勝つ覚悟
ウキウキしながら食事を終え、部屋に戻る。
分析が出来るようになったのは本当にでかい。
敵を知り己を知れば百戦殆からずじゃないけど。
戦う相手のレベルが高くなればなるほど、持ってる技術だけで勝つ事が難しくなって来る。
故の分析。
まず気付いたのがサナルの構え方。
薙刀って長い武器を持って戦う時に構えをスイッチする事はデメリットにしかならない。
だから足の構え方が一定だって事に気付く。
それに加えて、サナルは俺と戦ってる時は薙刀を短めに持ってた。
懐に入り込みさえすれば、連続攻撃でガードの隙を与えないように戦う。
残る問題はあの無限回復。
エイリスは休まる事の無い連続攻撃で遠慮なく削って行ってたけど、多分あれは厳しい。
記憶を辿って分かったのはサナルの強さだけじゃない。
エイリスの強さもこの目で見た。
想像が現実になった感じだ。
連続攻撃以外に何か勝つ手段は無いか。
って言ってもなぁ……。
ヒントがあるとすれば、回復しながらも記憶のサナルは苦しそうな表情をしてた事。
だから無限回復って言っても万能じゃない……は違うな。
うーん……。
思いつかねー……。
バスっとベッドに横になる。
寝技に持ってこうにもあの長い薙刀相手にこかせられるとは思えない。
距離を詰めて、ハイキック……んがー!
意味も無く悶える。
方向を変えよう。
薙刀を持ってるからガードが下がって……。
あ。
1つ思いつく。
これだったら行けるか?
後は細かい所の防御を……。
うんうん唸りながら、俺は戦略を詰めて行った。
翌日。
今日は別の人との模擬戦トレーニング。
相手はアグリス。
ヌンチャクかトンファーかどっちとも取れない武器を持っている、身長がかなりでかいおじさんだ。
攻撃力が物凄く高いけど、動きが若干遅いって言うのは今日の朝、アユムから仕入れた(記憶を共有した)情報だ。
「おらーいくぜ新入り!」
後、とにかく人の名前を覚えないらしいから、アグリスの前で雑魚ボスって言うのはマジで止めろとアユムに胸ぐらを掴まれた。
攻撃を避け、ボディにパンチをお見舞いする。
少しだけ動きが悪くなりながらも、アグリスはトンファーで反撃してくるけど、これくらいの速度なら簡単に避けられる。
当たったら多分倒れると思うけど、速さで言えば昨日戦ったサナルよりは遅い。
引いたと見せかけ、今度はハイキックをアグリスの顎に見舞う。
「ぐあっ!」
ふらつくアグリスになら、30㎝位の身長差、体重差がある状況でも簡単にタックルは決めれる。
倒したアグリスの顔の前に拳が来たところで決着がつく。
「流石じゃねえか新入り」
「ありがとうございます」
ゆっくりと起き上がったアグリスと握手を交わす。
「流石ダンナとあれだけやり合っただけはあるな。坊主」
新入りから坊主に進化したみたいだ。
とりあえず、分析が出来るようになった事で事前準備が出来るようになったのは本当に良かった。
何とかなるもんだなぁとホッとする一方、サナルみたいな相手に勝てるまで何も言えないもどかしさが交錯する。
「坊主位の腕なら祭典も出れるかもしれねえな」
「祭典?」
初めて聞いたそぶりを見せながらも、内心来たと思った。
「何だ聞いてねえのか。全世界の傭兵や魔導士が集まって戦う祭典。デュエロス・パートル。各国の魔導士と傭兵が1人ずつ出場するお祭りだ」
魔導士って言うのは魔法使いの事だろう。
大会に出て来るのか……。
「今回の祭典はどこも相当気合い入れて来るみたいだからな。そんな中でも坊主なら勝っていけるだろうな」
どこも気合い入れて来るのか……。
いずれにせよ、多分サナルを倒さないと祭典には出れなそうだ。
「サナルに勝ちたいんか? 坊主」
「対策は色々考えてます。昨日は完敗って言って良い内容でしたから」
「旦那に勝つ手段を見出してるのか」
「どう言う事ですか?」
「俺に勝つ事は出来ねえ。そんな旦那に勝つ手段があるのかってな。まあ、頑張りな坊主」
諦めたような苦笑い。
「負けて悔しくは無いんですか?」
「坊主も負けたろ? 旦那の強さは一級品だぜ? 口が達者なのぁわりい事じゃねえが事実は受け止めねえとな」
イラっとする。
事実は受け止める。
それは正しい。
でも、負ける事が当たり前に思ってるのは絶対違う。
そんだけ凄い攻撃力持ってるのに。
自分を信じれない事にムカつく。
「アグリスが勝てないって思う相手に、ぜひ勝ってみたくなりました」
「何だと?」
アグリスに詰め寄られるけど、負けるのを分かって戦ってる奴なんか怖くない。
「勝てないって思う相手がいるなら、もう戦う事なんて辞めた方が良いです」
「てめぇ……言わせておけばなあ!」
「なら、次に俺が勝つとこ見てて下さいよ」
「あん?」
人をあんまり煽りたくないけど。
「アグリスが倒せないと認めたサナルを倒すところを見てろって言ってんだよこの馬鹿野郎(# ゜Д゜)」
無意識の内にアグリスの胸倉を掴む。
「勝とうと思わない! 勝つ覚悟の無い奴が勝てるわけねーだろ(# ゜Д゜)」
ハッとして慌ててアグリスから手を離す。
「す、すみません偉そうに……」
「いや、気にすんな……」
「俺は俺がやりたい事をやるため。それと恩返しがしたい。だからここに来たんです」
支えてくれた全ての人のためになんて事は。
達成してから言えば良い。
言って良い資格のある言葉と資格の無い言葉ってあるよね……?
アグリスは笑った。
「ははは! 確かにそうだ! こいつは大物だ!」
アグリスに肩を叩かれる。
「すまねえな。おめえはそれだけ覚悟を決めて来たって事だよな。 ……バカにして悪かったよ坊主」
「いえ……」
「今度旦那とやる時、勝つって事で見ておくぜ。その覚悟と一緒にな」




