111話
「此処はカプルスという場所じゃ。通常が異常なんじゃが、通常は此処に来るには何回か死なないと来られないぐらいの所じゃよ」
「そ、そうなんですか。私はパーティの人に騙されてカプリスダンジョンからマグマに落ちて此処へ来ました」
「そ、そりゃー大したもんじゃな! そんな純正ルートから真面目にここへ来るとはイカレてるぞ」
「私はこんな所に来る予定は無かったのです。単に騙されただけで…………」
「そうか騙されたとな。……ワシの名はイトウというての、普通では手に入らない代物を1年掛けて手に入れている最中じゃよ」
「私はさらっちと言います。帰り方を知っていたら教えて欲しいのですが……」
「帰り方は…………ちと難しいかの。有るにはあるが……」
「ど、どうすれば帰れますか? 教えてください」
「ふむ…………解った。お前ワシの弟子になれ。ワシの仕事を手伝って終わったらお前も一緒に連れて帰ってやる」
「わっ、解りました! あ、でも私に出来ることですか?」
「うむー。そうじゃの……。ちょっと待っておれ」
目の前のイトウさんは手のひらを丸めて遠くを見るかの様にして私を見ている。
「…………おほほほほおー。お主、変わりモノじゃのぅ。弱いが…………」
「え…………ま、まさか……何か見てます?」
「……ああ。まぁお前の強さを見せて貰っていた、ヘンテコなスキルを一杯持っておるのう」
「…………イトウさん。それは秘密ですよ? 誰にも言わないでくださいね」
「フン……嫌なら隠せば良かろう。お主も隠せるスキルを持っておるよ、使えば良かろうに……」
「あ…………そうなんだ。隠蔽編集で隠せるのか、そんな応用も出来るなんて!」
「とりあえずお主、お前は弱い。此処でワシの仕事を手伝ってついでに強くなれ。そうすれば選択肢も増えるぞ」
「は、はいお手柔らかにお願いします」
「いやいや、こんな所で鍛えるのにお手柔らかも何も無いぞ! 毎日生きるか死ぬかとか、半身は持って行かれるとかの生存戦略じゃな」
「…………マジですか?」
「そんな嘘なんて言わないし、此処を何処だと思っておるんじゃ」
「あぁ、此処は何処なんですか?」
「此処はのう。始まりのダンジョンでカプルス。又の名をジェネシスダンジョンの最深部地下200階。つまり全てのダンジョンは此処から生まれたんじゃよ」
始まりのダンジョン。
…………気が付いたらそんな所にまで落ちていた私。
もう生きているのが不思議なぐらいの状況だった。
◇◇◇◇
早速じゃが明日からワシの代わりに動いて貰うぞ。
今日はお前さんの話を聞こうかの。
終わったら此処の生活、寝床と食事を教えてやる。
イトウさんはそう話したので私は自分の今を話す事にした。
「……………………なるほどのう、お主は異世界人じゃったか。まぁ、そんなヘンテコなスキルを幾つか持っているから大凡の当たりは付けられたがのう」
「今までも何人かの異世界人と出会ったことがあるがお主も中々な運命に翻弄されているようじゃ。お主が知りたがっている事の一つで、カプリスダンジョンの7階層の事を教えようかの」
「お願いします」
「あの階層で祈りを捧げると裏のボスまでのルートが開くのは事実じゃ。だが、あそこのボスはそう簡単に倒せない。まぁ、強いからのう。だが、お主から奪った『白龍王の胆石』ふむ。信じられんが、それが本物なら昔話にこういう話がある――――」
イトウさんはこう私に話してくれた。
…………今から何年前の話しかは忘れたが、とあるパーティがカプリスダンジョンの6階層のボス、カローンを倒した。
しかし、そのパーティのリーダー格の剣士と相打ち。現在もボスと共に水の中で囚われているらしい。
その有名な剣士が持っていたのが『白龍王の胆石』というアイテムで。
それを持つ者は幾つかの攻撃や魔法に関して数十倍に増幅出来ると言われているらしいと。
「…………なぜ、私がその『白龍王の胆石』を持っていると解ったのでしょうか?」
「ん、ああ……それはの、この世の中にはまじないで物を探す事が出来る人がおるんじゃよ」
「…………なるほど」
そういえばレイさんが占い師みたいな感じだったかしら。
……そうか、そんな事も出来るんだ。
「――――あと、こんな手の込んだ方法を取ったのはどうしてでしょうか?」
「実際の所は解らんが『白龍王の胆石』など、身につけるアイテムは本人の意思が無いと外せない事が多いのでな。無理矢理奪うと壊れるしな。それと地下7階の祈り。両方共必要だったからとかじゃ無いかの」
「そうですか…………」
「後はお主が思っている以上に『白龍王の胆石』はこの世界ではレアなアイテムじゃぞ」
「……………………」
イトウさんに話のお礼を言って此処での生活の仕方を学んだ。
ここはカプルス。
地下200階の壁の中でイトウさんの仮の住処らしい。
ちなみにカプリスもカプルスも意味は同じ。方言とか訛って何時の日かそうなったと教えてくれた。
どちらも同じ意味じゃよ。その時の気分で使うが良いとかなんとか。ふーむ、なるほど。
おトイレに部屋、ベッド、キッチン。
簡易的なお風呂と一通り生活に必要な物は揃っているみたい。
唯、物によっては何も見えないんだ。
透明では無いんだけど、見えない。
擬態でベッドになっていて、此処にあるとか微妙に良く解らない事を教えて貰った。
試しに此処じゃという場所に座ってみるとふかふかしていた。
掛け布団は無いみたいなので、自前の大っきめの布を使うことにした。
枕も無いから洋服を丸めた。
明日から、イトウさんの仕事を手伝うらしい。
初日だけやり方を教えてくれると。
私に何か出来るかしら。こんなとんでもない所で。




