表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デイミウールゲイン  作者: イブキ
26/46

25.暗転

「時々3人で何か話してると思ったら、厄介なことになってたんだね」

「でも、これといって何事もなく解決して良かったです」


 事件解決から数日後、訓練場で小休憩をとっていると、事情を聞いたらしいカラムさんに話しかけられた。


「まあ、ナギちゃんを狙った時点で騎士団を敵にしたようなものだから、犯人に未来はなかったね」

「ええ? そこまで言いますか」

「そうだよ。僕ならとっとと逃げるか諦めて降参するね。それに、隊長とフレデリックが直接手を下したわけだろう?」

「お2人ともなんだかすごく怒ってて怖かったです」

「たぶん騎士団長の次くらいに怒らせると不味い2人だしね」

「そ、そんなにですか」

「合理的な分、容赦がないから」


 それはなんとなくわかるような気がする。


「それに、隊長はもとより、フレデリックも結構やる方なんだよ。第2部隊で副隊長をやるなら、コネリーさんかフレデリックか、といったところだね」

「そういえばクリュスタロスの時にも選ばれてましたもんね」

「ああ。あいつは確か学術院を首席で卒業しているはずだ。回復魔法だけでなく、剣の腕も確かだよ」

「え! 実はすごい人だったんですね」

「まぁ、それでも隊長ほどではないけどね」


 そういえばフレデリックさんとはまだ対戦をしたことがない。今度やってみようかと思っていると、アントンさんがやってきた。


「あ、ナギさん、いたいた。クルト隊長が呼んでいたよ」

「わかりました。詰所ですか?」

「騎士団長の執務室まで来てほしいそうだ」

「了解です」


 私は訓練場を出ると執務エリアへ向かった。今や城の構造はすっかり頭に入り、行きたい所へ最短ルートで向かえるようになった。地味に方向感覚に自信が無い私にしては頑張ったと思う。


 訓練場から執務エリアへ向かうには、入口広間を通る必要がある。城は市役所のようなところも兼ねているので、城に勤めている人だけでなく、街の一般市民の姿もよく見かける場所だ。


 ちょうどその広間に入ったあたりで、1人の男の人に目が留まった。


(あれ……どこかで見たような)


 鎧や武器は身に付けていないので、一般市民だろうか。であれば街のどこかの店で見た顔なのかもしれないけれど、どこだったか思い出せない。うつむいて、誰かを待っているといった風だ。


(うーん? まあいいか)


 すると、徐にその男の人が顔を上げて目が合った。そのままこちらの方へ歩いてくる。やはり相手も私を知っている様子だけど、待ち人は私だったのだろうか。



「ナギ、先日の件で騎士団長がお呼びだ。執務室へ来てくれ」


 執務エリアの方から歩いてきたクルトさんに声をかけられた。


「あ、はい。今向かい──────」



『インアクティビティ』



「え?」


 近づいてきた男の人が何か言った。途端に、身体が重くなって視界が暗転した。


(え、なに?)


 立っていられなくなり、その場に倒れ込んだ。誰かが悲鳴をあげる。


「ナギ!? 貴様、なにをした!? この者を拘束せよ!!!」


 クルトさんの怒声と、複数の人の足音が聞こえる。


「ナギ! 聞こえるか?」


 クルトさんに抱き起こされたのはわかったけれど、口が動かなくて返事をしたくてもできない。


(なに、が……)


「ナギ!!……」


 段々思考が動かなくなり、クルトさんの声も聞こえなくなる。


(これ、は……まず……)


 そして、私の意識は途絶えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ