「父と子供たち」
初めての投稿になります。
高校三年生です。
慣れない文章作成で、間違いもあったらよくわからないところもあると思いますが、読んでくれたら嬉しいです。
ここは都市アルケミア。
霧が立ち込める石畳の街路には、歴史ある建物が並び、どこか現実離れしたような雰囲気が漂っていた。
ギルヘルムは、この街の片隅で人々の助けとなることを生きがいにしていた放浪者だった。彼は人々の感情を読み取るのが得意で、その特技を使って困っている人々を助けていた。ある日、彼はふとしたことで、一人の老男性と出会う。
ノーランという名の老男性は、喉に癌を患い、声を失っていて病気で老人のように見えるが、本当は40代のようだ。彼はシングルファザーとして二人の子供を育てていた。長男のダニアは17歳、次女のイリアは13歳だった。声を失った父親とのコミュニケーションがうまくいかず、ダニアとイリアは次第に反抗的になっていった。父親の無言の愛情が伝わらず、彼らの心には苛立ちが募っていた。
ダニアは学校での成績が低迷し、家に帰るとしばしば扉を乱暴に閉めて自室にこもるようになった。
「お父さん、何でこんなふうになったんだよ?」と、苛立ちを抑えきれずに叫んだこともある。
イリアもまた、食卓での食事を拒否し、父親の前で故意に無言を貫くことが増えていた。
「お父さんなんて、もう私たちのことどうでもいいんでしょ」と、冷たく言い放つことさえあった。
ノーランは、そんな子供たちにどう伝えればよいか悩み続けていた。彼の心には、言葉では伝えられない深い愛と感謝が溢れていたが、それを伝える手段が見つからなかった。
ある日、ノーランは偶然にもギルヘルムと出会う。ギルヘルムは、ノーランの苦悩をすぐに感じ取り、彼の心の声を伝えることを決意した。
ある日の夕暮れ、ギルヘルムはノーランの家を訪れた。家族は最初、見知らぬ青年の突然の訪問に驚き、警戒していた。しかし、ギルヘルムは静かに語り始めた。
「皆さん、僕はギルヘルムと申します。実は、ノーランさんのことでお伝えしたいことがあって参りました。お父さんは、いつも皆さんのことを心から愛しておられます。それを、どうか聞いてあげてください」
ダニアとイリアはギルヘルムの言葉に反応し、疑いの目を向けた。しかし、ギルヘルムの真摯な姿に次第に心を開き始めた。彼はノーランの心の声を、優しく丁寧に伝え続けた。
「ダニアさん、お父さんは君が大学入学試験に合格するように、毎日神殿に行って祈っておられました。君が一生懸命に勉強している姿を見て、どうかその努力が報われますようにと願っていたんです」
「そして、君が合格したとき、お父さんは涙を流しながら喜んでいました」
ダニアの目に涙が浮かび、すすり泣きながら言った。
「そんなこと、全然知らなかった。お父さん、ありがとう」
彼の瞳は感謝と後悔で一杯だった。彼は父親の無言の祈りと愛情を初めて知り、胸が張り裂けそうになった。
ギルヘルムは続けた。
「イリアさん、お父さんはお母さんを亡くしてから、君のために本当に一生懸命に頑張ってこられました。毎朝早く起きて、君のために朝ご飯を作って、君が少しでも寂しくないようにと努力していたんです」
「お父さんは、君がどれだけお母さんを恋しがっていたか、いつも気にかけていました。だからこそ、お父さんは君のために母親の役割を果たそうと懸命に努力していました」
「君が学校から帰るときには、いつもおやつを用意して待っていたでしょう? それは、君が少しでも笑顔になれるようにとの願いだったんです」
イリアの目には大粒の涙が溢れた。
「お父さん、ありがとう。お母さんがいなくても、ずっとそばにいてくれたんだね」
彼女の声は震え、涙で溢れた目で父親を見つめた。
「私はこんなことにさえ気付いていなかった。でも、今は分かるよ。あなたがどれだけ私のために頑張ってくれたか」
イリアの言葉を聞きながら、ノーランの目には涙が光った。彼の手は震え、子供たちの温かい愛情を感じ取っていた。ダニアとイリアは父親に駆け寄り、その手をしっかりと握りしめた。彼らの心はようやく通じ合い、家族の絆が再び結ばれた。
ダニアは父親の胸に顔を埋め、涙を流しながら言った。
「お父さん、僕たちのためにこんなにも尽くしてくれて、本当にありがとう。僕、もっと頑張るよ。お父さんの期待に応えたいんだ」
イリアもまた、父親の腕に抱きつき、涙をこぼしながら続けた。
「お父さん、私はもう一人じゃないって分かった。お父さんがずっとそばにいてくれたから、私も強くなれたんだ。ありがとう、お父さん」
家族全員が涙を流しながら、ノーランのもとに駆け寄った。彼の手を取り、その温もりを感じながら、彼らはようやく心を通わせることができた。
ノーランは涙ながらに口を開き、かすれた声で無理やり「ありがとう」と言ったように見えた。その言葉は家族全員の心に深く響いた。
ノーランが最後の力を振り絞って微笑み、ギルヘルムに視線を向ける。その目には、感謝と安堵が溢れていた。
「ありがとう」と、その目が語っていた。
ノーランは家族の温かい愛に包まれながら、静かに息を引き取った。その表情は、まるで全てが報われたかのように、安らかで幸せそうだった。
ノーランが息を引き取った後、家族は彼の愛情を感じながら寄り添い合った。ダニアとイリアは、お互いを支え合いながら、新たな家族の形を作っていった。彼らは父親の愛情を胸に刻み、その温もりを感じ続けた。
ギルヘルムはノーランの家族が彼の心の声を受け取ってくれたことに感謝し、静かに家を後にした。彼の足取りは軽く、心には新たな決意が芽生えていた。
霧が晴れ、朝日が街を照らし始めた。ギルヘルムは立ち止まり、遠くを見つめながら深く息を吸った。これからも旅を続けることを決心し、再び歩き始めた。
彼はたまたま出会う人々に心を寄せ、彼らの声なき声を聞き続けるだろう。その旅は終わることなく、彼の心に灯る光は、愛と希望を広めるために輝き続けた。
読んでくださりありがとうございますm(_ _)m
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