96話
少しだけ変な足音だった。
軽いような、つま先で歩く感じ……そして複数。
遠目で見えるソレは結構背が高く。何か、あれは馬かしら、何かに乗っている様な。
そんな敵。
私が個体名を識別する前にその敵は私に向かって何かを飛ばした。
何だろう……と考えてしまった私の前に大きい身体が入り込みその何かを大きな盾で弾いた。
「気を付けろ……ケンタウロスの弓矢だ」
エクスパンドさんはそう私に教えてくれた。
その後も間髪入れずに弓を撃ってきているらしくエクスパンドさんの盾にカツンという音が連続で鳴る。
牽制も含め弓の数が多い。
「…………どうしましょう。コレ」
「奴らは接近戦を嫌う。出るタイミングは3連弓を弾いた瞬間だ、後はお前が何とかしろ」
なるほど。とタイミングを図ってみた。
――――カツン…………カツン――――――ガッガッガッ。
今っと大盾から勢い良く出る私。
距離は10メートル程か。中々な距離がある。1回無いし2回ぐらい避けないと辿り着けないかも。
前方に集中しながら走る。
弓を構えた時、身体を動かし的を絞らせない様にする。
それでも飛んできた弓。
私が前方へと走っているのもあるのか早い。
その弓矢は躱すまでも無く後方へと飛んでいったがとんでもないスピードの弓矢だった。
結構な距離あるのにね。
……あれを食らったらって考えないようにしておこ。
……昔、頭に矢を受けてしまってな、とかのお話になっちゃうよお。
ケンタウロスの全身が見えた。
次の弓をつがえている所。私はソレを見て更に距離を縮める。
次弾。敵正面ケンタウロスは私に狙いを付けている。
正面からでは上手く見えないけど、もう弦を引いて手を離す等の動作のみであの弓は私を目掛け凄い勢いで飛んでくるのだろうか。
敵と目が合った……気がした。
一呼吸遅れて弓が飛ばされた気がして直ぐに左へ身体を1マスほど避けた。
――――――――――。
避けた瞬間に私がいた所へと弓が通過する。
これもかなりのスピード。
アレを食らったらスタート地点まで戻されちゃうね、たはは。
位では済まないだろうね。
昔、ピアスを開けていた姉が「穴が増えたよ」とか言っていたけど、言い方よって思った事を思いだした。
あんな姉でも私には身内だからなぁってイケナイ。集中、集中。
そしてケンタウロスは次の弓をつがえている。
距離的に読みが甘かったみたい。もう一撃……来る。
と思ったけどつがえているのに時間が掛かっている様に見えたって思ってあ…………。
次ってもしかして3連が飛んでくるの?
距離はもうすぐだ。
あと……10メートル。
急げ! 急げ!
もう目の前なのにケンタウロスは私に弓を向けた。
カチリと音を出して銃口を突きつけられた感覚に近い。
もう研ぎ澄ませて発射に合わせるしかない。
一触即発。
私のメイン武器である木刀を敵へ。
突きを入れながら駆ける。
弓の初速と私の突き、どちらが早いか。
……多分負け。
でも気合いで、気持ちで、かなぐって、突きを、私のいまの精一杯で攻撃をした。
「うぉおおおおおおおおおおおおお」
私の剣の切っ先は敵ケンタウロスに届いたと同時に敵の弓矢も「ブゥン」と発射された。
ほぼゼロ距離で。
横3連の弓が発射。
高さ的には私の胸辺りを中心に3連。
しかし私の剣、切っ先はケンタウロスに届いている。
…………押し切るか、のけぞるように躱してみるか。
どっちだ――――――――――――――――。
私の選択はのけぞるだった。




