第一部「宇宙大怪獣なんでもたべちゃうゴン、現わる!」 0 予兆
その年の一月、アメリカ合衆国カリフォルニア州のグレンエレン天文台は七十二光年離れたソロモン星系第四惑星が突如消失し、その消失点から、何物かがすさまじい勢いで飛び出してくる借号をキャッチする。美しいぼんぼり飾りが街を彩る雛祭りの三月、その隕石状物体が途力もない質量を持っていることが判明し、明るく輝く皐月晴れの五月には、謎の物体が七百天文単位まで地球に接近していることが明らかとなる。
もっとも、その頃までに大方の天文学者は、謎の物体に対する興味を失ってしまっている。何故かというと、ある天文学会誌が謎の物体発見の報に信憑性が欠けるという論文を掲載したからだ。
権威あるその学会誌の伝えるところによれば、グレンエレン天文台がキャッチした信号はガンマ線バースト由来らしい。地球周回軌道を巡る人工衛星および軍事兵器は、さまざまな観測機器を可動させているが、それらの動力源として衛星に搭載された原子炉から漏洩したガンマ線を誤ってキャッチしただけなのではないかというのだ。
が、摩訶不思議な事件とは、いつも大方の人間の予想を裏切って起こるものだ。
果たして、その年の八月、地球の夜空に極めて美しい、人の心を和ませるような流星雨が降る。けれども、それが来るべき大事件の予兆であると気づいたものは誰もいない。