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帰路、月の眼下

 時折下品な吃逆を交えながら、暗闇が飽和した閑静な街を往く人影があった。無数のギャラリーが添えられた赤絨毯の上を悠々と闊歩する俳優のように上機嫌な千鳥足が、電池が切れたかのように脈絡もなくふと立ち止まる。

 長らく感じ得なかった感覚。迫り上がってくる胃液と、幼少の経験が戒むる悪寒。男は青ざめた顔で電柱の側の排水溝に駆け寄ると、自身にそれがかかることのないよう腰を軸に身体を折り曲げ柱に寄りかかる。数刻前の、羽目を外し過ぎた豪遊のなれ果てが路傍に吐き捨てられた。酸性の液が食道を焼く感覚が疎ましく、男の嗚咽のみが周囲に木霊する。

 蛍光灯に集る羽虫と、酒気を帯びた吐瀉物の悪臭が鬱陶しく、払い除けようと掌で空を仰ぎながら後退りしようとする男だったが、嘔吐後の幾分かの倦怠感に飲まれ、フラフラと蹌踉めきその場に転倒した。

 アスファルトと激突した衝撃で臀部が悲鳴を上げる中、ふと見上げると、程よく朗らかなその光に誘われ、闇夜に浮かぶ月と目が合う。表面の凹凸が隈なく見えるような真円を眺めていると、男の口から嘲けるような笑声とともに自然と言葉が漏れ出た。

『はは、名月』

 芒の代わりにコンクリートの幹が添えられた十五夜の月は、仰々しく男の痴態を照らしていた。

ヌマチです。会員登録した途端、駆けつけ一杯と言った感じで書きました。媒体に慣れてないです。

思いつきで始めました、うう。

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