94話
動いたのはジルさん。
何の魔法か解らなかったけど翼を持つ敵に対してコンパクトな魔法の塊を放った。
次にサマーさんとジャッジさんが駆けた。
エクスパンドさんは私の前へ出る様に進んだ事で前が、視界が半分以上さえぎられる私。
前がどうなっているのか余り見えない。
側にいるエクスパンドさんが何かを受け止める様に防ぎながら戦っている。
結構大きめの何か……多分翼を持っていたあの敵だ。
こういう時、どう動けば正解か……謎。
なぞなぞだよ。
多分正解は現時点では無い。動かないのが正解な気はするケド。
後ろからはジルさんの魔法詠唱が度々聞こえるのと、エクスパンドさんよりも前に居るサマーさんとジャッジさんが戦っているであろう何かの音が聞こえる位。
私は無理に動くのは止め、状況把握に努めた。
と言っても前はほぼ見えない。
……しかも私が横へ動くと面白いようにエクスパンドさんも動く。
多分後ろに目がついているんだ。このお人。
背中が動くなと語っている。
大きな背中で語る人。
普段は余り喋らないのにね、もう。
私が少しでも何かと足掻いていると急に視界が開けた。
どうなった? って思ったけどまぁそうだよね。
敵は――――――見事に一掃されていた。
「……まぁこんなもんか」
ジャッジさんが誰に話すでも無く一人呟いている。
サマーさんは返り血を拭ったり魔石を剣の先で上手く取り出ししゃがむ事無く回収している。
エクスパンドさんがどいてくれた事によって回復した視界。
一掃された敵を見た。
あれはサマーさんかなとかあれはジャッジさんとかそういう具合に誰が何をどんな感じで倒したのかを私は見て想像した。
翼を持った敵もいなかった。
いるのは翼の部分が焼かれている何か。
出来れば現場検証したいぐらいって思ったけどまだ此処は地下2階。
機会はまだまだある。備えよう、次に。
もう早い事で地下3階に着いた。
何となくだけど下へ降りる手前にいる敵は中ボス的な感じの強さがあるっぽいね。
唯、このパーティが強すぎるから微妙に解らないけど。
そう、このパーティの底はまだまだ見えない。
そしてこのダンジョンの敵は結構強い。
本当に此処、中級なのかしらと思わせるぐらいに。
地下3階のフォーメーションは私とエクスパンドさんが前衛となった。
その後ろにサマーさんとジルさん。後衛にジャッジさん。
エクスパンドさんにどう動けば良いでしょう? と聞くと「好きに動けば良い」と彼は言った。
……考えすぎても意味ないかなと思った私は考えるのを止めた。
感覚で行こう。
このパーティは私が無茶しても、いや、何をしようと何とかしてくれる。
そんな強さ、経験、余裕がある。
この……中々骨があるダンジョンの中でも。
何かを察知した。敵かなと思った。
風が……吹いている。嫌な臭いもする。
そしてバサッバサッと音が聞こえた。
隣のエクスパンドさんを見ると彼は「来るぞ」と一言だけ話してくれた。




