126話
「おおー。やりましたね先輩。サイコロの目、全ての条件を手にしましたよ」
「得したな、桃萌。ええと何だったっけ? 忘れたわ」
「うーんと…………はい。私も忘れましたね、あはは」
「その内思い出すだろ。そろそろ今日は帰るか、桃萌」
「はい、先輩」
帰り道に喉が渇いたからジュースを自販機で買ったら当たりが出てもう一本選べた。
でもそんなに飲めないから桃萌にあげた。
お釣りを手にすると何故か760円も釣り銭入れに入っていた。ラッキー。
家に帰ると妹のさらおがリビングでジュースを飲んでいた。
「お姉ちゃんおかえり」
「ああ、ただいま」
「今日はお母さん忙しいから勝手にご飯食べてだって。ひとり1000円もくれたよ」
テーブルに1000円札が置いてあった。
「…………五次郎は?」
「わーい貯金しよーって部屋に戻っちゃったよ」
「さらおは何食べるん?」
「うーん。今日はお肉の気分なんだよ? だから牛丼買いに行く」
「おっ、良いね、私のも買ってきてよ」
さらおに1760円渡して3個頼んだ。
お前と五次郎の分も私の奢りだと言うと。目がキラッキラに輝いていた。
「…………今日は何か良い事あったの? ねえちゃん」
「……まぁ、そんな所だ、気を付けて買ってこいよ」
…………こんな日もアリだろ。
今日は飯食って早めに寝ますかね。なんか眠いし。
何時ものように学校へ行き、授業を受けてたんだけど、何だか今日は途中で帰りたくなりサボる事にした。
桃萌に今日抜けるわと話すと私も帰るっすと言ってきた。
「単位は大丈夫か?」
「数えてるんで問題なしっす」
ジュースを買って学校の裏庭で桃萌と休んでいると誰かが来た。
此処は結構特殊な場所で、言うなれば不良に近い様な人しか来ない場所だった。
しかも見たことが無いし、制服も着ていない。
一応ギリ学校の敷地内なんだけどなぁ。此処って。
「うわ、懐かしいなー」
「ホントだ、まだあるんだねー」
「良く此処でサボったよな、俺たち」
「お、在校生がいるw」
「サボるなよ若者。まだ授業中だろ?」
「あはは、後輩ちゃんだね、うちらの」
話から推測するに何年前か知らないけど卒業生みたいだ。
背の高い男2人に女1人の計3人。
「…………うちら先に此処に居るんで遠慮して貰えますか?」
「可愛くないな。後輩、お前らだって授業サボって此処にいるんだろ? 勉学にでも励めよ」
「……そんなのはウチらの勝手でしょ? 目障りなんで消えてくれません?」
「――――――でさ……お前、2年の誰よ?」
「聞くなら自分から名乗れば? ななしくん?」
「先輩、こいつらムカつきますね……やっちゃいましょうか?」
「そーだな。……アレやらせれば? 確か思い出したけどバージョンアップしたとかだったよな?」
「あは。確か、そんな感じでしたね。先輩」
桃萌が一歩出て正面に『ルーレット』を出した。
「そこの無礼者3人。コレ廻してねー」
桃萌がそう言うと嫌がりもせずに桃萌の前へ来て『ルーレット』を廻しだした。
持ち主の桃萌自体が相手の代わりに廻す事も出来るらしいけど「何時も運命は自分で決めるっす」と言って嫌な奴とかがいると廻させている。
A男がルーレットを廻すと楽しそうに校庭をウサギ跳びで10週。かけ声は「わっしょい」
フラフラしながら「俺、ウサギの気持ちを確かめてくる」と言ってぴょんぴょんしながら行ってしまった。
次にB子がルーレットを廻すとブヒブヒ言いながら鼻を広げて四つん這いでA男が終わるまで近くで楽しそうに応援する。「待ってぶひー」と言いながら凄く楽しそうにA男を追いかけるB子。
最後にC男はそんな二人を見て逃げ出した。
けど直ぐに楽しそうに戻って来てルーレットを廻す。
C男がルーレットを廻すと二人が終わったら家まで連れて帰れ。
お、結構楽そうだね、当たりじゃね? とか、思ったら続きがあって、そして1ヶ月間誰かと話すときは語尾に「でさ……お前、2年の誰よ?」と必ず付ける。
という微妙に恥ずかしい奴だった。
C男もそのまま2人を追いかけて行ってしまった。
「……どの辺がバージョンアップしたんだろうな?」
「そうですねー。良く解らないっす」
「ま、良いか、帰ろうぜ…………」
帰りにデパートに寄りたかったから向かうと駅で声を掛けられた。
「ねぇねぇ、君たち可愛いね。うちさ、モデルとか芸能関係の仕事も多いんだけど興味ない?」
最近は余りキャッチとか見なかったんだけどな
「…………桃萌」
「ういっす。……おにーさん、ルーレットに興味ないですか?」
「は、ああ良いね、じゃあうちの事務所で楽しもうよ!」
「…………あれれ?」
手を握られて連れて行かれる桃萌。
おい、ちょっと! って思ったけどどうにでもなるかと思い付いていく事にした。
「ふーん、コレがルーレットか。楽しそうだね」
男はニコニコしながらルーレットを廻す。
「うちはねー。最近出来たマッサージ屋さんなんだー。現代社会で疲れたサラリーマンさんとかをマッサージで癒やしますと夢の国をコンセプトにした。お店でね。どうかなーキミたち可愛いからアルバイトでお金稼がないかい?」
目の前の男はそう話しながらルーレットを廻し続けている。
――――そうなのだ。
この男。ルーレットを止める気が無く廻し続けている。
そして私たちにアルバイトをやろうと永遠に色んな話をしていてその内に此処の従業員か誰かがゾロゾロとやってきて6帖程の事務所は人で一杯になった。
「お、若ぁ。良い子見つけましたネ。二人とも可愛いじゃ無いですか! へっへっへ」
「ホントだ、若いね-キミたち。そうかそうか、お金欲しいよねー。うんうん、おじさん達と一杯稼ごうね! なぁに大丈夫お仕事はとっても簡単だから!」
これはアレだ。あのヤクザ屋さんの奴だ。関わっちゃイケナイ系の。
「桃萌。ルーレット止めろ」
「はい――――――――」
「おっとっと…………まだ廻してるんだからね。その間コッチの話しに付き合ってよ。可愛い子ちゃん達」
ルーレットは止まらないし男が手にしたまんまだ。
逃げようとソファーを立とうとすると肩を掴まれ座らされた。
「――――まだまだ話の途中だからさぁ! せっかちだなぁ! もう少しゆっくりしていってよね!」
……打つ手が無い。
いっそのこと暴れてみるか? 瞬間悩んでいた。
「ただいまーって…………あらあら、何か様子がってあらあ…………可愛い子達がいるー」
とソコへ場違いなギャルが扉を開けて入ってきて、私たちの様子をジロジロと見ている。
「ふーん…………」
「…………お嬢」
「政…………もしかしてこの子達。攫ってきたの?」
「い、いえいえ。滅相も無い。ちょっと可愛いかったのでお仕事の斡旋でもと……」
「うち…………そういうのは駄目だって言ったよね? ね?」
「あっはい。いや、そういうのでは無いつもりでしたし…………」
「ホントかなぁー。あ、丁度いいや、この子達うちが預かるよ? 良いよね?」
「は、はい。どうぞどうぞ。喜んで!」
「じゃあちょーっと付き合ってねー」
突然の乱入者にも戸惑っていたが、此処にいるよりはまだ良いと判断し私と桃萌は付いていく事にした。




