124話
高校に入学し、順風満帆とまではいかないけれど、それなりの生活。
そして自分の居場所って奴を維持していたんだ……あの日までは。
それは私が二年生になって、後輩の一年生が出来たとか、その辺あたりから私の高校生活は破綻していったんだ。多分…………。
私の名前は遠江晶。
私には学校で尊敬出来る先生が一人だけいた。
その先生が私に言ったんだ。顧問になるから部活動始めてみない? って。
とても悩んだ。
そんな部活動、私が出来るのかな? 結構難しい題目だとも思った。
部活動の名前は【人名探索部】
簡単に言うと、その名字の人はどういう経緯でその名字になりそれが受け継がれていったのか。
とかソレを一緒に探して見ないかという結構途方も無い無いようだった。いや内容。
初めてのお題は『あ』
五十音の始めの文字。最初は『あ』から行こうかと先生が話しこの言葉に決まった。
そんな始まりだった。
そしてその題目から、という訳でも無いだろうけど私は後輩の有栖に出会ったんだ。
学校が終わり、クラスメートに晶も今日はカラオケ行こうよって久々に誘われたのを勉強があるからと何時ものように断っての学校からの帰り道。
その子は道端で男の子に虐められていた。
私から見るにしゃがんで何かを…………かばっている?
お腹に抱え込んで男の子の暴力に対し身体を張って――――――――守っていたんだ。
ソレを見た私は察して女の子と男の子の間に飛び込むように割って入った。
ズサササッザっとばかりに。
そんなキャラでも無かったけど、うーん。勢いで。
「……イジメは格好悪いよ? 男子」
「あぁ? 入って来んな。馬鹿女、お前には関係ないだろう? ソイツは危険なんだ!」
男の子の顔を見ると真剣そうだった。
でも私から見ればこの状況。どー考えても男の子が悪い。
「女の子を虐めるなんて、最低ね! あなた」
「いやだからな。ソイツがかばっている奴が危険なんだって。あーもう面倒くさい女だな!」
男の子が一歩前へ出て来て私の腕を取った。
この人。怖い。
「誰かー。此処に痴漢がいますー!!!! お 巡 り さ ん 呼んでくださいー!!!!!!!!」
そう叫んでいた。ここ数年出したことも無い程の大きな声で。
「なっ! お、お前、五月蠅っ、クソッ。巫山戯んな」
男の子は私の手を更に掴み上げている。凄い力だ。
その痛みに耐えていると周囲の家々から人が出て来てザワザワとしだした。
「何だ何だ? もめ事か?」
「……あの男、女の子を虐めているゾ」
「痴漢とか聞こえたよね」
「お巡りさん、警察に電話電話ァー早くっ」
瞬時にしてのそんな光景に狼狽える痴漢男子。
私は形勢が逆転したとばかりに腕を引っ張りその掴まれていた手首を、男の子の手から外した。
更にヒートアップする外野の野次。
男の子は一歩、また一歩と下がる。
「もう警察に連絡したからな」
「逃げるなよ男の恥め」
「お前見たいのがいるから男の肩身が狭くなるんだよ!」
中年男性の野次は大きい声でその男子を攻撃する。
そしてついに逃げた。
「ま、待てー」
「逃げるなよ!」
「おい誰か、ソイツ捕まえて!」
「顔、写真撮ったぞ!」
男の子が立ち去りワァっとなり、周りの人が「危なかったねー」「大丈夫だった?」等の声を掛けてくれた。
結構な騒ぎになったけどこれ以上はと思い私はしゃがんでいる女の子の腕を取り走った。
「皆さん、ホントにありがとうございます。助かりましたー」
と投げ台詞と共に立ち去った。これ以上の面倒も困る。
その場所からだいぶ走って来た。
お互い息が少し荒くなりそうな感じ。
もう大丈夫だろうと思い私は女の子を見ると少し大人しそうな外見をして、腕に何かを抱えている。
「あっ、ご、ゴメンね」
「……………………あ、はい」
「つい間に入っちゃったケド、大丈夫だった?」
「…………はい。ありがとう御座います。とても助かりました――――」
「――――私の名前は有栖、ありすももえと言います、ホントに助かりましたお姉さん」
その子の名前は有栖桃萌。
ありすももえ。学校は私と同じで後輩の一年生。
今は7月。入学して3ヶ月が経過していた。
見るからに結構大人しそうな子だった。
私は一体何があって、そうなっていたのかを有栖さんに聞いてみたんだ。
――――――――その生き物は異様だった。
犬かな…………いや、違うよね。
見た目、グロテスクという言葉が似合いそうな生き物。
いや、生き物と言ってはイケナイのかも知れない。
それ位に、異形の何かだった。
その形したソレは鳴く。聞いたことも無い声で。
一体、何の生物だろう。
「この子、捨てられていたんです。ダンボールに入ってて」
そう彼女、有栖さんは言った。
その異形を愛でながら。
「可愛そうなので、どうにかしようと思いこの子を抱きしめたんです。その時にあの男が来て……」
「彼は…………何て言ったの?」
「ソイツは悪魔だ……………………と」
私はその瞬間ストンと言葉が落ちた。
ああ、これが悪魔なら納得出来る、そう思ったんだ。




