5 無敵
「どうなった、とおもう?」
「たぶん、やられたんじゃないかな……。かいじゅうは、たいてい、やられるからね!」
二人の小学生だけが言葉を交わす。
やがて――
戦車やジェット機の攻撃が起こした怪獣殺戮兵器の白い霧が晴れてくる。
すると、そこにはー
「ふっふっふっ、やっとオレさまの望む展開になってきたな!」
満足そうにミサイルを口にくわえた、なんでもたべちゃうゴンがいる。ポリポリと、まるでスティック菓子のようにミサイルを噛み砕いている。
自衛隊の指揮隊長が、はっと息を飲み込み、ついで叫ぶ。
「や、やつは不死身なのか?」
太い眉を八の字に寄せ、驚きと畏れがいっしょくたになった表情で、目を見開く。
「おそろしいやつだ……」
戦車の中で次の指令を待っていた自衛隊員たちも一斉にうなずく。
「やったー!」
何人かの小学生たちだけが喜んでいる。
「けっこう、やるじゃん」
「うん、さすが、なまえのとおりの、だいかいじゅうだね。オツムは、かるいようだけど」
小学生の最後の言葉を、なんでもたべちゃうゴンは聞いていない。自分の強さにほれぼれとしていたからだ。
(そうそう、そうこなくっちゃいけない!)
怪獣がニヤニヤと笑う。
すると急に我に返ったように、
「第二波攻撃開始!」
指令隊長が叫ぶ。
すぐさま戦車とジェット機による攻撃が再開される。
バーン! バーン! バババーン!
シューン シューン ズバババン!
またしても辺りがものすごい噴煙に包まれる。が、なんでもたべちゃうゴンはビクともしない。居並ぶ戦車群に近づくとその一台を軽く手に取り、中の白衛隊員たちをポロポロと外に投げ捨てると、おいしそうに戦車を食べ尽くしてしまう。投げ出された自衛隊員たちは、ほうほうの態で逃げていく。次に大怪獣は突如上を向くと、カメレオンのように長くてしなやかな舌をジェット機に伸ばし、グルグル巻きにする。
ついで――
シュルルン!
舌を元に戻して自分の口の中に入れる。そして機体を噛み砕く。もちろん乗っていたパイロットは、食べる前に外に放り出している。なんでもたべちゃうゴンは生モノがあまり好きではないのだ。
なんでもたべちゃうゴンがジェット機をバリバリと齧る姿を背景に航空自衛隊パイロットたちのパラシュートがゆらりゆらりと降下していく。
そして――
「ふっふっふっ、オレさまは無敵だ! 誰にも負けない宇宙大怪獣なのだ! エッヘン!」
自身たっぷりにそう叫びながら、なんでもたべちゃうゴンがシンジュクの街を閥歩する。