No.09『怪物さんは』
『ぜ〜んか〜いのあらすじ』
『タケル君を逮捕したフミエを、追いかけようとしたチリ達。
彼女らを止めたのは、女装をした青髪の少年『ボイ』だった。
彼の話を聞くと、フミエは元々村の近くで倒れており、それを治療されて以降『トニス村』に住み着いた。
そして、その村で権力をふるっていたパーティーを追い払って以来、英雄となっていた彼女は、女性達に有意な村を作り始めたのだった。』
『タイトルにもなっているのに、ワタシの出番が最近ないな。』
タケルは、フミエの手によって牢屋の中へと連れ込まれてしまう。
「おい!いい加減俺の話を聞いてくれよ!」
タケルが鉄格子を掴み、帰ろうとしていたフミエに文句を付ける。
「俺は、あいつらが、『ハンバーグ1つ1万モガン』って暴論を言うから、文句を言っただけで!!」
タケルの言葉を聞いたフミエは、振り向いて言う。
「まだ言うか。そんな、虚言を信じると思っているのか。」
「な、なんで、俺の話を聞いてくれないんだ!村の外から来たからか!?」
フミエは完全にタケルの方を向いて、言い放つ。
「それは私も同じだ。私はお前を信用してないのでは無い。『男性』を信用してないのだ。」
「なぜ!?」
タケルの質問に、暗い顔をしつつ答えるフミエ。
「そりゃあ、私だって、昔は男性を信じていたさ。だが、男性の方が…。」
そこまで言って、ハッとするフミエ。
「いや。この話はやめよう。お前に言っても意味がないだろう。」
フミエはそう言って、牢屋から離れていく。
「あ、待ってくれ!!」
タケルが叫ぶが、フミエは足を止めなかった。
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「何をやってるんだ、私は…。」
フミエはため息をつきながら、廊下を歩く。
彼女は歩きながら、過去の記憶を思い出す。
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「お前が、前線に立ってくれるから、ありがたいぜ。」
「お前の勇気には、感謝してるよ。」
「いつも、僕と一緒にいてくれてありがとう。」
笑顔の男性が3人。しかし、彼らの笑顔を思い出していると突如、記憶の中に大きな人食い熊、『ブラッドムーンベアー』が現れる。
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「っ!」
そこまで思い出して、フミエは頭をおさえる。
すると、突然、「フミエ様!」と呼ぶ女警官が、フミエの元へ駆け寄ってくる。
「どうした?」
頭を押さえていたのをごまかしつつ聞いたフミエに、女警官は言う。
「刑務所の前に、よく分からない2人組が叫んでいるんですが…。」
「なんだと!? 今すぐ行く。」
彼女達は刑務所の外へ出ると、刑務所を囲った塀の外で、謎のポーズをとる2人の女性がいた。
「聞けぇ!! 暴利を貪る悪人共よ!」
紫髪の女性が叫ぶ。
続けて赤髪の女性が叫ぶ。
「傲慢なる咎人共よ!」
そして2人は叫ぶ。
「吾輩の名はチリ!!」
「我の名はデュラン!!」
さらに、同時に叫ぶ。
「「大事な仲間を返してもらおう!!」」
その2人に対して、フミエは「なんだ!君達は!」と聞く。
しかし、チリはそれを無視して詠唱を始める。
「汝、死を超越し、我が剣と成れ!スケルトン!!」
チリはスケルトンを呼びだし、「我が剣よ!暴れ回れ!」と言う。
スケルトンは、彼女の命令通り、近くの荷台を破壊し始める。
「こ、こら!! な、何してるんだ!!」
そう怒鳴るフミエに、舌を出して馬鹿にするチリ。
「タケルを返してくれるまで、暴れ続けてやるのさ!それとも何か?吾輩達を捕まえてみるか?」
フミエの周りにいる女性達が、「フミエさん、あんな男にこびた奴。さっさと、捕まえてしまいましょう!!」と叫ぶが、当のフミエは「い、いや。しかし…。」とためらう。
「ふん。結局弱い者いじめがしたいだけの輩か。」
そう鼻で笑うチリに、デュランがひっそりと言う。
「しかし、エルス殿だったか?彼女はどこに行ったのだ?」
チリはそれに、やれやれとした表情のまま返す。
「知らん。この大暴れ計画を話していた時はいたよな?」
その質問に、デュランは頷くように瞬きをする。
「うむ。確かいたはずだ。」
「ちっ。あいつ、ここに来るまでの間に、どこかに消えてったのか!」
チリがイライラしていると、デュランが彼女に聞く。
「あの少女はいつも、こんなに非情なのか?」
チリは頬を膨らませて言う。
「いつもそうだ。とくにタケルに対してはな。」
──────────
「はぁ。」
牢獄の中、タケルが体育座りをしながらため息をつく。
すると突然、隣から声が聞こえた。
「あの。隣でため息つくのやめてもらっていいですか?というか、息をするのもやめてもらっていいですか?」
「ああ。ごめんなさい…。って死ぬわぁ!! って、え!?」
タケルがツッコミを入れると、彼の隣には、同じように座っていたエルスがいた。
「大きい声出さないでください。侵入がバレたらどうするんですか。馬鹿ご主人様。」
「エルス!? お前なんで!?」
驚いたタケルがそう聞くと、エルスは立ち上がって言った。
「外のバカ騒ぎに巻き込まれたくなかったので、私だけ、鍵開けスキルで鍵を開けて、こちらに来ました。」
そして、エルスは檻の扉に向かい、扉を開ける。
タケルも慌てて立ち上がる。
「い、いや…。ここにいるのもそうなんだけど、なんで隣で座ってたんだよ?」
エルスは、タケルの方を向いて、彼に言う。
「ご主人様の絶望した顔が見たかったので。
ですが、そのアホ面をずっと見てると気持ち悪くなるので、さっさとこんなカビ臭いところ出て、チリ様達と合流しましょう。」
そう言って檻から出ていくエルスに、「ちょっと、待ておい!」とツッコミを入れつつ彼女を追いかけるタケル。
「しかし、お前が助けに来てくれるとは思ってなかったな。なんで、来てくれたんだ?」
走りながらそう聞くタケルに、エルスは赤い頬を隠しながら言う。
「わ、私の失言のせいだから…。」
小さな声で言われて、タケルは彼女に「え?」っと返すと。
エルスはそっぽを向いて、慌てて話を続けた。
「ってことになってるんです!! さっさと彼女達の元に戻って、『私の今までの行いが悪かったです。この私めを殺してください。』って頭を地面に擦りつけて言ってくださいね!!」
「お前…。せっかく、見直したのにすぐこれだよ。けど、ありがとうね。」
感謝を告げるタケルに、エルスは照れくさそうに、小声で「ありがとう…。」と彼の言葉を繰り返した。
──────────
「さすがに、いい加減にしなさい!『ヴァルキリーブレイド』!!」
フミエが剣を振り、その衝撃でスケルトンが吹き飛ぶ。
「全く!あの男の事は諦めろ!! 犯罪者を野放しにする訳がないだろ!!」
そう言って、チリ達を睨むフミエ。
チリが、彼女に「彼は犯罪者じゃない!」と言おうとすると、突然大きな物音がして、遠くの建物が壊れる。
「な、なんだ!?」
フミエ達が周りをきょろきょろして、あたりを気にする。
「きゅ、急にどうしたんだ!」
突然、壊れた建物を見ていたチリの後ろから、声が聞こえた。
チリが後ろを見ると、そこにはタケルがいた。
「タケル!! 無事だったのか!!」
チリ達が急いで、タケルに近寄って心配する。
タケルは笑顔で返す。
「ああ。エルスが来てくれて。助かった。」
それを聞いたチリは、エルスの方を見る。
そして、チリから目をそらす彼女に、チリは申し訳なさそうに言う。
「お前が逃げたと思っていたが、直接タケルを助けてたのか。すまない。」
「別にいいですよ。日頃の行いのせいですから。」
といいつつ、エルスは不満げの表情だった。
「しかし、突然建物が壊れるなんて、どうしたんだ?」
タケルがそう呟いていると、突然、遠くから、「フミエ様―!!」と叫んで走ってくる女性がいた。
フミエが自分の元に来た彼女に、「どうした!?」と聞くと、彼女は答える。
「突然、どろどろの魔物が来て、村の建物を破壊しているんです!!」
それを聞いたフミエは、急いで壊れた建物の方に向かう。
「俺達も向かおう!」
タケルがそう言うと、エルスとチリが驚く。
「嫌ですよ。貴方を連れ戻すのだけでも大変だったのに、これ以上手間かけさせないで下さい!!」
「恩のある村ならともかく、この村は貴様に酷い仕打ちをしているじゃないか!そんな、村の事なんて放っておけ!」
2人に言われて、小さくなるタケル。
そんな彼に、デュランが言った。
「こんな村でも、お主は救いたいんだな?」
タケルはそれに、小さく頷く。
「で、あれば我はお主の意志に従おう。その志が気に入った!」
デュランがそう言うと、チリがため息をつく。
「はぁ。タケルはお人よしすぎるな。吾輩が近くにいないと、また危険な目にあいそうだ!」
「ありがとう。2人とも。あとは…。」
タケルは2人に感謝して、彼らはエルスを見た。
「はいはい。行きますよ。貴方達が揃わないと、あの家でゆっくりできませんし。」
エルスは目をそらして、そう言った。
タケルは彼女の言葉を聞いて、笑顔で言う。
「じゃあ、行くぞ。皆。『トニス村』を救おう!!」
『次回予告』
『優しい優しい、タケル君は、自分に酷い扱いをした『トニス村』のために、魔物と戦い始める。
しかし、その魔物は、今までのものとは全く違うのだった。』
『次回 No.10『捕食したい』』
『今回の魔物は、どこかで見たことがあるような…。』




