125話
「ねぇ先輩、ねぇってば。聞いてますか? ワタシの話」
「え、あぁ。うん。聞いているよ有栖」
考え事をしていた。
この隣にいる後輩。有栖桃萌に出会った時の抱えていた何かについて。
「だからー。ワタシの事は『桃萌』か『もえもえ』でって言ったじゃないですかー先輩」
「お前は性格が変わったな。私と出会った頃はとても大人しそうな子だったのに……」
「アハッ。高校デビューって奴ですって先輩。この服装も髪の毛も色々とギャルを見習ってイキリファッションを研究したんですからー先輩の為にぃ」
「…………何故そこで私のためになるんだ? 桃萌」
「先輩みたいな女には、ワタシみたいなのが隣にいる方がバランスが良いんですって!」
「桃萌、私みたいな女ってどー言う事だ?」
「いや、先輩、怒んないで下さいよぉ。今日はあの日ですか? ホントにもうもうおこなんデスか?」
「うざ……」
「オコおこぷんぷん。にゃーデスよ、あはははははは」
コイツ、桃萌は壊れている。
変わってしまったというには変なほどに性格が変化したと思う。
その出来事について、桃萌と出会った時の事をどれだけ思い出そうとしても思い出せない。
何か……変な生き物がいた様な気がするのだけど駄目だ、覚えていない。
そして私も最近変なんだ。
そうだね桃萌がそう言うならそうだよね。
とかの思考になってきている気がする私も凄くウザい。
一体どうするべきか。
いっそ、流れに任せて生きるのもイキるのもアリなのかなぁ?
そんな心境の変化に戸惑っていたのはこの頃までだった。
ねぇ先輩。コイツらマジ酷くないですか~。
ちょっとワタシの手には余りそうだしー。
やっちゃってくださいよぉー。
そんな事を私に話す桃萌。今日もそうだった。
昨日もそんな感じだった気がする。
そんな日がずっと続いている。
それが最近の日常。それが現実で正しい。
「え、ああそうだね。……オマエ達、土下座で済むと思うなよ? 知らんからな」
私は怯える他学校の生徒にそんな言葉を投げて言わば脅している。
ムカつくからね。こういう一般人は。
という流れで桃萌の持つ『ルーレット』を怯えている他校の生徒二人組に廻させた。
コレは桃萌、曰く神様の決めごと! なんだそうで、その『ルーレット』に止まった出来事の罰を受けさせる。それが桃萌の目的らしい。
今日止まった目は「ノーパン」と「ノーブラ」だった。
「アハハは。おいお前、パンツ脱いで寄こせよ、隣のお前はブラだゾふひひひぃ」
嫌がる女。
しかしそんな女にも容赦のない後輩の桃萌。
あ、私も同罪か、あは。
狂気。そう言って良いのかも知れない。
最近心がザワつくんだ。どんな時にザワつくのか。
考えてみたんだよ。
桃萌の言ったことに対して違うとか否定を考えた時、私の心がザワついたんだ。
ん、まぁいや、そんなんだよね。桃萌の言う事はいちいち正しい。
そう思う。心から。だからこれで良いんだ。うんうん。
桃萌の持つ『ルーレット』はその時々によって目が違う。
始めの頃はもっと、なんていうか。
優しい目だった気がする。
あんパン買ってこいよとか、ガルガルくんの当たり棒出るまでアイス食べろとか。
コップの縁に座って見ろよとか。
お前誰かに一善してこいよってのもあった。
しかし、徐々にその『ルーレット』の目は変わっていった。
それに対して桃萌はレベルあっぷですうー。とか毎回言葉に出して言っている。
昨日は強面のお兄さんが相手だった。
しかし私の敵では無い。
あんな強面の癖に猫にご飯上げるなんて、お前、自分の顔考えろよな! って桃萌は難癖付けていた。
でもホントそうだ全くもう。
私たちの言った事に対し強面お兄さんは嫌がりもせずに『ルーレット』を廻す。
出た目は「すごく悪いことをしている可愛い小学生女子のお尻を全力で叩いてこい」だった。
数日後、全力強面男逮捕としてTVや新聞を賑わせていた。
ふーん。良いコトしてんじゃんおっさんよぉ。
でもこの世の中じゃ駄目だな。
まったく。みんなこの世の中の人、全て糞過ぎる。
さぁて今日は誰が相手だ? 桃萌。
私達はいま正しいことをしているんだ。
学校の帰り道、テレビを桃萌と見た。
世界では、日本では、信じられない様な犯罪が毎日行われている。ニュースがそう報道している。
「ねー先輩。最近、ワタシぃ。レベルが上がってアップアップなんですよー」
「あ?」
「だからー。どんなのが先輩は好みですかー」
桃萌が私に変な質問をした。
好みって何だよ。
1 ルーレットのバージョンアップ
2 道端で出会った任意の人のステータスを知る事が出来る。
3 喧嘩を仕掛けた相手に対し先制すれば絶対に負けなくなる。
4 異世界へテレポーテーション出来る。
5 後輩の桃萌と先輩の晶が可愛くなって事件に巻き込まれ分からせられる。
6 金運が上がる。濡れ手で泡。
今回は節目みたいでぇ。
何か選べるらしいんすよー。
先輩は何が好みですかぁー、あはははっ。
と隣の可愛い後輩が笑っている。
「どれでも良いよ、お前が選びなよ桃萌」
「そうですかー。…………デモこれ、ワタシが選べないらしいんすよー」
「じゃあサイコロでも振るか。高い所から」
「あはは、良いですねーソレ。じゃあ明日ワタシ家から持ってきますねーサイコロ」
そして次の日。私は桃萌と屋上にいた。
時間も時間だったので校内には殆ど人は残っていなかった。
今日は部活動も殆どがやっていないみたいだ。
屋上へ向かう途中で気弱そうなクラスの男子にぶつかりそうになった。
おいおい。危ねえなぁ。
そのクラスの男子は私にペコペコとお辞儀しながら進んでいる。
確か名前は……山田だっけ?
まぁ良い忘れた。
ちぇっ。鍵は閉まっていたので職員室へ向かい部活動の顧問に頼んだら貸してくれた。
しかし最近は部活動に行ってないが顧問は快く貸し出しをしてくれた。この先生は優しいよな。ホントに。
私は桃萌から放られたサイコロを受け取りそのまま屋上からトスやアタックの様に校庭へと投げた。
校庭に空から、いや、屋上から放たれたサイコロは勢いを付けてピューンって風に地面へと進む。
そこに誰か…………先程の男子。誰だっけああ田中で良いか。いや山田だっけ?
がサイコロを目掛けて走っている。
別にそういう訳では無いだろうけど屋上から見るとそう見えるんだ。
そして衝突。
「あはははっビンゴぉー」
桃萌は楽しそうだ。
行くよ桃萌と声を掛けて校庭へと私たちは急いだ。
結構走って急いで来たんだけど田中だか山田はいなかった。
そんなに機敏そうには見えなかったけど走っていたしなぁ。まぁ良いか。
「えーと、サイコロサイコロ…………おい桃萌そっちはどうだ?」
「うーん。この辺だったと思うんですけどねー中々…………あ」
先輩ありましたよサイコロサイコロと桃萌が私を呼ぶ。
「おお、あったか。数字は幾つだ? 桃萌」
「…………うーん。コレは幾つでしょうね?」
私も桃萌が見つけた所へ行き地面を、サイコロを見てみるとサイコロは割れていた。
「……………………凄いな」
「ああ確かに。普通はこんな風に壊れないですよねー」
サイコロは6面体分。
全ての面が見える様に割れていた。
何がどうしたらこんな綺麗に壊れるんだ? サイコロって。
「………………コレは全部だよな? 桃萌」
「わお、流石せんぱいあったまいー。そうですねー全部のせですコレ」
桃萌がそう話した瞬間に周囲がぱぁああああっと輝いた。
「うわっ、何か……眩しっ」
何処からか『賽は投げられた』という言葉が聞こえた気がする。




