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56話

「……もうすぐ付き合って3ヶ月だね」

「そうだね、このまま行くと一年なんてあっという間だな」




僕の彼女、綾姫と付き合ってからもうすぐ3ヶ月。

半分引き籠もりだった僕は彼女のお陰で外にも出られた。



僕は意外にのど元過ぎれば的な考えの人らしく、何故引き籠もっていたのか? という理由も忘れていた。


今は毎日が充実している。

生きるって楽しい。


人生最高っとまでは行かない迄も、生きていて良かったと思うようになった。



あんなにウザかった姉のラップも今は心地よく聴いていられる。



丸くなった。

今なら人に少し優しく出来る気がする。


綾姫はとても明るく、クラスでも皆に愛されるキャラだった。

恐らく影ながら狙っている男子も多かったに違いない。


大っぴらに話をしてはいないけど一緒にいる事が多く、帰りも一緒に帰っている僕たちを周りのクラスメイトもそういう目で見ているような。


そんな状況だった。

僕も彼女のお陰で少しづつクラスに溶け込み普通に話が出来る友達も出来た。



これからの人生を、学校生活の残りまだ2年程を綾姫と一緒に楽しみたい。


毎日を生きたい。

先が早いが将来をも朧気ながら考える様にもなってきた。



そんなある日。



彼女と些細なことで喧嘩をしてしまった。


その物事は、彼女には放っておけない出来事らしく、僕は棘のある言葉で彼女を傷つけた。




だが、明日。僕の方から謝ろう。

僕の方が大人げなかった。そう……そう話すつもりだった。



――――――――しかし、そんな明日が来ないのをその時の僕は知らなかった。



彼女は車とバイクの事故に交差点で巻き込まれた。

即死だったらしい。


僕は、悲しむ間も与えられない様な。

現実離れした感覚に……世界がグニャッと歪んだ。




一日で人生が変化した。

慣性で学校に数日間だけ通ったが、もう……無理だった。

自分の足を前に運ぶ事が出来なくなった。重い。


上を見上げる事が無くなった。

食事も……何を食べても味がしない。



ああ何で…………さらおのラップがイラつくんだろう!



姉の話し方が、いや、僕に関わる全てに於いてイラついた。


その後は何もしなかった。

ただ、何もしない日々が続いた。

そんな時、偶然に昔の知り合いに出会った。



声を掛けられた。

彼女は今10歳ほど。

僕に気が付き声を掛けたらしい。



彼女は中々容姿が整って可愛く育っていた。

話し方も大人っぽい。


そんな昔の知り合いと、話をするうちにとあるゲームを勧められた。

「今のお兄ちゃんにはピッタリだよ、このゲーム。今はベータテスト中なんだけどね」


「ふーん」


「そのゲームね、別名神々が遊ぶゲームと言われていてね、何でも条件をクリアーすれば1つ、願い事を叶えてくれるらしいよ」


勿論、半信半疑。

ただ、気を紛れさせる事が出来ればなと思い、発売日初日に購入した。


お店の特典のクジで身につけると幸運を呼ぶブレスレットが当たった。


フン……今更幸運とか――――と思いながらも付けてみたら案外しっくりきた。


家でゲームをインストールするためにPCを久々に立ち上げた。半分スマホ依存気味の僕はPCも最近使っていなかった。


…………恐らくあのゲームを最後に。




久々にPCを立ち上げると画面にあるあの30万円したゲームのアイコンが目に飛び込んだ。



なにげも無しにクリックし、ゲームスタートすると――――――――





は……………………?。


「あっれ? 久々だね…………五次郎くん」

「っ……………………」



プシュウと電源が切れた。

勢いの余り自分でPCを強制終了させてしまった。


ええと、あれ? 僕は今……………………何を見た?

そこには間違いなく僕の彼女…………綾姫がいた。



――――――――つ、疲れているのか…………僕は。

久々に見た僕の彼女、綾姫の姿に自然と大粒の涙が零れた。

……僕は、駄目だな。幻影を…………見るなんて。


ゆっくりとした動きでまぶたの辺りを軽く指で揉んでから再びPCの電源を入れた。


ブーンと壊れずに立ち上がるPC。

先程と同じようにゲームを立ち上げた。



「おーいおい、来て早々人の顔見るなり逃げないでよー。ほんとにい……悲しむゾ」


「……………………は」

「……は?」

「ははっ」

「父っ…………違うか!」


「あはははははは。僕は壊れてしまったのかな? 目の前に…………話しかけてくる綾姫がいるんだ。見えるし聞こえるんだよ」


「…………何かの演芸とか? いや、拾い食いでもしたのかい? うーん……何だろうなぁーごじくんだからねぇー」


彼女、綾姫は僕の前、画面の先で腕を組みうんうんと悩んでいる。


一体どういう事なんだ?


「あ、解った。お姉さんのらっぽが心地よく聞こえるようになったとか?」


「…………ラップね」


「そうそうそれそれようようへいよーお」

「ちょっと待って、綾姫…………キミは綾姫だよね?」

「うん…………うん。そーだよ、私はワタシです」


「…………少し教えて欲しいんだけど、キミは僕のクラスメイトだよね?」


「…………そーだね」


「僕と……………………この前さ、口げんかしたよね?」

「……………………そうだっけ? ああ、うんしたかもね」


「……何か、かみ合わないんだけど…………」


「そ、そっかー。ワタシがヘマしたみたいだね…………ごめんねごじくん。明日また改めて謝るからさぁ」


「明日また…………キミに会えるのか?」

「えっ。う、うん。明日、学校でねっ」

「――――解った。明日」


…………一体。何がどうなっているんだ? あ、明日。もし、彼女が普通に学校に来たら…………僕がおかしい事になってしまうのか?


まさかな。


流石に来ないよな…………死んでしまった人間が。

普通に…………。


翌日。再度、昨日のことを考えてみた。

しかし答えは昨日と同じ。意味が解らなかった。


行けば……解るんだよな。

………………………………行くか。


久々に学校へ行くことにした。

騙されたと思って。


騙されに行ってやるよ綾姫。

電車に乗って学校へ行くと後ろに気配があった。直ぐ真後ろに。


「ごじ……大丈夫?」

「ああ…………」


姉のさらおに呼び止められ制服の後ろ、裾を指で掴まれているのを振り解く様に覚悟を決めた。



学校に着きクラスへと向かうとさらおがまた僕の制服の裾を掴んでいる。


「…………さらお、教室まで付いてきて」

「おおぅ―――――――うん、まかせろようようヨーグルトう」


最近気が付いた。

このウザいラップは意地を張っている時とか、覚悟を決めたときなどに多いことに。検証はしてないけど。



綾姫の事を考えたら足が前へ出なくなった。



足が――――すくむ。


「さらお……引っ張って――――」


「お、おうけーべいべーかもんごじろ。――姉ちゃんに、任せろよう」




はじめの一歩が出ると自然に歩けるようになった。

すくんでいた足も力強いさらおの手で収まった。僕も――――――――覚悟を決めた。


明日も恐らくお昼以降となります。


次で五次郎編は一旦終了です。

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