第03話 フィリアの世界
「ここは……」
一面の草原。先ほどいた場所と似たような雰囲気がするが、こちらの方がより自然的だと感じた。
「ここはフィリア様が創られた世界です。一応人目に付かない場所を選ばさせてもらいました」
「なるほど、それでこんな場所だったのか」
「そういうことです。とりあえず、私と篠崎さんのステータスを確認してみましょう」
「ステータス?」
「はい。フィリア様の世界では努力したことはステータス値の上昇、スキルの獲得と言った形で反映されるようになっています」
「ゲームみたいな世界だな」
「その認識で合っています。そしてステータスは視覚化することが可能なので、自分が何が得意で何が不得意かを把握することができます」
「なるほどな。で、それはどうやって確認するんだ?」
「簡単ですよ。このカードに名前を書いてください」
ネメシスは一枚の名刺ほどの大きさの紙を手の平から出す。
「それは?」
「ステータスカードです。これに名前を書けば、その人のステータスが表示されます」
「なるほどな」
名刺に自分の名前を書く。すると、文字が浮かび上がる。
【名前】篠崎雄二 【レベル】19
【職業】学生
攻撃 27
防御 18
魔法 00
俊敏 25
器用 32
【スキル】無し
レベルの部分は年齢と同じだが、それ以外はよく分からない。
「これ、どうなんだ?」
「平々凡々です」
「だよなぁ」
まぁ別にチート的な何かを持っているわけでもないし、そんなもんだろう。
「ネメシスはどんな感じなんだ?」
「私ですか? 私は……」
【名前】ネメシス 【レベル】???
【職業】神見習い
攻撃 ???
防御 ???
魔法 ???
俊敏 ???
器用 ???
【スキル】 管理者権限
「ほとんど?で埋め尽くされてるんだな」
「人と神は同列に測る事はできませんから、このようになるのは予想できていました。ただこれでは、チート能力者の方々に簡単にバレてしまいかねませんね……。少し弄りますか」
ネメシスはそう言うと?の部分に適当に数字を打ち込む。俺よりも少し上程度の数字だ。
「そんな低く設定していいのか?」
「ええ。これはあくまで偽装した数字ですし、そもそも私には管理者権限がありますからステータスは飾りのようなものです」
「なるほど。で、どうやってチート能力者たちを探すんだ?」
「それなのですが……」
ネメシスは一度言葉を止めると、何もない空間から突然分厚い紙の束を取り出す。
「何だ、それは……」
「これはフィリア様がこの世界に送り出したチート能力者のデータになります。一枚につき一人と考えてもらって大丈夫です」
「全然大丈夫じゃねえよ。とんでもねえ数いるじゃねえか」
「フィリア様の優しさ故のものでしょうね」
「お前は少しフィリアに対して盲目すぎるぞ……。まぁデータがあるだけましか」
「ただ、この時のデータよりも遥かに強くなっていると思うので、あくまでこれは人数の把握くらいにしか役に立ちません」
「じゃあ何でそれを取り出したんだよ?」
「とりあえずこれくらいいますよ、というのを理解してもらうためです。基本的に探すのは私たちの足を動かす以外の方法はありません。彼らはフィリア様との繋がりを完全に断ち切っていますから」
「それは管理者権限でどうにかならないのか?」
「ある程度はそれで探せる可能性はありますが、彼らも隠蔽や偽装は施しているでしょうから、一筋縄ではいきません。逆に言えば隠蔽や偽装をしていなければ、ステータスさえ見てしまえば簡単に分かります」
「つまり、最初の方はステータスを管理者権限で見ながら探していくという感じか」
「そうですね。チート能力者のステータスの数値やスキルは見れば大体わかりますから」
「とりあえずその方向性で探していくか」
「はい。では、近くの町に行きましょう。私達にはこの世界に関する情報が少ないので、それを集めるところから始めたいと思います」
「了解した」