表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛を伝える放浪者  作者: 凹守 燐
3/7

「失われた光:2人の奇跡」


ラディアの町を後にし、ギルヘルムは次なる目的地、音楽の町エコーヴィルへと向かっていた。エコーヴィルは緑豊かな丘に囲まれ、町全体が美しい音楽に満ちている場所だった。しかし、町に着いたギルヘルムは、人々が心に何か重いものを抱えていることを感じ取った。


エコーヴィルの象徴である大聖堂の鐘が、数ヶ月前から突然鳴らなくなったのだ。その鐘の音色は、町の人々にとって日常の一部であり、心の拠り所でもあった。鐘が鳴らないことで、町全体に陰りが見え始めていた。


ギルヘルムは町の楽器職人マリウスと出会った。マリウスは若いが才能のある職人で、亡くなった父親の工房を引き継いでいた。しかし、彼は自分の技術に自信を持てず、父親の偉大な影に苦しんでいた。


「こんにちは、僕はギルヘルムと言います。あなたの工房がとても素敵で、ぜひお話をお聞きしたいと思いました。」とギルヘルムは優しく語りかけた。


マリウスは一瞬驚いたが、ギルヘルムの真摯な表情に心を和らげた。「僕の父は偉大な楽器職人でした。でも、僕にはその才能がないんです。大聖堂の鐘も修復しようとしましたが、うまくいきませんでした。」


ギルヘルムは静かに頷き、「君のお父さんの技術は素晴らしかったのでしょう。でも君には君の道がある。君自身の力を信じてみないか?」と励ました。


その後、ギルヘルムは盲目の少女エレナと出会った。エレナは音楽が大好きで、父親を亡くした後も音楽だけが心の支えだった。彼女もまた、大聖堂の鐘が鳴らないことに深い悲しみを抱えていた。


「エレナさん、あなたの心の中には美しい音楽が溢れているのが感じられます」とギルヘルムは優しく言った。


エレナは微笑み、「ありがとうございます。でも、あの鐘の音が聞けないことがとても辛いんです。あの音色が私にとって唯一の希望でした」と涙をこぼした。


ギルヘルムはエレナの手を取り、「君の音楽の力で、町を再び明るくすることができる。マリウスと一緒に力を合わせてみないか?」と提案した。


エレナは少し戸惑ったが、ギルヘルムの言葉に勇気をもらい、マリウスと協力することを決意した。二人は大聖堂の鐘の修復に取り組み始めた。マリウスは父親の技術を思い出し、エレナはその音色を心で感じ取って助言をした。


修復の過程で、マリウスとエレナは鐘の内部が老朽化していることに気づいた。二人は、古い部品を新しいものに取り替え、音響を調整するための精密な作業を行った。エレナは音の響きを感じ取り、マリウスに的確なアドバイスを送り続けた。


何日もかけて、二人は一心不乱に鐘の修復に取り組んだ。ついにその時が訪れた。町の広場に集まった人々の前で、マリウスは修復した鐘を鳴らした。美しい音色がエコーヴィルに響き渡り、町は歓喜に包まれた。


鐘の音が町中に広がると、人々は一斉に歓声を上げ、涙を流しながら喜んだ。子供たちは手を取り合って踊り、大人たちは抱き合い、感謝の気持ちを共有した。鐘の音色は、町の人々の心に希望と安らぎをもたらした。


エレナはその音色に涙を流しながら喜んだ。「この音色、ずっと忘れないわ。ありがとう、マリウス。」


マリウスも感動し、エレナの手を握りしめた。「僕も君のおかげで、父の技術を生かすことができた。本当にありがとう。」


その瞬間、二人の間に強い絆が生まれた。彼らは互いに支え合い、心の孤独を癒していった。


ギルヘルムは町の人々の笑顔を見ながら、そっと町を後にした。彼はまた次の町へと旅立つ決意を新たにした。新たな出会いが彼を待っていることを信じて。


エコーヴィルの町を後にするギルヘルムの姿は、夕日に照らされて輝いていた。彼の心には、これからも多くの人々の心の声を聞き、彼らの支えになるという強い決意が宿っていた。

読んでくださりありがとうございます!

よければ感想書いてくれると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ