勿論。コーヘイのもう1人の妹に至ってはまだ大学なのに、起業してかなりの売り上げを上げて。ねぇ。
もうすぐ24だってのに親のスネかじって、車借りて。
ちょこちょこ塾講師とかやってそれなりに遊んで。
俺こんなんで良いのかなぁ。
晴ちゃんなんかはスパーンと将来やりたい事決めて、その方向に真っ直ぐ進んで行きそうだなぁ。と思って聞いてみたら、やっぱり看護師という夢があって、しかももう成績的にギリだけど、4年生大学の看護学科の志望校の推薦が取れそうらしい。30過ぎになって晴ちゃんと再開したとしたら。
「えっ?レオさんまだプラプラしてるんですか?」
って思われそうだなぁ。
なんてグチグチと考えていたら隣のテントの話し声が聞こえてきた。
お隣さんは中国人の老夫婦が小学生の孫2人をキャンプに連れてきているようだ。
さっきから時々気になってはいたんだけど、この孫2人バチクソ口が悪い。
多分老夫婦の2人は中国語しか喋れないのだろう。
子供達は日本語も中国語も流暢なようだ。
孫2人はおじいさんに何か言われると
「うるせーこのひょろじじいが」であるとか「どんだけダセーキャンプ道具だよ。」とか
「クソまずい。食べれないことは無いけど」とか言いたい放題言っている。
子供達はニコニコして悪口を言っているので、老夫婦は時々怪訝な顔はしているがハッキリとはわかっていないのだろう。
いやな雰囲気だなぁ、と思っていると
葵ちゃんがお隣の子供に注意しにいった。
委員長っぽいな、葵ちゃん。
「あなた達、おじいちゃん、おばあちゃんにそんな事言ったらダメでしょ。言葉が分かってないとしても良くないよ!」
「えーだってさ、俺達キャンプなんか来たくなかったのに、無理やり連れて来られたんだぜ。WiFiないしさ。余計なお世話だよ。」
子供達と葵ちゃんが話をしているとおじいさんが、声を掛けてきた。
が、やはり中国語だ。
俺は横目で見ていただけだけど、椅子から立ち上がっておじいさんに話しかけた。
「只是因为他们俩说话有点冲,我稍微提醒了一下而已。
并没有什么大问题,不用担心。(ちょっと2人の口が悪かったので注意していただけですよ。
特に問題がある訳ではありません。心配しなくて大丈夫。)」
おじいさんは
「啊,是这样啊。
其实我也感觉他们在说些不中听的话,可能让你心里不好受了吧。
因为很少有机会见到孙子,我才硬是让他们过来的。
真是不好意思,还请你多多包涵,别太计较了。
(ああ、そうかい。
悪口言ってるなとは思ってたんだけどね。嫌な気持ちにさせてしまったかな。
孫とは滅多に会えないものだから無理やり来てもらったんだ。済まないね。程々にしてやってくれ。)」
と返答してくれた。
俺は目を丸くしている葵ちゃんに伝えた。
「大丈夫だって。大体分かってたみたい。君らも年長者を大事にしなよ。滅多に会えないんでしょ?」
子供達も驚いたようだ。
「すいません。ちょっと調子に乗りすぎました。」
と反省の弁を述べた。
晴ちゃんも相当驚いたようで、
「レオさん中国語話せるんですね凄い!」
と尊敬の眼差しをくれた。
好感度爆上がり。
実は英語も喋れるんだけどね。ドイツ語も少々。津軽弁合わせてマルチリンガルってやつですよ。って言おうと思ったけど、自慢でしかないので辞めておこう。
ってゆうかコレ結構役立つんじゃない?
ひかえめさもあるべ?やっぱおら、イケてらば!
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