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Rees beruto 第2章  作者: 天秤屋
2/12

クラヴィエの白き翼

 翌朝、戻ってきたイーザとともに、アリアテたちは荷馬車に乗りこんだ。

「ちょっと待ってくれ」

 アリアテは人波のなかにカオルを見つけた。カギーニの行方はわからないらしく、ひとまず故郷のクラヴィエに引き返すという。

「それなら一緒に行こう。私たちもクラヴィエに向かうんだ」

 荷台は満席になったが、きゅうくつな思いをしたのはほんの小一時間だった。

 クラヴィエはごく平凡な農業の町で、町の外周にはぐるりと牧場の柵が巡っていた。門番の姿はなく、イーザは荷馬車ぎりぎりの幅と高さしかない門を器用にくぐって通りに入った。

 幌から顔をのぞかせたアリアテとシェラは、人っ子一人いない市場の景色を眺めた。思わず頭を出してあたりを見回していると、その上からロードも顔を出した。

「もうすぐ昼時だってのに、こんなに人がいねえもんか?」

 露店の軒先には商品が並べられているが、店番の姿すらない。異様な静けさに支配された通りを、荷馬車は砂埃を巻き上げて進んでいく。

 しばらく行くと、レフトバードの蹴爪の音が変わった。車輪がごとりと硬いものの上を転がる。再び幌の隙間から外を窺うと、美しいレンガ敷きの道の上だった。通りの左右には立派な構えの店や住宅が並ぶ。

 だが、やはり人の姿がない。

 カオルは荷馬車を停めてもらい、故郷のレンガに立った。

「おかしい。市場にも、町にも人がいないなんて」

 焦って駆け出した彼を、イーザはのんびりと荷馬車で追った。カオルは宿のひとつに飛びこんだ。イーザは少し行き過ぎて、厩に荷馬車を停めた。

「エルウィン、あんたのレフトバードを手入れしてやりたいんだが」

「ええ、手伝いマス。アリアテ、行ってきてくだサイ」

「わかった」

 ほかにメリウェザーとカレンはその場に残り、フェルゼンとともに食糧や装備品の整理をすることにした。

 アリアテはロードとシェラと連れだってカオルを追う。

「イヴ! イヴ、どこに」

 誰かを探す声がした。二階に上がると、開け放たれた部屋のなかで座り込んでいるカオルを見つけた。

「カオル、どうしたんだ?」

「イヴが……」

 カオルは大きな白い羽を抱きしめていた。よく見ると、部屋のあちこちに白い羽が散乱している。

「鳥……」

「にしては、大きな羽だね」

「あんたのツレ、翼徒か?」

 助け起こされたカオルは首を振った。

「ここは危険だ……もしかすると、セヴォーの二の舞に……逃げてください! 早く、ここを出なければ」

 慌てふためくカオルをなだめ、ロードは気の流れを整えてやった。

「落ちつけ。もし敵勢力が潜んでいれば、カレンが真っ先に気づく。今のところイーザたちや俺たちも妙な気配は感じていない……人の気配がどこからもしねえのは妙だけどな」

「……取り乱しました。すみません」

 カオルは乱れた襟元や眼鏡を正し、荷馬車に戻った。厩では、メリウェザーとイーザが話し込んでいた。

「でも困ったわ……人がいないんじゃ、お買い物もできないし、お金を稼ぐのも難しそうね」

「そーだな。次のゴドバルガまでは駆け通しでも三日以上はかかる。その間には集落のひとつもないから……」

 その会話に、おずおずとシェラが加わった。

「必要なものは片っ端から盗んで、盗品を次の町で売りさばく……のは、ダメだよねー」

 一瞬、その場に沈黙がおりた。否定する声がないことに慌てたシェラは、明るく笑い飛ばして手を振った。

「だめだめ! だめです! はい、次のアイディアいってみよう!」

 とりあえず、一行は集合場所を厩に定め、町の方々に散った。

 アリアテとシェラは市場に赴いた。

「この魚、まだ新しい。ここは港がない内地だから、ついさっき仕入れてきたレベルの鮮度だね」

「シェラ、こっちの果物も、枝からもいだばかりのにおいがする」

 店のなかに入りこんでも、誰一人として町の住民は見つけられない。二人は首を傾げた。

 ロードとカレンは外周の牧場を調べていた。柵は乳牛と肉牛、羊毛をとるためのアイベックスの三つに区切られており、中には何十頭もの家畜がいた。

「ロード」

 カレンの声に振り返ると、肉牛の飼料置き場から大蛇が滑りだしてきた。

「地打ち? サルベジアは珍しい魔物がいるんだな」

 かつて子ども向けの絵本で目にした魔物の実物に、ロードはちょっとした感動を覚えた。

 地打ちはその名の通り、尾で地面を打ち鳴らしてロードたちを威嚇する。

「たしか牛なんかの家畜を襲うんだよな。時には人も食うらしいが、さすがに町中の生き物を食い尽くしたわけじゃねえだろ」

 ロードが間合いに入ると、地打ちは全身の肋骨を開いて飛びかかった。他の蛇のように獲物に巻きつくのではなく、肋骨の開閉で獲物を捕え、頭に噛みついて窒息させるのが地打ちの狩りだ。

 薄く広がった地打ちの体を、ロードは真空刃で×字に切り裂いた。

「一匹だけか……犯人は別にいるな、こりゃ」

「だが、殺気は感じない。争った痕もない……大きな魔力は感じるが、それと人が消えたこととの繋がりは見えない」

「妙だよなあ」

 ロードは頭の後ろを掻いた。

 メリウェザーとエルウィンは、カオルとともに住宅地を調べていた。

「あら? このスープ」

 無作為に選んだ民家のなかで、メリウェザーが違和感に気づく。

「減ってないかしら?」

「減ってマス」

「……そうか」

 カオルには心当たりがあるらしい。

 方々に散った仲間を呼び集めるため、厩に戻って、エルウィンがレフトバードに合図した。

「ウォッケェー!!」

 一羽がけたたましい声で鳴くと、しばらくしてアリアテたちも戻ってきた。荷物番をしていたイーザたちも輪に加わって、カオルの話を聞いた。

「この町に何かがあったことは明白です。この状況は、町を守るために作り出されたもの……術者は、すでにこの地を離れているようですが」

 カオルはため息をついた。

「これはイヴという少女の能力です。町の外から来た者を、この町に流れる時間と少しずれた時空に誘い込んでいるのです。住民の姿がないように見えるのはそのためで、実際には、彼らは日常の暮らしを営んでいます」

「見ることはできず、気配も感じないけれど、薄い壁の向こう側に存在している……ということでしょうかネ」

 頷くカオルに、アリアテはつぶやく。

「でも、守るって何から……」

 平凡な農業の町に、これといって秘密があるようには見えない。強いて言えば、カオルが抱きしめている羽の持ち主……カオルは視線に気づき、白い羽を優しく撫でた。

「政府軍か、ガヴォ大臣直属の精鋭部隊の何者かが、イヴを狙ったのでしょう。迂闊でした。こんなにも早く居所が知れるとは思わず……ただ、イヴはそう簡単には捕まりません。あなた方は、早く次の目的地へ発ったほうが良い」

 そう言って、カオルは白い羽をシェラに差し出した。

「あなたは回復魔法が使えますね。この羽はお守りです。あなたの力を助けてくれますよ」

「あ、ありがと」

 シェラは不慣れな手つきで羽を受け取ると、大切に外套の内側にしまった。

「カオルはどうするんだ?」

「灯火の地に戻ります。カギーニさんのことも気にかかるので」

「そう……気をつけてね。カギーニさんやイヴさんに会えたら、よろしく」


 一行はすっきりしない面持ちでクラヴィエを出た。荷馬車に揺られながら、今後について話し合う。

「食糧はもつけど、野営のあいだ、魔物から身を守らなくちゃいけないわ。サルベジアってとにかく魔物が多いのよ」

 かつての徴兵の経験から、メリウェザーは重いため息をついた。御者をフェルゼンと交代したイーザも加わる。

「とりあえず火起こしは必須だ。武器はあるんだろうな?」

「漁り火の地で矢五十本、槍三本、投げ槍五本、剣二本は調達した。胸当てやらすね当てやらの防具も人数分は確保してある」

「あとは、エルやあたしの魔力をどのくらい温存できるか、だねえ」

「三日強のあいだ、どのくらいの頻度で襲われるかによりマスが」

 あれこれ話し合う輪の中に、カレンが一石を投じた。

「夜は私が見張りをしよう。一睡もできないのでは休まらないだろうから」

「ちょっと待って、カレンひとりで?」

 アリアテの問いに、カレンは事も無げに頷く。

「武器はある。いざとなったら全員起こして逃げる。これでいいだろう? その代わり、昼間は眠らせてもらう」

 不意に見せる微笑みには、所以のわからない説得力があった。反論する者はいなかったが、自分も一緒に起きていようという申し出も、カレンはすべて断った。


 荷馬車は順調に進み、小高い丘の中腹で停まった。

「今夜はこの辺りでラージを張ろう」

 イーザはロードとともに手早くラージを組み上げた。

「この辺りはアードリヨンの巣がある。図体のでかい魔獣だが、オツムの方は豆粒並みでなー……平地専門だから、やつらの巣穴より高い場所に居りゃ、まず襲われることはねえ。弱い魔物なら勝手に奴らが狩ってくれるし、自分より強い魔物が現れれば警戒して吠える」

 ためしに、と言って、イーザがレフトバードの一羽に乗り、平地まで降りた。丘を登るときにちらっと見えた洞窟から、巨大な獅子がのそりと這い出る。数頭の獅子が顔を出したが、それ以上は近寄ろうとせず、イーザに向かって吠えた。

「おうおう!」

「おうおうおう!」

 必死に吠えるアードリヨンを置き去りに、イーザはさっそうと戻ってきた。

「な、俺たちの力量ならまず襲ってくることはねえよ」

「思ってたのと違う……なんかチンピラみたいな声してる……」

 シェラはものすごく嫌そうな顔でアードリヨンを見下ろしていた。


 その夜は静かだった。

 アリアテたちはぐっすりと眠り、日の光で目を覚ました。

「んー、おはよう……カレン、おつかれ」

「では、私は少し眠る」

 カレンは荷台で横になった。一行はカレンを邪魔しないように乗りこみ、丘を越えてゴドバルガという町を目指す。

 枯れ木の森に入ったところでヒミズの群に行き当たり、地中から急襲された。噛まれて痺れたアリアテと、ロードが荷台に転がる。

 シェラの煎じたサクラ津弖の粉はとても苦く、飲み下すのはどんな修行よりもつらかった。

「はあ……あんなにのびる魔物初めて見た」

「油断大敵だな……食糧は無事か?」

 言っている側から、角の生えたネズミが荷台に押し寄せた。

「イーザ、今度は何だってんだ!?」

「アグーチだ。森がこの有様なんで食糧難なんだろ。でかくて角が生えてる以外は普通のネズミと同じだ。さっさと追い出しちまえ」

「キーッ!」

「キャー!」

 悲鳴をあげるシェラをかばって、メリウェザーは一匹を蹴り落とした。

「キリがない!」

「外に出た分は任せてくだサイ」

 エルウィンは荷台から落ちたアグーチを水で押し流した。キシキシと軋むような鳴き声をあげて、ネズミの群れは見えなくなる。

「アリアテ、そこにもまだいるっ カレンがかじられるっ」

「しっしっ」

 アリアテは槍の柄をもってアグーチを追い払う。ようやく静かになった頃、ロードがうなった。

「あー、やられた。お構いなしだぜ、あいつら」

 槍二本と、投げ槍三本がかじられて、無残な姿になっていた。

「穂が残ってるから、これは何かに使えるかもしれないわね」

 メリウェザーがなけなしのフォローをいれる。

 残念なことに、この物騒な枯れ木の森を抜ける前で日が暮れてしまった。夜行性の魔物は凶暴であることが多く、夜間に移動することは避けたいと、イーザは野営地を探した。

 川縁の、かろうじて植え込みが茂っている場所にラージを張り、一行は落ちついた。

「今夜もひとりで大丈夫なの?」

 心配するシェラに頷き、カレンはよく眠っておくように言った。

「クラヴィエという町でも不測の事態が起こった。この先、力は温存しておいたほうがいい」


 夜半、カレンは気配を感じて居住まいを正した。茂みの向こうに、巨岩のような魔物が潜んでいる。落ちくぼんだ目でじっと荷馬車やラージの方を見つめていたが、カレンに気づくと仔犬のように逃げ去った。

「……こうしているだけでお前たちの役に立てるのだから、易いものだ」

 カレンはひとりごち、仲間たちの寝姿を振り返って微笑んだ。



………………………………………………………………。

 サルベジア大陸最北の港、セスナ。霧深い港街を、一騎の騎士が駆け抜ける。


 数分後、精兵連のローブをまとい、フードを被ったメヴィーが港に現れた。メヴィーは小高い丘陵の上にそびえる屋敷へ出向く。

 うら寂しい屋敷の門から向こうは結界が張られ、庭の草花はもちろん、すり抜けた鳥たちですら、灰一色に色が抜けている。メヴィーはためらいなく灰色の世界に踏み込み、蔦の絡む扉をたたいた。

「お入り」

 静かな声に従って扉を開くと、屋敷の主は分厚い本から顔を上げた。

「なるほど。死の賢者には死者を差し向けるか」

「セスナの賢者、エルミナ・トゥ・ムリエリブス・エ・オラフルクトゥ。白き司へお招きいたします。同行をお願いいたします」

 エルミナは嘴を開き、目を細めた。

「それ以外の選択肢が無いのであれば、畏まる必要はない。ただ命じれば良いじゃないか……翼無き翼徒は、どこにも逃げられはしないのだから」



 セスナの造船所で造られる船は、外海を行くものではない。唯一無二の技術を以て、空を行く飛行艇だ。木を切り出し、鉄を鍛え、竜骨を据え、帆の代わりに巨大な呪符を張る。セスナは空輸によってセピヴィア大陸の宝石類を持ち帰る、貴重な貿易港である。

 同時に、この地の賢者の務めとして、ひろく無縁仏を引き受け供養する地でもある。常に霧に包まれるセスナ周辺には、広大な墓地がおかれ、名前のない墓碑が整然と並んでいた。

 行商人はともかくとして、旅人はこの地を好きこのんで訪れようとしない。

「絶好の隠れ家、というわけか」

 アイーシャは息を切らし、ドーイを古い墓守小屋まで追い詰めた。この場に在ることすら忘れられたのであろう、レースのような蜘蛛の巣が張る板塀に背中を預け、ドーイは肩で息をしていた。

 その胸は深く切り裂かれ、官服の下から滔々と血が溢れる。

「済まなかった。すぐ、楽にしてやる」

 アイーシャは構えた槍を後ろに突きだし、柄で扉を閉めた。息も絶えだえのドーイの前に屈みこんで、傷口に呪符を貼り、そっと上から触れた。

「うう……」

 痛みにうめくドーイの口に手袋を噛ませ、時間をかけて傷口を塞いでいく。

「一角獣と接触した。この呪符は万が一の時のため、クワトロ様がくださったものだ。応急処置程度の術しか使えない私でも、お前を殺さないようにと」

 段々とドーイの呼吸が落ちついていく。自分で口の手袋を外し、ドーイはぐったりとアイーシャを見つめた。

「やり、すぎだ……本当に死ぬかと」

「メヴィーの前だ。甘い踏み込みでは勘づかれる……よくこんな場所を見つけたな。ここなら邪魔は入らないだろう」

「命が、かかってる、からな……」

 そうか、と言って回復魔法に集中するアイーシャを、ドーイは複雑な心境で眺めた。

 港で相対し、それをメヴィーに目撃させる筋書きだった。メヴィーはどちらかと言えばアイーシャたちと同じ立場だが、敵を欺くには味方の目から。アイーシャは見事に間合いを詰め、完璧な刺突から、予定どおりの位置へ身をかわしたドーイを袈裟切りにした。

(完全に死んだと思った。ちょっと清々した顔してたしな、この女)

 胸の傷口から広がっていく心地よさに身をゆだねながら、ドーイはため息をつく。

「体を張るのは、得意分野じゃないんだがなあ……」

「私がお前と敵対したこと、お前が深手を負ったこと。この既成事実に意味がある。耐えろ……【虚空の夕暮れ】まで」



………………………………………………………………。

 途中、野盗に襲われ、魔物に襲われ、アリアテたちがゴドバルガの街並みを目にしたのは五日後だった。

「不思議と夜だけは平和だったな……おかげで休息はとれたんだが、やっぱり物資は相当消費した」

 魔道や気功術など、特殊な力を温存する目的で買い込んだ武器は、ほとんど残っていない。

「いろいろ補給するとなると、いよいよお財布も心配になってくるわね」

「安心しな、この街でなら稼ぐ方法はいくらでもある」

 イーザは太鼓判をおして、なだらかな坂を駆け下りた。襲撃のあとが甚だしい荷馬車は、かえって番兵の信用をかい、あっさりとゴドバルガへの入港を許可された。

 アリアテは幌の外を興味深く見回した。

「ここは港街なんだ。だからさっきの番兵は『入港』と言ったのか」

 サンタナミルフ号ほどとはいかないが、大型の船舶も入港し、多くの荷馬車が行き交う。アマルドやラティオセルムの装束を着た者もいた。

 港の近くに宿をとり、その一室で、イーザが簡単な街の地図を書いた。

「中央街と、南東・南西・北東・北西にそれぞれ区画がある。俺たちが居るのはここ、南西の港だ」

 現在地から、物資を調達しながら中央街を通り、北東へ抜けるという。

「ゴドバルガは多国籍でな、独自の法を敷いている。街の兵士も政府の軍とはまったく別の組織だから、ハネがのばせると思うぜ」

「わー、やったー!」

 アリアテとシェラの二重奏を微笑ましく聞きながら、メリウェザーが尋ねた。

「それで、資金繰りの作戦はどうなのかしら?」

 一行は宿を出て、イーザの案内で港に出た。倉庫の並ぶ一角に、巨大な掲示板が立っている。潮風で依頼書が飛んでいかないよう、表面には特殊な魔法がかけられていた。

 依頼内容は人足に家事手伝い、狩猟、点検作業など多岐にわたる。

「資格とか要らないやつを選べよ。全部日雇いだが、ワリのいい仕事もたくさんあるから……」

 アドバイスするイーザが言葉を失う。アリアテとロードが指している掲示物は、依頼書のなかでも群を抜いた内容だった。

「ゆ、幽霊船~!?」

 シェラが叫ぶのも無理はない、とメリウェザーは頷く。

「ものすごく危なそうだわ」

「でも、調査してくるだけでいいし、すごい賞金が出る」

「調査だけ、で済むわけないでしょう。漁り火の地でもたしか、鉄くずを拾うだけっていう仕事で、けっきょく戦闘騒ぎになったって話してたわよね?」

 ロードとアリアテがしょぼくれている様を見て、エルウィンは「まあまあ」と言いながら依頼書を剥ぎ取った。

「舞台が湖上であれば、助力できるでしょうカラ」

「もう、甘やかして……」

 結果、アリアテとロード、エルウィンは幽霊船の調査に赴くことになった。

 メリウェザーは倉庫への荷物運び、シェラは薬草店のアルバイト、カレンは狩猟の依頼書をそれぞれ剥ぎ取る。イーザも何か依頼書をとって、それぞれが指定の場所へと散った。

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