傭兵ギルド長の本当の強さ(通常)ⅠⅠ
さっきとは桁違いのスピードで放つ右フック。
エイリスは何事も無いように距離で外し、俺の左肩に的確な突きを放つ。
スピードが変わってるにもかかわらず、何でも無い事のように攻撃をかわして来るエイリス。
肩への攻撃は避けきれず、掠ってしまう。
距離を取ろうとしたところを詰められ、斬撃のラッシュを仕掛けてくるエイリス。
これが……。
サナルとの模擬戦で見せてたラッシュ。
あのサナルが息を上げるほどのもの。
対策は考えてた。
斬撃のラッシュには法則性がある。
相手の攻撃をかわすために、距離を取りながら舞うように回る瞬間がある。
回った後の攻撃が横の切り払いに見せかけた縦方向の斬撃なのだ。
だから縦振りの攻撃を取り、そこからボディに蹴りを放ち、武器を取ってしまう。
そう思ってた俺が甘過ぎた。
緩急……えぐっ!
距離を取っても正確に追撃をしてくる。
何発も貰い、息が自然に上がって来る。
ヤバ過ぎでしょこれ……。
スピードには自信があった。
あった筈の自分の心がへし折られる。
いや、それさえも全てなぎ倒していく強さ。
これが……。
「これが、私達ラズリの傭兵ギルドの長、エイリス・ヴァシュトール」
アユムの言葉の重さが直に伝わる。
エイリスはサンダー・アイス・ファイア・アクアを同時に出現させる。
マイルが見せた、アルテマだと思った奇麗な合成魔法。
エイリスは剣に纏う。
「ここまでラッシュを避けやがったのは褒めてやるわ」
魔法剣……。
加えてあの速さ、パワー。
通常状態にこの魔法が乗る。
……無理だ。
俺は降参する。
エイリスは魔法剣を収め、俺の元に来る。
はは……。
「君のメンタルは大丈夫でやがる?」
俺が持ってた自信。
優勝候補を倒したとか。
そんなのが全て大した事じゃない。
暗にそう言われてるみたいだった。
……でも。
顔がにやける。
楽しい。
こんな強い人に自分を見初められた事。
「頭がおかしくなりやがってるの?」
「あんたらに言われたくないわ(# ゜Д゜)」
「おい『ら』って何だ『ら』って(# ゜Д゜)」
「顔が笑ってやがるわ」
「ああすみません。自分が未熟で、是非ともいつか倒したいって思うと」
「へぇ」
エイリスは楽しそうだ。
「自分が未熟なのが良く分かりました」
「君はまだ未成年でやがるわ。将来が楽しみでやがる。強くなるための精神も持ち合わせやがってる」
べた褒めだけど、完敗した。
「7割まで出させやがったのは評価してあげる」
あれで7割……。
「因みに、サナルと模擬戦をやった時はどれくらいで?」
「5割行くか行かないくらいでやがるわね。あくまで模擬戦の目的は自身の向上でやがるわ。それくらいは覚えておきやがりなさい」
何も言い返せない……。
エイリスは俺の手を掴んで起き上がらせ、剣を投げた鞘に納める。
「回復は頼みやがるわアユム。無限回復のサナルを倒した実力、楽しみにしててあげるわ。フェルマー」
俺が所属する傭兵ギルドの長は。
言葉遣いがとんでもないけど。
強さもとんでもなかったのをしれた。




