3話【目覚めぬ大災】
ホークアイ。
羽人が多く住むこの国は魔法の国とも呼ばれ数多くの魔法を生み出し、使う国として有名だ。
中でも【羽の魔女】と呼ばれる羽人は魔法を得意とする羽人の中でも異端であり、脅威でもある。
かつてホークアイを炎の海にした【龍王】グレイオールを【魔女】は12人の自身の同胞を生贄にし、言葉巧みに惑わし、騙し、その怒りを沈めた。
また、隣国である海の国であるハマナスとの争いではハマナスの10分の1消し飛ばし火の海にしたことも有名だ。
口を開けば【龍王】すら騙し、魔法を唱えれば国の一部すら消し飛ばす。
その姿から【羽の魔女】と呼ばれるようになった。
「とここまで色々言ったが、全部忘れろ。アレはただのババアだ」
「了解」
ローズは目を瞑りながら頷いた。
千里眼、全てを見通す視線。
ローズは今この広大な森林のほぼ全てを見ている。
森に生きる小バエから動物達、この森の主であるグレイオールを除き、全てを覗き見ている。
「どうだ?」
「どうですかねぇ、未だグレイオールの姿が見えないんですよね」
「だろうなぁ」
「む、言ってくれますね。ちょっと待っててください、直ぐに見つけて···············」
「何言ってんだ」
ローズが訳の分からないことを言言い始めた。
恐らく見つけられないことに対抗心でも燃やしているのだろうが、そもそもローズは既にグレイオールを見つけている。
だが見つけることは出来ない。
「グレイオールは今この下にいんだろ」
「···············何言ってんですか?」
「ここら辺だと確かグレイオールの目の辺りだろうな」
「····················まさかグレイオールの大森林て」
「今更何を、グレイオールの上にできた森の事だ」
思えばグレイオールは森に住むと言うより、森自体がグレイオールだったな。
「この森ってどれくらい大きいんでしたっけ?」
「アークの2〜3倍くらいじゃねぇか?」
「あ、ははは··········」
(そんなデカイドラゴンの怒りを沈めた魔女て何者だろう··········?)
自身の想像も及ばないその巨体に、背筋に冷たい感覚を覚えるローズはより一層警戒心を高めた。
グレイオール。
まだ世界が何も無かった太古の時代には、水と炎と土と緑と生物を創った13体の龍が居た。
どの龍も各地で神と崇められ、時に破滅を、時に祝福を与えてきた。
その血肉は決して腐ることなく、その骨は決して砕けることはなく、その力はどの龍も人智を超えた神の様な力だったという。
自然を作り、生物を創り、時代を創った。
そしてグレイオールは同胞を己以外全てを喰らった。
それからグレイオールは長い年月この地で眠りについた。
今度は己以外の全てを喰らうその日まで。
もうずっとずっと昔の話だ。
『次にコイツが目を覚ましたら、世界は滅ぶだろうよ』
「···············なんにもないといいな」
「そりゃ何も無いのが1番ですよ」
そう言ってカプシーヌは強く手綱を握った。
あの日、グレイオールが目を覚ましたあの日を思い出しながら、もう二度と目覚めぬことを祈って。




