119話
さてと、今日もここまでは上手く行った。
もう毎日の日課。
マッドドラゴンの尻の鱗にラージドラゴンの爪とスフィンクスの髭。
そしてヘルジャイアントの産毛。此処までは良いのだ。
結構慣れてしまった。何ならタイムアタック的な感じで楽しんでいる。
黒死鳥…………うーん。
一番の問題は最大数、全てを一度に殲滅させないとクリアーにならないこと。
つまり、死んだら始めからやり直し。
そこは仕方が無いよね。
死んだら負けだし騙された方が悪いしつまり勝たないと……そう、勝利あるのみ。
うん。ある意味では解りやすい。
しかも此処をクリアー出来る様になるという事は強くなっているという事。
しかし、1回死ぬということはお供え物が食べられていくという話なんだ。
リスクを負いながらだけど進める道があるだけ大分マシな気はするけど。
昨日聞いたイトウさんの黒死鳥退治の話し。
モタモタしすぎ……。
近接が良いと言うことかしら。
ハイドで近づいて倒す。まぁ1体ならそれでも良いんだけど次もあるからなぁ。
あ、でも確かに敵の個体が気がつかない内に倒していけばということで……。
多分だけど、仲間の黒死鳥が死んでいたら「みんなー。此処に死体があるよー。誰かきてー」とかくせ者じゃーとかそんな感じなのかしら。
つまり見つかる前に見つけそうな個体をも倒してしまえば良いのか。
例えば、黒死鳥Aを倒す前に、次倒すBを見つけてどういうルートでどんな感じでとかをイメージしながらAを倒せば良いのかな。
理想はその先。
黒死鳥Cまでその倒すイメージが見えていれば良いのか。
そしてAを倒したらDを探してという流れかな。
一息ついてから意識を集中。よおっし、行こう!
敵を倒す為に効率的に動く。
それをイメージしながら考えて行動した。
黒死鳥AからCのルートまでイメージしてどう倒すかも同時に考える。
木をジャンプしながら器用に登り背後に回った瞬間に頑丈な銅の剣を抜き首筋を斬る。
血がしぱぱぱと飛び出るのを躱し、次の個体へ向かう。黒死鳥Aを上手く倒せたのかの確認も無しで次。
意識は次の個体、そして黒死鳥Dを探す。
基本、大体の個体が木々に止まっているため、黒死鳥Aを倒した感じの動きをベースに次々と倒していく。
問題は空に飛んでいる個体。
流れの中で倒せそうだったら、木々をジャンプして剣を届かせるか、魔法を詠唱しつつ動いてタイミングを見計らって放つ。
頭で何となくでもイメージしておけばソレに近い動きが出来た。
黒死鳥と黒死鳥の距離感が微妙な所だけは注意して倒した。
次はどうやって倒そうとかのイメトレに近い感覚を養うには実戦というモノは最適だった。
良い感じで動けている時が数秒あって、私はその世界に入り込むと音が消え景色が白く見え敵、黒死鳥と私しか見えない世界の中。
効率的に動く私の身体。寿司職人が寿司を握るぐらいの自然な動きで手数を減らして何かを追求していく。
そんな感覚で黒死鳥を倒していった。
私はもう黒死鳥職人だった。
それでも後、数体の所で瞬間迷い今回も失敗した。
どちらをCにしてDにするかで迷って動きが鈍った。
気が付いたらBからHぐらいの数体、ええと7体の敵に攻撃を受けていた。
残念だ。無理と判断し死ぬ気で逃げて、逃げて逃げて始めて逃げ切った。
私の生命と心は守られた。
また明日にしよう。
今日はもう疲れたよう。
後残り10体もいないぐらいだった。
うんうん。もう少しだ。明日だね。必ずクリアーするよ。
そして次の日。
奇しくも昨日と同じ状態の場面。私は迷わない。
結局3体BCDと倒した所で囲まれた。しかし4体。HPが削られる中、飛んでいる黒死鳥に対しファイアの魔法で反撃した。
体力ギリギリ。1コマ残りで黒死鳥を全滅させて私はやりきったとホッとした所で奴は現れた。
全滅させて静寂を壊す大音量「ギャアーーーーーーーーーーーーーーーーー」
という耳をつく五月蠅い所では無い悲鳴。
音というか声がする方向を見るとそこには何もいない。
そんなはずはと試しに魔法を放ってみると更に大きな声で「ギャアー食べられる殺される犯されるぶった切って燃やされるひき殺される糧にされる経験値取られる酷い酷い泣いちゃう鳴いちゃう」
と女性に見えるシルエット。
何かに隠れているのかハイドみたいな効果なのか薄ら見える何者かがいた。
私も体力がもう保たないと判断し、一旦帰った。
イトウさんにソレの正体を聞いてみると「泣女、通称バンジーというモンスターじゃよ」と教えてくれた。
「…………あれも敵ですか?」
「そうじゃ、あれが黒死鳥のボスじゃのう」
「……………………えー。アレ倒さないと駄目ですか?」
「駄目じゃのお。まぁ何だ、お主も戦いを生業としているなら覚悟して倒しなされ……姿形、言葉も含めそれでも敵なのじゃよ」
「…………後味が悪くなるんですケド……」
「そういう感情も必要じゃの、美味しいモノを作って待っているから倒してこい、その舌。上塗りしてやるから」
「…………………………………………解りました」
私は大声で泣きわめくバンジーを倒した。
彼女は音と暴言以外、攻撃はしてこなかった。
私は一方的に倒した。泣きわめくバンジーを。
斬って燃やした。
とても嫌な……気分だったけれどその後のイトウさんの料理は絶品だった。
生きる事、死ぬこと、食べること、誰もがソレを日常的に行っている。
食物連鎖に対して悪いとかの感情は余りない。
そういう事の延長線上にも当て嵌まるんだ、アレは。
何かにこじつけてはトラウマを思い出しへこむ私だった。
それでもこのミッションは終了させたんだと自分を慰めた。




