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認識  作者: 冬季
1/1

中学生

「彼女できんて」

できるできる、と床についていた膝についたゴミを落としながら、私は言う。

できてほしくないけどって言う本音は笑顔の裏に隠したまま。

みんなに好かれる人気者と、目立たないタイプの私。

勉強が大の苦手な彼と、勉強しかできない私。

SNSが盛んな彼と、LINE以外スマホに入っていない私。

スポーツ万能な彼と、スポーツなんてなにもできない私。

顔が整っている彼と、全く可愛くない私。

どこをとっても正反対な2人が、授業中に抜け出してこっそりこんなことしてるなんて誰も想像つかないだろう。

「てか」

話が変わる。

「いま授業どこまで行ってるんやろ」

今更?

「進度早くないからそこまでやない?」

こいつと話す時、私は絶対本音を言わない。

「普通に入試前にこんなんしてるのやばくね?」

「やばいよ」

いつもは給食時間やのにな、と彼は笑う。

こいつ笑った時の顔マジでかっこいいな。

「先戻るわ」

「はいはい」

髪を結び直すフリをするために鏡の前に移動する。

廊下の窓に映る教室のドアが開いたのを、手洗い場からこっそり確認して、ほどいていた手を止める。

余韻に浸る。

程よく熱っぽい体温、柔軟剤の柔らかい香り、感じている吐息。

性器特有のあの匂い、それに反して美味しくも不味くもない味。

さっきまでの出来事が鮮明に思い出されていく。

私の名前を興奮した色で呼ぶ声がフラッシュバック。

そこまでいって帰ってくる。

私と彼の間にある関係で一番大切なことはたった一つ。

間違えないこと。

距離感を。

私と彼は利害の一致で成り立っている関係だけの間柄で、それ以上もそれ以下も求めちゃいけない。

彼女になりたいなんて、間違っても想っちゃいけない。

ゴムの中に髪を3回通して結ぶ。

自分に彼の痕跡が残っていないか確認して、教室のドアを開けに歩く。

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