チート魔法その5 無敵状態ⅠⅠ
俺はステップを踏み、フェイントを入れながらケブラへの距離を詰めていく。
簡単に踏み込んでこないケブラ。
魔法は使わないみたいで良かった。
純粋な打撃勝負。
俺は再び距離を詰め、右アッパーからの左ストレート、更に右のハイキックをケブラに当てる。
「ぐっ!」
わずかにぐらつくケブラ。
……ちょっとずつ効いてきたみたいだ。
サナルともう1度戦う時にやろうと思ってた作戦がはまったみたいだ。
回復機能を麻痺させる。
魔法をそもそも使えないようにしようって作戦。
その要領で魔法である無敵状態を麻痺させて一時的に使えなくさせる。
それともう1つ。
はさみを持ったケブラの左腕を重点的に狙う。
こうして武器をそもそも使わせない状態に持って行く。
三日月を腹に埋め、距離を取る。
明らかにケブラの息が上がって来た。
「何をした……」
質問に答えるわけが無い。
今度は両手にサンダーを纏い、ラッシュ。
無敵の魔法を途切れさせ続ける事の方が優先度が高いって判断した。
ボディに左フック気味に入れ、右ストレート。
フェイントには反応してたけど、結局はくらう事を前提に動いてる分、近距離の打撃には弱い。
「おーっとフェルマー選手のラッーーーシュ! ケブラ選手がここまでダメージを受ける展開が今まであったでしょうか!」
「やりやがってるわねフェルマー(# ゜Д゜)」
「落ち着きなさいあなたは! 掴みかかろうとしないで下さい(;^ω^)」
「あの魔法さえも突破するなんて……」
「行けー! キングオブレーン!」
歓声があがってる。
だけど、ここで仕留めないと俺だって危ない。
左アッパーがもろに入り、膝をつくケブラ。
「カウーント! 1! 2!」
ケブラは立ち上がろうとして来る。
1つ懸念だったのはこの10カウント。
この間にもし魔法が使える状態になったとしたら?
「3! 4! 5!」
立ち上がって来るケブラに観客の声援が跳ね上がる。
「このままでは終わらない」
『アーーーーー!!!』と大声を上げるケブラ。
嫌な予感しかしない。
俺は距離を詰めず、構える。
詰められなかったって言う方が正しい。
得体の知れない状況になる前に仕留める勇気が無かった。
何を思ったのか、ケブラははさみを後方へ投げる。
……素手?
「あまり見せたくは無かったが。フェルマー。君を強敵と認めた証拠と思ってほしい」
伸びていく髪と前歯、そして爪。
でかくなる体。
……もしかして、あの絶叫が魔法詠唱だったのか?
まるで獣人のような見た目になったケブラが俺の方を見る。
……やばい。
「行かせて貰うぞ」
はっや……。
反射的に避けて正解だった。
爪で服が破れる。
上半身を脱ぎ、後方に投げ捨てる。
こんな隠し玉まで持ってるなんて……。
やばいなマジで。
回復をせずに取っとけば良かった。
でも速いなら。
俺は両手にファイアを、両足にサンダーをかけ直す。
スピードだけじゃなく、あの爪の攻撃は触れただけでやばい。
自分の手から直に伸びてる分、威力も上がってるだろうな。
でも、スピードが速ければ早い程。
ケブラが今度は右ストレートを放ってくる。
体を右にずらした左ストレートのカウンター。
交通事故のように相手へのダメージが強くなる。
ケブラがぐらついたところに右のハイキック。
後ろ向きに倒れるケブラ。
「ストーップ!」
審判がストップをかけたと同時に、俺はへたり込む。
無敵はやべーだろ……。
「審判がストップをかけたー! 決着! 速度の対決! 何度も化けて来る相手! それをものともせずに取り切った! 勝者キングオブレーン! ノーザン・フェルマー!」
座ったまま、俺は拳を上げて観客に応える。
ケブラは立ち上がってた。
大した怪我じゃないみたいだ。
「強いな。決闘、感謝する」
「い、いえ。こちらこそありがとうございました」
ケブラは俺を立ち上がらせ、俺の手をあげてくれる。
人間出来過ぎでしょ。
「こんな事までして貰ってすみません……ちょっと疲れてて……」
「全力で戦ってくれてありがとう。トーナメントで当たったらまたやろう」
「是非……お願いします」
俺は何故か泣いていた
本当の意味での薄氷の勝利。
こう言う決闘で勝てたのが嬉しい。
自分がやって来た事が無駄じゃなかったのもあるし、協力してくれた人に対して思う事が目茶目茶あった。
バンテージを見てまた泣けて来る。
孤児院の皆の話を聞いて、負けるわけにはいかなかった。
「なーんと言うフィナーレ! ケブラ選手がフェルマー選手を称える素晴らしい光景! だからデュエロス・パートルは面白い! ノーザン・フェルマー選手、予選通過決定だー!」




