No.11:『弱き者は』(前編)
『前回のあらすじ』
『リチュと名乗るスライムにより、村人は次々に襲われる。彼女らを助けようとするも何もできない、タケル君に、フミエは「仲間と村人を連れて早く逃げろ」と言うのだった。』
「な、なんでそう突き放すんだ!確かに、俺はスライムの知識がなかったけれどそれでも、皆を助けたいって思っているんだ!!」
タケルがそう叫ぶ。
それに対して、フミエも叫び返す。
「本当に、皆を助けたいなら、言われた通り、村のやつらと仲間を連れてここから立ち去るんだ!! 私や、お前らが手を組んで相手したって、恐らくあいつには敵わない!」
フミエのその言葉に、村の女達はクレームを付けた。
「何言ってんの⁉」
「そうよ!男なんかに助けられるなんてごめんだわ!!」
「フミエ様なら、そんなやつ倒せるでしょ!男共より強いんでしょ!」
女達のその言葉に、フミエは持っている剣を握り締めた。
「っ!頼む!私には、数時間の足止めしか出来そうにない!」
フミエは再び、タケルの方を見て叫ぶ。その光景に、村の女性陣は、相変わらず文句を続ける。
「こんな時には、男を頼る。ほんと、使えない。」
文句の中に、小さな愚痴が聞こえた。
それは、1人の中年女性からの言葉だった。
フミエはその声がした方を向く。
中年女性は構わず、言葉を続けた。
「前々から思ってはいたのよね!貴方って、女尊男卑主義者を名乗っておきながら、男にこび売ってばっかだなって!」
その叫び声に、フミエは驚き、質問する。
「何を言っているんだ!? 私は彼らにこびなど、売ったことは…。」
「売っているでしょうが!普通、男が罪を背負ったら死刑!常識じゃない!そこの男の時だってそう。あたし達が、『あの男が迷惑行為をした』と言ったのだから、牢に入れるなんて言う、慈悲を与えないで殺せばよかったのに!」
中年女性は、フミエの言葉を遮るようにそう言った。
フミエがそれに、「しかし、それでは、あの男性パーティーと変わらない!」と言い終わる前に、別の女性も中年女性に賛同した。
「そうよ!そうよ!前から、フミエは甘いと思ってたのよ!」
賛同の声は、村の女性のほとんどから響き渡った。
フミエがその様子に戸惑っていると、チリが大声で笑い始めた。
「フハハハハ!つい数時間ほど前までは、そのフミエにおんぶにだっこだった愚民が、自分の思想に合わぬからと手のひら返しか!滑稽滑稽!!」
チリのその言葉に、村の女性達は怒声を上げる。
「よそ者は黙ってなさい!!」
「そうよ!アンタだって、そこの男にこびてるくせに!」
「この女尊男卑主義者!犯罪者の肩を持つんなんて!」
しかし、チリはそれをも鼻で笑う。
「ハッ!何言ってんだか。そもそも、タケルがあの店で、大声を上げたのは、エルスの悪ふざけを除けば、お前らが、明らかに不当な金額を請求してきたからだろ!」
チリのその発言を聞いて、フミエは一層驚いた様子だった。
「何!? それじゃあ、彼が言っていたことは本当だったってことか?」
彼女の言葉に、村の女性が花で笑った。
「フミエは結局アタシらより、クソオス共の言葉を信じるの?結局アンタもその程度か。あ~あ。馬鹿で、疑うことを知らなくて、でも力だけはあるから、今まで持ち上げていい気分にさせてやったというのに。」
やれやれと首を振る彼女を見て、フミエは絶望する。
「そんな!あの店はボランティアだから、『ただ』だと、言っていたじゃないか!君達も私を騙していたのか!?」
彼女に対して、村の女性は呆れたように言う。
「仕方ないじゃない。せっかく、クソ男共に金を払わせて、アタシ達はタダで食事できるシステムを考えたのに、アンタが、いい人ぶって『出された分の飯代を払う。』なんて言い出すからでしょ!
アンタみたいな権力者が、そういう姿見せたら、アタシらの立場がなくなるって分からないかなぁ?そういうところ、馬鹿だつってんの!」
村の女性達の、言葉を聞いて、デュランが冷めた目で彼女らを見る。
「最低の下衆共だな。己の為に他人を利用する。それだけなら、まだ悪いとは言えぬが。自分が得しない時は罵詈雑言。恥と言う者を知るべきだ。」
フミエは、自分に罵詈雑言を吐く女性達を見て、何かを諦めたかのように小さく笑った。
「ふっ。私は、今まで何をしていたんだろうな。信用できないのは男だけではなく女もか…。」
そして彼女は、数歩前に出ると、目の前のスライムを睨みながら言った。
「タケルと言ったか?もう、私は君に何も言わない。好きにするがいいさ。私も。私のやりたいようにやる。」
そんな彼女を見て、タケルは「え?」と驚く。
そして、スライム、リチュも、彼女を見ていった。
「アナタいった…。自分と彼とが手を組んでもワタクシにハ勝てないって…。村のミンナ。見捨てる?見捨てるますか?」
フミエはそんなリチュに、剣を向ける。
「いや。見捨てないさ。けれど、もう。皆が私の言うことを聞くとは思えない。信用できない。
以前いたパーティーじゃあ、男3人に裏切られ、ブラッドムーンベアーへの囮にされ、彼らは目的の宝だけ盗んで逃げた。
そして、今じゃあ、女達にいいように使われる用心棒。最早、誰かの盾になるのが体に染みついてるのかねぇ。
男性にも女性にも裏切られ、信頼できるのは己と、己の力だけ。なら、やってやるさ。私の力を信じて、私は、私の望む未来。お前を殺し、ここにいる全員を守ってやる!!」
リチュは、彼女の言葉に、少し体が歪む。
そしてリチュは言う。
「ムダ…です。アナタ、どれだけ、強い…でも、ヨワイ…は救えない…せん。じゃくにくきょうしょく、世の中。ヨワイは、死ぬ運命。」
そんなリチュに向かって、フミエは笑って言う。
「確かに、村の女性達はまともに戦えない。あっちの男に至ってはスライムの戦い方すら知らない程、ド素人。
けれど、私は強い!あのブラッドムーンベアーと戦って、生きて帰って来たんだ!皆がどれだけ弱いとしても、私の強さでそれを補う!」
フミエのその言葉に、リチュはさらに形を崩して歪む。
「ヨワイ…守る?タスケル?むいみ…。だって、…れなかった。ワタクシ…。」
リチュの中で、辛い思い出が蘇る。
荒らされた自分達の村。崩壊した建物。そして、無残に転がる数々のスライムの死体。消える。1つ。1つ。体が崩壊して、消滅していく。
「…けるな。」
リチュはそう、つぶやいた後、突然、怒りの表情をした人間の姿になり叫び出した。
「ふざけるなですよ!馬鹿野郎が!!
自分が強ければ、ヨワイを助けられる?そんな、甘い考えをしているヤツが、馬鹿を見るって分からねぇんですか!!」
瞬間、リチュから多量の液体が、まき散らされる。
フミエやタケル達はそれを避けるが、そのせいで、毒の液体の餌食になる村の女性達。
彼女達は、目、鼻、口から血を噴出して次々と倒れてしまう。
フミエ達がその光景に、苦虫を嚙み潰したような表情をしていると、リチュが言う。
「お分かりでぇすか!? 守れねぇ、助けれねぇんだよ!バカチンがぁ!
何かを守ろうとすれば、殺される。死んじまったら、守れねぇよなぁ!じゃあ、死なない様に立ち回る?その流れ弾で、みんな死ぬ。てめぇら、何年生きてっかしらねぇけど、ワタクシと違って、二桁超えてんだろ?いい加減気づけよ!ヨワイは死ぬ!どれだけ強い奴が守っていても!! ですよ。」
突然村の女性の1人が、叫んだ。
「アンタら、避けてんじゃないよ!アタシらは、弱いんだから!強いアンタらが、盾になって当然でしょうが!」
その叫びに、チリがゴミを見るような冷たい目で、彼女を見ながら言った。
「いい加減、少し黙っていろ。次、ごちゃごちゃいう奴は、殺して屍人形にしてやるからな。」
その殺意に満ちた目が、村の女性達を黙らせる。
その後、フミエは、舌打ちをしつつ、リチュの元へと駆け出した。
戦うフミエとリチュを見て、エルスがタケルに言った。
「ご主人様。
彼女から好きにしろという言葉も頂きましたし、あのスライムはやけに強いですし、村の女性達もあんなんだし。私達はこの場から逃げたほうが賢明じゃないでしょうか?」
彼女の言葉に、タケルは驚いて「彼女を見捨てろと言うのか!」と叫ぶ。
「当然です。残念ですが、あのスライムの言う通り、弱い奴は死ぬ。私は勿論、ご主人様や、チリ様もあのスライムには勝てないと思います!であれば、仮に彼女を見捨てることになったとしても、ここは逃げるべきです!」
タケルは、エルスのその言葉を聞いて、うつむく。
「そ、それはそうだけど。で、でも…。」
「いい加減にして!!」
タケルの煮え切らない態度を見て、エルスは大声を上げた。
「ほんっと、ありえない!! こんな状況になっても、まだ分からないの!? ここにいちゃ、全員が危ないの!皆、あんたがの意思を尊重してここにいるの!あんたがずっと悩んでたら、皆どうしていいか分からないでしょ!! とっとと、この村と、彼女を見限る決断をしてよ!!」
エルスのその言葉に、タケルも声を荒げる。
「うるさい!お前の方こそ、なんでそう薄情なんだ!いつもいつも、自分の事ばっかり!俺達の事なんて何1つ考えてないくせに、よく言うよ!まぁ、お前にとっちゃ俺なんて、ただの主人で、信頼も何もないのかもしれないけれど───。」
タケルが、そう叫んだ時、エルスが彼の胸ぐらを掴んで、「ふざけないで!!」と叫び、ビンタをしようと、手を上げたその時。
「くっ…。かっ…!!」
エルスの首輪が、彼女の首を締めつけた。
それにより、エルスは、掴んでいたタケルから手を放した。
それと同時に、デュランとチリが、2人をなだめた。
「落ち着きたまえ。2人とも。」
「そうだ!今、喧嘩しても、それこそ何にもならないぞ!」
タケルは、2人の静止も聞かず、息を荒げたまま言った。
「俺は、絶対に見捨てたくない!そんな薄情な事はしたくない!」
その言葉を聞いたエルスは、咳をしながら、タケルを睨む。
「付き合ってらんない!! 悪いけど、私は先に変えるから!! 『ステルス』!!」
エルスはそう言うと、『ステルス』を使って、体を闇へと隠した。
「た、タケル。いいのか?呼び止めなくて。」
チリのその言葉に、タケルは眉間にしわを寄せながらも、答える。
「ああ。勿論。あいつが、見捨てたいなら止めたりしない。けれど、俺は絶対に見捨てたりはしない。」
彼の勢いに、チリとデュランは、「ああ…。」と答えるしかなかった。
読者様へ
こちらの話、スライム戦の結末自体は決まっているのですが、思いのほか話が長くなってしまったこと、それによりこの先の展開がどれだけ長くなるかと不安になったため、一旦区切りとさせていただきました。
また、長い間、こちらの小説を更新できなかったので、前編のみで申し訳ありませんが、更新しようと思いました。
後編に関しましては書き終わり次第、文字数などを確認したうえ、前編と統合、または、前編をいくつか後編に書き直す形をとる可能性があります。
ご迷惑をおかけし、申し訳ありません。
作者より。




