133話
半分に切り下ろしたレッドフレアの片方が消えた。
そしてもう片方は球体へと元の姿に戻った。
レッドフレアとは2回ほど戦ったことがある為この現象を私は知っている。
単純に小さくなった。
この個体は半分ぐらいの身体が残っていればそのままの体積分で自身を形成してしまう。
つまり小さくなって元通り。
もう一度あの個体を半分にすると倒せる。
しかし、半分になったレッドフレアは動きも速くなる。
私も動きは速いのだけど小さく早い物体を剣で切りつけるのは中々至難の業だった。
ニュータ○プではないからねえ私。
その小さい物体がご乱心とばかりにファイアの魔法をそこら中に発射し出した。
「わっ、わわっ……」
殆ど威力は無いファイアでも触ると熱いし火傷するよ。
私はもう火傷、したくないんだ。ひりひり。ちくちく。
そんな時に宝箱が私の隣の虚空から生まれるように飛び出しガシャンガシャン。跳ね回り素早い動きでレッドフレアを宝箱の口を開ける様に開きバクンと…………。
食べてしまった。
「………………ナルちゃん」
宝箱は数秒ガタガタと暴れてから静かになった…………。
そして中からナルちゃんが「こんなんでましたよおー」
とニコニコしながら両手を広げて手に何か持っていた。う、うん。レッドフレアの素材だね。
「うーん。やっぱ味はまぁまぁだねー」
「そっか………………」
お腹が空いていたのかしら。
……何時か私も食べられてしまうかもしんない。
想像したらかなりのスプラッタだった。
バリバリと…………いやいや怖いよ。
ふぅ、と一息付いた時まだ敵がいることに気が付いた。
あれは…………テラーギル。
通称、空飛ぶさかな。
群れでいる時と個体でいる時があり、群れでいる時は恐ろしい、というか逃げ一択。
今はお魚は一匹。
そしてヨダレを垂らしてニコニコしているナルちゃんが隣にいる。
◇◇◇◇
「……あー美味しかった」
「お魚好きなの? ナルちゃん」
「此処ってさあ、あんまりいないんだよね、お魚」
「……そう言われてみるとそうだね」
確かに私もダンジョンに来てから殆ど肉しか食べていない気がする。
もう肉食獣さらおと呼ばれてしまう日も近いかもなここ毎日。がおがお。
この前、久々に実況でもと思い実況編集から実況ボタンを押そうと思ったんだけど、押せなかった。
おーい実況者と説明を求めたんだけど場所によっては実況が出来ないって返答がきた。
久々に実況したかったんだけどね、残念。
もうすぐ次の階層かなぁとか思っていたら結構な気配。プレッシャーを感じた。
何か…………強い敵がいる。
多分、私がまだ見たことが無い敵かな。
ナルちゃんはもう引っ込んでしまった。
心構えをしてからゆっくりと前方へ進む。
風に乗る獣の臭いと共に、低音でグルルルルと唸る様な声が聞こえた。
犬系とかかしら……草原のロンリドッグは結構倒したなぁ。
とか思い出していたら地面を駆ける音と共に向かってきた――――――――
――――私が身構えると正面の敵は動きを止めて私を見る。
「………………」
その者は動物で例えるとやはり犬だろうか、何に分類するのかは解らないけど強者のオーラが凄かった。
犬に似た敵、その正体は恐らくケルベロス。
犬にして三つの首と頭を持ち生きるモノ。
結構大きい。初見で気になったのは大きさと動き。
まぁ確かに、三つも首があるのだからその胴体? は大きく、広くないと支えるには無理がありそうだよね。
そして動き、恐らくある程度はスピードもありそう。
ケルベロスはまだ私を見ている。
三つの首に三つの頭。当然に目は合計で六個ある。
その全ての目が私を見ていた……。
目は口ほどに物を言うという諺があるけれどもそのケルベロスA~Cの目も何かを物語ってはいる。
ケルベロスAは私を観察している。
ケルベロスBは私を観察している。
ケルベロスCは私を観察している。
そうなのだ。ケルベロスは私という個体を観察している様に見えるんだ。
もしかして知能が結構高いのかも知れない。
やはり私は言葉が通じるのなら、無闇に戦いたくは無い。
穏便に済ませるのならソレに越したことは無いと考えてしまう。
こんなダンジョンの地中深い下層にいたとしても。
「…………もしかして、言葉……話せますか?」
目の前のケルベロスにそう話すと同時にケルベロスは私の方へ火を噴いてきた。
残念…………戦闘開始。




