砦
「着いたぞ」
!! 馬車が一時的に停止したその土地を見た俺。
「あの竹林の地域も俺、いえ私の領土に含まれていますか!?」
「ああ、含まれている」
「ありがとうございます!!」
やった!
シーズンが来たら自分の土地でたけのこ狩りやたけのこご飯も作れる!!
「ねー、あれ、何?」
アルテちゃんの声に反応し、竹林に気を取られていた俺が次に見たものは……、
「砦……要塞?」
「土魔法使いを集めて大急ぎで作らせた子爵の住まいだ」
俺の家! 俺の城! 感動で身が震える。
「あれが! もうできているなんて! ありがとうございます!」
やや小規模の城といった風情だ。
道中いい感じの川もあったし、水田も問題なく作れそう!!
「トリデってなに?」
というアルテちゃんの問いに俺は前世で見た情報を思いだして説明した。
「砦とは、外から敵が攻めて来るのを防ぐために設けられた建造物のことで、要塞と同様の意味のものでやや小さな城であったり、柵で壁で囲った形状で建造されたりしたものだよ」
砦の主かあ、なんかかっこいいな。
「ふーん。だからカベにかこまれてるの?」
「そうだよ」
砦城に着いてからは俺達はまず庭や広場らしき敷地を通り抜け、馬車を降り、石造りの城の中に入った。
「あ、精米機とかの設計を頼める器用な人って近くにいますか? それと水田の作れる土魔法使いも、雇いたいです」
「この人材リストを参考にするといい」
俺は手渡された分厚い紙の束を見た。
「ありがとうございます、助かります」
魔法使いリストや錬金術師のところに付箋つけたい!!
「なんか高いとこあるー」
急に一人で塔に走り寄ろうとするアルテちゃん。
「アルテちゃん、目の届くところにいてくれよ!」
キョロキョロとしているアルテちゃんが危なっかしいので思わず声をかけた。
「アルテちゃんは僕が見てるよ」
「ありがとうユージーン」
「あの塔は物見の塔だ。そして夕方になれば村人も挨拶に来るだろう、まだ作業をしている者が多いから」
「はい」
わざわざ忙しいところに集まっていただけるだけで申し訳ないやらありがたいやら。
「王弟殿下にご挨拶申し上げます」
見るからに騎士という風貌の方が三人こちらにやって来て王弟殿下に挨拶し、次に俺に挨拶をしてくれたので、俺も返した。
「ああ、こちらの者達は既に配置した騎士達だ」
「おお、もうこの砦を見てくれていたんですね」
「目を離した隙にここを野盗などが占拠するとまずいからな」
野盗!!
そういやそういう世界観の所だな。
気をつけないとな、領民の命と財産を俺が守らねば。
しばらく城の中のサロンらしき部屋で一息ついた。
移動つかれを癒す為に、メイドさんが一人お茶を用意してくれた。
既にメイドさんがいる!
そういや既に騎士がいるからそちらのお世話もしてるんだろう。
「魔法の伝書鳥を飛ばすが、城にいる者に伝言はあるか?」
「エイダさんに無事砦についたと報告しようかな」
俺は小さなメモ用紙にその旨を書いて、鳥の足に結んだ。
鳥は夕焼けに染まる空に飛んで行く。
「そろそろ子爵の領民達が集まって来るだろう」
「あ、王弟殿下、彼等は挨拶だけで帰るんですか?」
「どういう意味だ?」
王弟殿下は首を傾げた。
「夕飯時にわざわざご足労いただいたので食事くらい振る舞いたいなと」
「食材なら既に運び込まれたものがあるから、好きにするといい」
「ありがとうございます!」
俺は喜び勇んで食料貯蔵室に向かった。
そしてそこにはなんと魔法の冷蔵庫があった!
青い魔石がはめ込まれてる!
これは魔道具の冷蔵庫だと倉庫番に説明も受けた。
さらにその中には水牛の肉や鶏肉や豚肉や野菜、きのこ類もある!
「鍋パーティーといたしましょう!」
「おにくーー」
アルテちゃんも嬉しそうだ。
肉だけでなく、野菜もちゃんと食べるんだぞ!
「よし、早速鍋を作るぞ!」




