132話
「ねえ、ナルちゃん……」
「ん。どったのさらちゃん」
「ええとね、このダンジョンに良さげな武器とか無いの?」
「ああ、武器ね…………あるよ?」
「ソコへは私でも行ける場所?」
「んー。そうだなあ。ああ確か166階に武器が入った宝箱あったかなあ?」
「ほほお…………それは……つおい?」
「ボクにはわかんないよ? でも武器だから、美味しくはないと思うのです」
うーん……今の武器より強ければ取りあえずは良いか。うん。
なるちゃんは武器にはそんな興味が無いみたい。
私の木刀は返してくれないのに……。
道すがらでもあるし、その宝箱目指しますか! うんうん。
ついでに魔法も中級練習しながら行こうかな。
「祈りよ! 始まりの聖者に届け」
という事でダンジョンの160階層へとジャンプした。
この辺はもう1階層毎に結構大変なんだよね。敵も強いし。
「ふぅ……」
結構ジャンプには慣れてきたのか、気持ちが悪くなることが減った気がする。
イトウさんに話したら「ソレはお主だけじゃよ」と言われた。
慣れなんて無いらしい。
この行為はそれ位には常軌を逸しているらしい。
原始魔法の範疇に値するとか何とか。イトウさんは中々魔法には詳しいのかしら。
まだ余り使っている所を見たことは無いけどね。
160階層。カプリスダンジョンの最深部が200階。
その160階。出現する敵の強さは中々な感じ。
もう一つ降りるのに結構な時間と労力を必要としている。
素材も回収するので倒さないといけない事も多い。
素材回収が必要無い敵は基本的にはスルーしている。ハイド(隠蔽)により。
私のハイドの能力はとても高い。
しかし時折効かない相手もいることはいる。
そういう敵ほど強さも兼ね備えているからタチが悪いんだけどね。
しかし、このダンジョンで私が一番学んだ能力は逃げる事だった。
そんな私でも逃げるタイミング。判断が少しでも遅い場合は最悪死んでいた。
それでもあの日から数えると死んだ回数は一桁、まだ片手程度。
でもコレをまだと言ってしまう事自体が狂っているという事はもう自覚している。
死ぬ度にお供えされている私の腕は誰かに食べられているんだ。もぐもぐと……。
160階層の敵。
もう複合でいるのが当たり前。
やはり降るごとにドンドンと敵は凶悪になっていくし強さも相応。普通に強い。
まだ余り出てこないが、魔法を使ってくる敵は少し苦手意識が付いている。
魔法というのは、やはり厄介で攻撃魔法でも微妙にホーミングしてくる事が多い。
なので避けるという行為がとても大変。
武器で魔法をいなすという事をしてみたんだけど、上手くいかない事が多かった。
イトウさんに聞いてみたら「なんじゃ、そんなのは簡単じゃぞ」って。
何でも魔法というのは基本四種。火、水、風、土。
自然界にいる生き物なら基本はこの四種を使うと。
なのでこの複合の魔法を武器などに纏わせれば基本的には弾く事が出来ると。
魔法は練習もそうだけどセンスに依る所と才能に依る所が大きいんだって。
一応私には凄い才能があるみたい。
だけど感覚派だから本番で覚えていくタイプじゃろうと言われた。
まぁ――――そうかも知れない。
でもビックリしたのは、イトウさんが魔法に詳しい事。
余り魔法を使っているイメージが無かったから寧ろ剣士とかそっち系かと勝手に思い込んでいたんだ。
でもイトウさんは魔法使いらしい。
あれだけ動けて武器も使うし、器用だし……うーん。
私の中で魔法使いのイメージは崩れ去った。
今度イトウさんが何者なのか、そろそろ聞いておかないと。
何か聞くといっつもはぐらかされている気もするし。
ストレートに聞くと答えてくれる事も多いんだけど、大事なことは話してくれない。
そんな気がする。
敵が現れたというか私は敵に発見された。
名をレッドフレア、強敵だ。
――――その個体は丸い球体に近く、色は名前通り赤い。
ぷかぷかと浮かぶ赤い球体は高レベルの火魔法を使ってくるんだ。
私の得意な隠蔽も効かない為、小細工は効きにくい。
魔法は何時発動し此方へと向かってくるか……。
基本的には火の系統の魔法を使ってくる敵。
この場合は剣に火の属性か水の属性、若しくは両方の属性を付与させると吸収、弾くなどの効果が出る。
しかし、全ての魔法をそう上手く弾ける訳では無いのであくまでも選択肢の一つ、確定していない未来の出来事のひとつ。
私はそっと水の属性を頑丈な銅の剣に付与させた。
そして予備動作も無いままに、私の正面にいるレッドフレアから魔法が放出された。
自信は無かったが己の勘とイトウさんからの知識を信じた。
ぷかぷかと浮かぶレッドフレアから赤い色をした魔法が放出された。
魔法を見て瞬時にコレは何々の魔法……とか解る人ならアレだけど私にはわかんない。
だから基本的には躱すのが一番良い気もする。
でも魔法その物が発動というか、形を形成するタイミングっていうものが確かに存在し、その瞬間を見極められれば後の先、つまり後手の先手を狙えると思う。
若しくは全ての魔法を弾く、吸収など出来ればもう警戒する必要すら無くなる。
勿論、私自身が魔法を食らってもダメージを負わなければそもそも避ける必要すら無くなる。
今の私に適している方法は何だろう?
練習次第で見極めてからの後手の先はいけそうな気がするかなぁ。
そして手番をどうするかなのかな?
まだまだ私は実戦経験が足りていないんだ。
レッドフレアから放出された魔法を私は躱した。
……すると躱した先には赤い火柱が。
魔法はファイアウオール、その出来損ないだった。
何故出来損ないの火柱だけになっているかは謎だけど躱して距離を詰める。
射程距離に入り私は水の属性を付与させておいた頑丈な銅の剣をレッドフレア相手に振り下ろした。
敵の防御力が脆かったのか、属性の付与が良かったのか解らないけどそこまで切れ味の無い頑丈な銅の剣でもレッドフレアを半分に切り下ろした。




