表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

プロローグ

本当にここなのだろうか?


それは、町外れにぽつんとたっていた。

建物はごく普通の三階だてのマンションだが、建物の入り口付近に、手書きで「ようこそ黄昏温泉ハッピーパレス」という立看板がある。いかにもインチキな感じがプンプンしてくる。

見かけは普通のマンションにしか見えない。ただ、団地か!と思うほど大きくもある。

電話では、間違いなくここのはずなのだけれども、、、。受付らしい入り口もないし、どこから入っていいのか全くわからない。


周りを見渡すと、道路をはさんで、昔ながらのなんでも売ってそうな雑貨屋があり、その隣には自動販売機だらけのゲームセンターがある。どちらも店の前は、田舎にありがちなだだっ広い砂利が敷かれた駐車場がある。この「ようこそ、黄昏温泉ハッピーパレス」も同様で何台かの車が乱雑に停められていた。

「まっすぐとめない奴って、どこにでもいるんだな。」と、僕は呟いた。

ゲームセンターの隣には、「ベラルーシ」と真っ赤なカタカナで書かれた、これまた手書きの看板がある。近づいて見ると、メニューらしきモノが置いてある。食堂なのだろう。


うさんくささ満載の黄昏温泉ハッピーパレスに、ベラルーシという名の定食屋、僕は戸惑いを覚えながら、とりあえず軽く食事でもして考えることにした。


「すいません。」と、薄暗い店の奥の方に声を掛けると、ガサガサっと、音が真横からした。

音の方を見ると、スポーツ新聞の中に埋れていたみたいな女性が顔を見せた。

「見かけない顔だね。お客さん?好きなところに座ってね。」

ずいぶん乱暴だなぁと、思いながらも手近に有ったテーブルに座った。


「何を食べるの?」と、彼女は話しかけてきた。

「あの、メニューとかないですか?」と、僕は小声で答える。

「あぁ、メニューね。最近は出したことないから、忘れてたわ。ちょっと待ってね。」と、彼女はさっきまで彼女が居たスポーツ新聞の山から、ゴソゴソと取り出してきた。


とりあえず、最初のページにあったラーメンとチャーハンのセットを食べることにした。


やる気が無い感じな割りには、料理は意外にもすぐに出てきた。

「 お待たせ。」

と、目の前に料理が置かれた。

食べてみると、普通に美味しい。他にはどんなメニューがあるのか手にとって見た。ベラルーシなんて名前だから、変なメニューがいっぱいかと思ったけど、意外に普通の定食屋だった。

「ふふっ、美味しい?」

と、横で声がしたので驚いて横を見ると、彼女が真横に座っていた。

「んっ。」

とむせそうになりながら、急いで水を飲みほし

「なんなんですか?」

と、声をかけた。

「あまりこの辺で見かけない顔だから、気になっちゃってさ。」

お客をお客とも思わない、この近距離攻撃。僕の周りにはこれまで全くと言っていいほどいなかったタイプに、僕は顔を上げることもできずに、急いでチャーハンをかきこんで食べた。

「そんなに急いで食べなくても、大丈夫よ。君なんて名前?」

「草津ですけど。」

「ふぅ〜ん、草津君って言うんだこんなところになにしに来たの?」

僕は相変わらず、チャーハンをもぐもぐさせながら、

「目の前の温泉に、、、。」

すると、彼女は物珍しいものを見るような顔をして

「へぇ〜、曇森に来たんだ。じゃ楽しんで行ってね。」

「えっ?あそこ黄昏温泉ハッピーパレスって言うんじゃないんですか?」と、彼女に声をかけたが、彼女はニコニコ笑うばかりで何も話してくれなかった。


しかたなく、残りの食事を食べ終えて店を出た。


店を出る時に、後ろから「またねっ!」と、声がかけられた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ