火葬待ち。
ー私は今日、火葬されるのを、ただ床で待っていた花の遺体を回収していた。
花を集めるために使ってたホウキは売られていた頃から一人一人あらゆる方向に曲がってしまっていて、まとまりがない。正直使いにくい。
その上、どうやら身体が硬いようだ。軽い力では曲がらない。
どうやらこのホウキ、力はあるようだ。
そのホウキを使うと集めようとした遺体達が横に散らばってしまったり、遠くに行き過ぎてしまう。
まるでホウキが、回収されるのを待っている者を逃がしている様である。
片付けるには丁度良い、そう思える日のことである。
陽の光はまるで私という標的を狙っているかのように段々焦点を合わせ、突き刺す。
室温と気温が混じり、暑いとも寒いとも言い難い微妙な温度で私を生きていないような気にさせる。
死んでしまった花からは幸せな時間を思い返させる悲しげな匂いがしている。
私はつい、考えてしまう。死んでしまったのだろうか。私は今、生きている?活きている??
…どうだろう。空気は身体の中に取り込まれて流れている。血は流れている。思考は止まることを知らず常に勢いよく流れている。匂いが流れてくる。景色も流れてくる。音も流れてくる。頭に取り込むことが出来れば流れるように動くこともできる。
しかし、幼い頃のようにこころが常に踊ったり、跳ねたりすることはなくなった。自分から何かを求めて行動することがなくなっている。
まあ、こう考えると私の身体は生きているが、こころは死んでしまったのだろう。まだは回収されていないが、火葬されるのをただ待っているのと同じだ。
そんなことをホウキを見つめて考えていた。
…赤シダは生きている途中、認められ、ホウキと名前を変え、私のところで形を変え、働いている。
私は?私にはできるだろうか?
ホウキのように認められ、誰かの役に立つことはできるのだろうか??
…あ。思い出してしまった。
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私もそうなりたい、なれるかな!頑張ろう!
そんな事を考えて今まで生きてきたから直ぐに結論がでる。
…結論は「無理…かもしれない」。
なぜなら、そうなろうとするほど、こころも身体も傷んでいく。
「オトナ」を理解し、近づくほど、火葬はどんどん近づくのだ。
だから、だから諦める。
…いや、諦め"たい"。
私は何故かいつも諦めが悪いのだ。
大人は陽の光のように暖かい!
そう、思っていたのだ。
私の育たなかった幼稚な心が間違っていたのだ。
居たい < 痛い
楽しい < 疲れた
…ついに前向きに陽の当たる暖かいところで生きていたが、陽の光が私を突き刺し、いつの間にか死んでいた心は、陰に住み始め、私のこころは本当の意味で火葬され、燃え尽き、死んでしまった。
そして私は床で待っていた。
…私からもあのとき感じた、花のような…そんな匂いがでているのだろうか。
きっと…いや、そうだといいなあ。
きっと身体が燃え尽きても、もう遺体を拾ってくれる人はいないんだと思えるほど、
こころも、希望も、関係も、何も、本当に何もなくなってしまった。全て火葬され、燃え尽きてしまったのだ。
長い時間をかけて。
そして私は火葬されてしまった心で考えるのだ。
「誰か見つけてくれるかな」
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…こうなってしまったから。こうなってしまったから。
私は今日も死んだ心で生きている物を育て、死んだ物を回収する。
死んでしまった、火葬されたものは戻らないが、こうすることで戻ると信じて。
ー火葬待ちー