5話【いつか死ぬその日まで】
「···············なにか来ますね」
「どんな感じだ」
「黒いローブで素顔は見えませんが数は10人、背中に大きな海龍の紋章があります」
「海竜教か」
かつての竜達を崇める教団の一派、海竜教。
リバイアサンはかつて海を創り、自身の血肉で海の生物を産み出したと呼ばれる神竜の一柱。
死肉は海人を創り、骨は底のない海に地面を創り、心臓は自身の分身を創り、魂は海の巫女になったと聞く。
その巫女を崇めるのが海龍教。
そしてかつての龍神であるリヴァイアサンの復活を目論んでいる組織でもある。
「しつこい奴らだな」
「ご主人様が巫女の瞳を奪ったからじゃないですか?」
「人聞き悪いな、ちゃんと買取ったんだ。ほれ、証明書」
そう言ってオークションで買い取り、所有者が自分であるという証明書を取りだしてローズに見せる。
「は?たっか、これ城1つ買える値段じゃないですか」
「王が誕プレで好きなもの買えって言ったからな、王の奢りだ」
「···············」
この時のローズの顔は本気で困惑した「え、嘘でしょ?」という顔だった。
俺もわかる。
俺だって半分冗談でこれが欲しいって言ってマジで買ってきてくれるとか思わなかった。
あの時の俺は民からの苦情やら、ギルドに任せる依頼の整理、武器や装備の補充、死傷者の掌握や死体の捜索、様々な仕事が重なりに重なって結果的に10徹して脳が溶けていた。
しかも王が勝手に俺の執務室に入ってきて「今日誕生日だろ?何か欲しいものある?」て聞いてきたからうっかり「巫女の瞳··········」て答えちゃって、オークションにかけられてた巫女の瞳を落札してきちゃったんだもん。
仕事が終わって爆睡した後突然部屋に来た王が巫女の瞳差し出してきた時はストレスでそのまま吐いた。
「え、もしかしてこれ?」
「耳ちぎるぞ」
思わずローズは手を握って親指を人差し指と中指で挟むジェスチャーをするが、その瞬間両耳をカプシーヌに鷲掴みにされる。
「痛い!痛いですご主人様!ごめんなさいごめんなさい!」
「次やったら不敬罪で晒し首だかんな」
「ひど『ドシュッ』··········?ゴポ··········ッ」
次の瞬間、ローズの首に短剣が突き刺さり吐血した。
それとほぼ同時に首からは噴水のように勢いよく血が吹き出し辺りをローズの鮮血で汚す。
「カプシーヌだな」
ローズが地面に倒れ、地面に大きな血溜まりを作り2回、3回と痙攣して動かなくなると闇の中からローブを深く被った者たちが現れる。
「我々から奪った物を返せ。さもなくばそこの女と同じように···············」
「落ち着いてる?まぁ驚くことでは無いな。そうそう、人間じゃこんなの日常茶飯事だよ。てかつい最近まで魔族と殺し合ってたんだ、嫌でも慣れるだろ」
突然独り言の様に話し始めるカプシーヌ。
頭がおかしくなったのだと解釈した者達は懐から取りだした短剣を構えた。
「ご主人様、いい加減まともな友人作ったらどうですか?」
「お前も作ったらどうた?心の友」
「世間ではそれをイマジナリーフレンドと言うんです」
「サタンくんはイマジンじゃねぇ!俺の中に居るんだ!」
「あ、はい」
先程死んだはずの女が何事も無かったかの様に立っていた。
辺りを見渡せば女から溢れた血が当たりを汚している。
しかし首の傷は無くなっており、首に刺さっていたはずのナイフが地面にころがっている。
ローブを着た者達は疑問に思うと同時に警戒を高める。
しかし、その警戒も虚しくローブを着た者達はその場で全員がほぼ同時に絶命した。
「あ、死んでる」
「お前の【権能】恐ろしいな」
「結局なんだったんですか?」
「竜神信仰だろ、過激な方の」
「あー、あれですよね。いつか世界は竜の炎で浄化されるってのを信じてる」
「焼身自殺が好きなんだろ」
「多分違うと思います」
「ちなみに海竜教の場合はこの世界の全てが海に沈むっていう予言を信じてる」
「溺死じゃないですか」
「溺死と焼身自殺を掛けまして」
「その心は?」
「どちらも窒息死」
「くっだらな。てか掛けられてないし」
そう言いながら俺たちは死体を清め、肉を燃やし、骨だけにした後に丁寧に埋めてやった。
この世に強い未練を残し死んでいったもの達は皆魔族に生まれ変わる。
そうならない為に、体を清めて、丁寧に土に埋めて墓を作る。
土に埋めて墓を作ってやれば、阿弥陀を唱えて、死んだものたちが魔族となって転生しないよう、天国に行けますようにと願う。
「···············わざわざ墓を作ってやったんだ、化けて出てくんじゃねぇぞ」
そう言って俺とローズは馬車の中で眠りについた。
【権能】
スキルとは違い生まれてからすぐに取得したスキル。
【権能】の殆どは訓練や実戦などで取得できるスキルと違い、誰でも取得できる訳ではない。
その為【権能】を持つ者はギルドや王国騎士団でも重宝される事が多い。




