チート魔法その7 インビジブルⅠⅠ
膝のフェイントからの左アッパー。
タックルも考慮するなら頭が普通の選手よりも若干下がる。
アッパーは避けられながらも顎にかするように入る。
右フックでのカウンターをしゃがんで右回転しながら避け、胴回し回転蹴りでラムジーの右顎を狙う。
顎かどうかは分からないけど、確かな手ごたえを感じ……なっ!?
振り返った先に拳。
回転の威力と拳の威力が合わさり、俺の右顎をもろに捉える。
まさか、胴回し回転蹴りに左ストレートを合わせて来たのか!?
って言うかまずい!
頭がグラグラする中、素早く起き上がりながらヒールを使って距離を取る。
思った通り、目に見えてるラムジーは動かなくなる。
闇雲に動いたら危険だ。
目を閉じ、音に集中する。
音がなるはず。
別の透明分身体がいたとしても。
例え魔法だったとしても。
ザッ。
……来た。
この音。
俺が動かなくなったのに警戒してるな。
後ろを向き、構え直す。
音のする後方。
タン。
地面を蹴るような音の直後、左頬に刃の感触。
体勢を低くしながら時計回りに頭を動かして避け、右ボディからの打ち上げるように左ストレート。
「クッ!」
1mほど距離を取る。
確かな手応え。
同時に音がしなくなった。
音に注意を払いながら、本体を見る。
……まだ動いてない。
ザザ。
代わりに今度は本体の方から足を滑らせるような音。
俺は体を再び本体の方に向け、距離を離す。
今度は目を閉じない。
攻撃が当たった直後に反対方向から動く音がしたって事は、分身体が少なくとも2体以上いるって事。
やっぱり本体を守る分身を用意してたな。
この分身体を倒せば、本体が今度は動けるようになる可能性がある。
目を閉じたままだと単純な攻撃の回避は出来るけど、攻撃後のカウンターまで構う余裕が無い。
タン。
地面を蹴る音の直後、メリケンサックの先が右顎に触れる感触を感じる。
左に避けながら手を掴み、背負い投げの要領で投げ飛ばす。
観客からの大声援の中、すぐさまラムジーに向き直る。
「おおーっとフェルマー選手! さっきから何も無いところで技を連発しておりましたが、動かなかったラムジー選手の時が動き出したぞ!? こ、これは……」
「……何者だ。君は」
本体が短剣を構える。
2体だったか。
「ただのキングオブレーンです」
魔法は破った。
そうみて良いだろう。
だけど、ラムジーはメリケンサック付きの短剣持ち。
俺と同じ近距離タイプ。
~アユムの視点~
予想通りの魔法だったようだ。
だけどそこで終わりじゃない。
今までのは相手の切り札を崩すための対策に過ぎない。
要はここからはフェルマーが上位魔法をラムジーに使わせない限り、純粋な蹴り、殴り、ナイフを使った戦いになる。
しかも、フェルマーの胴回し回転蹴りに打ち下ろしのストレートを顎に合わせられるレベルの相手。
だから。
こっからが本当の闘い。
「……どっちが勝ちますかね」
「フェルマーです」
ステラの問いに即答する。
だけどそんな事、私にだって分からない。
近接戦闘でダメージを受けているのはフェルマーの方。
心配そうにこっちを見るホムラを。
抱きしめて決闘の様子を。
目を逸らさずに見守る事しかできなかった。




