衝撃の事実
俺は治療をするのに人目を避けようと言うには言ったが、宿や路地裏に行く前に……、
「その前に、冷める前に俺たちもこの肉食べていいですか?」
冷めたらもったいから、せっかくのお肉が。
「ああ、今は発作も出てないから大丈夫だ」
俺達は結局また手羽肉を立ち食いした。
その後、噴水を見つけたから、三人で手を洗わせてもらい、パンは噴水のふちに腰掛けて食べた。
食べながら会話していっそ自分たちの貸家に行こうかってことになった。
男に胸を揉まれる姿など、人に見られたくはないだろうし、少しの間胸を揉むだけなのに宿はもったいない。
帰り際にまた市場を通ってささっと食材の買い物をし、家に着いた。
外套を脱いだヒゲのおじさんの肉体は見事に鍛え上げられたかっこいい体だった。
服の上からでも胸筋がすごいのが分かる。
揉みごたえもありそうだなあ。
って、俺は何を考えて……。
しかし何やらむっわーとしてそうなので先に風呂に行ってもらった。
「そのへんにある布とか石鹸とか使ってください!」
「そうか、感謝する」
しばらくしておヒゲのおじさんはヒゲを剃ってかっこいい筋肉のイケオジになってリビングに戻って来た!
漫画ならドギャーン!! って効果音でもついてそうな感じ。
ちなみに上半身は裸で、ズボンだけ履いてきてる。俺は思わずポカンと口を開けてしばし呆けた。
「ええー、ヒゲを剃って立派な紳士に」
これにはユージーンもびっくり。
「もしかして騎士の方ですか?」
「違うが、実は物乞いはフリというか変装だった。
すまない、占い師の情報では食べ物をくれる優しい銀髪の若者ということだったので」
なるほどな!
「そ、そうですか。まあ、患者には違いないですから。ところで胸を揉んで手のひらから魔力を吸収するやり方なので、男に胸筋揉まれても怒らないでくださいね? 治療ですから」
「分かった」
さて、お風呂に入ってキレイになったイケオジの胸筋を揉むか。
右手のひらに意識を集中すると、その手が白銀色のオーラに包まれる。
四度目なので勝手がわかってきた。
「魔力吸収!」
と言って胸筋に手を当てた、それからゆっくり揉み始める。
ユージーンは同室にいるが気を遣って一応後ろを向いている。
「む……これは、確かに不思議な感じだ! ちゃんと魔力が吸い上げられているのを感じる!」
イケおじが頬を染めつつ、そんな実況をしてくれた。
しかし屈強そうな男の胸筋を揉んでいるだけなので俺の息子も今回は落ち着いている。
絵面がおかしいが、これは治療なので、マッサージみたいなもんだと思えば!
しばらく猫の肉球みたいに柔らかい上質な筋肉を揉みしだく。
目を閉じて猫の肉球だと思えば最高じゃないのか? と、思って俺は途中から目を閉じた。
女性の胸ともまた違う柔らかさ!
猫の肉球特大版だと思えば悪くなかった!
「終わりましたー」
「ありがとう! 本当にありがとう!」
急にイケおじに抱きしめられた!
俺が乙女ならトゥンクするところかもしれなかった。
びっくりした!
「いえ、いえ、治療ですから」
「そうだ、謝礼を」
そう言ってイケおじは汚れた外套をバスルームに取りに戻った。
そこに家の扉のノック音が響いた。
現れたのはレベッカ嬢だった!
「調味料を急いで持ってこさせましたわ!」
「そ、そうですか、わざわざありがとうございます!」
本当に早かったな!
魔法のスクロールでも使った!?
「貴族の屋敷のように広くはないですが、どうぞ」
ひとまず玄関に立たせて置くわけにもいかないので家の中に招いてリビングのソファに座らせた。
「あ、客人がきたとイケおじに言わないと」
「ネオ、僕がお茶の用意をするよ」
「ありがとう、頼んだ」
俺がレベッカ嬢に少し失礼しますといってバスルームに向かうと、廊下でイケおじに会った。
彼は小切手らしきものを出してきて、
「好きな額を書いてくれ」
と、言った。
え!? 小切手らしいものにはなんか立派な紋章らしきものがついてるし、すごく立派な家門の貴族なのかも!
「ひ、ひとまずリビングへどうぞ」
二人でリビングに戻ると、レベッカ嬢がこちらを見るなり血相を変えてソファから立ち上がった。
そして、ささっとドレスの裾を掴んで頭を下げ、
「お、王弟殿下にご挨拶申し上げます!」
と、言ったではないか!
お、王弟殿下ぁ!?




