夢の話
夏のホラー2024で投稿した「顔のない怨念」
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に登場する、義兄弟とその周辺の人々の話です。
小鳥遊陽充(はるちゃん、僕)
生真面目で面倒見が良く、お人好し。また好奇心旺盛で様々なことに首を突っ込んで痛い目にあっては義兄さかえに助けられている。
新卒で入った企業で人付き合いに悩み、うつ病になって退職した経緯を持ち、悩みを抱えやすい。お話における「ワトソン役」
烏丸さかえ(さかえ義兄さん)
極めて自堕落な自称作家。陽充の姉で故人の烏丸れおなの夫で、現在は義弟陽充と共に生活している。義弟陽充の前では彼をはるちゃんと呼び、ヘラヘラしている胡散臭いおっさん。お話における「ホームズ役」
――目を開くと、そこはどこかの砂浜だった。
びゅう、と風が吹いて、独特の磯の匂いを運んでくる。……僕の苦手な匂いだ。
手の甲で鼻をおさえて、視線を逸らすように周囲を見渡すと、近くにあばらやが見えた。
ふと首を傾げる。なんだろう、あのあばらやは見たことがある。あの木の傷み具合、ひどくリアルな色味。
そうか、と思い出した。あれは僕が買ったジオラマに使われていた、ミニチュアの漁師小屋にそっくりなのだ。よく見ればそばに、網をかけた柵まで見える。
ではここは、あのジオラマの中なのか。
どうしてそんなところに自分がいるのかわからず、呆然と海に視線を戻す。――と、沖合いに何か、黒いものが見えた気がした。
なんだろう、あれは。波間をゆらゆらと漂い、こちらに……浜辺に近づいてきている気がする。
――何か、胸の奥がざわつく感じがした。
あれは歓迎すべきものだという感覚もある反面、生理的な嫌悪感も湧きあがる。
近づいてくるそれは、いったい何をもたらすのか。わからないが、少なくとも心の底から歓迎できない何かがある。
こないでくれ。
ふと、頭の中に閃いた言葉は、強い拒絶の色をしていた。
そうだ。こないでくれ。ここからどこかへ行って、二度とこちらへ近づかないでくれ。
だが、そんな思いも虚しく、それは少しずつ少しずつ、こちらへ向かって流れてくる。
ふと、何かの臭いが鼻をついた。
なんだろう、と考え、近い臭いに思い至って慌てて口と鼻を抑える。
僕は知っている。姉さんの遺影と位牌を安置した、小さな白木の祭壇。さかえ義兄さんが向き合えずほったらかしになっていたそこで、仏花の生けられた花瓶からしていた、水が、花が、腐っていく臭いを。
今臭ってくるそれは、その時嗅いだそれよりはるかに、生臭く、異臭と呼ぶに相応しい。
だとしたら、だとしたら。
僕は考えたくないその正体を想像してしまい、その場に膝をついて吐き気を抑えた。
海からやってくる、異臭を放つもの。
もしかして、あそこに漂っているのは――。




