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デイミウールゲイン  作者: イブキ
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14.レイド

 ロット鉱山に到着した。入口付近には所狭しと鉱石や採掘道具が置かれている。休憩所のようなものもあるが、鉱員は全員避難しているため、今は誰もいない。


「斥候がルートに目印をつけている。行くぞ」


 鉱山内部は意外と明るかった。ランプのようなものがあるわけではなく、全体がぼんやりと光っているみたいだ。


「何故明るいんだろ?」

「この鉱山で採れる鉱石には発光物質が含まれているからね」


 半分独り言にこたえてくれたのは、フレデリックさんだ。


「魔力を込めると光が強くなるから、それを利用して照明に使われることもあるんだよ。ほら」


 そう言ってフレデリックさんが近くの壁に手を触れると、そこだけ光が強くなった。


「おお。面白い」

「僕からすると、面白いのはナギさんの方だけどね」

「え?」

「先ほどの戦術といい高度なことを知っているかと思いきや、こういった誰でも知っていることを知らなかったりする」


 ゲームの知識はあるけれど、この世界ならではの知識はほとんど無いに等しいのだから仕方がない。


「無知なのは承知しています……。色々教えてもらえますか」

「もちろんだとも。それに、そのくらいの方がかわいらしいと思うよ」

「な、……」

「ナギ、フレデリック。任務中だ」


 クルトさんに睨まれてしまった。どうもこの世界の人はストレートにほめ言葉を口にする傾向があって面食らう。


「相変わらずクルトは堅いねー。ガチガチに緊張しているよりずっといいじゃないの」


 ケリー隊長だ。


「ナギちゃんって呼んでもいいかな?」

「どうぞ」

「ナギちゃんが1人で先行して引き付けるって聞いたのだけど、大丈夫なの?」

「何度かやったことあるので、たぶん大丈夫です」

「そういえば倒したことがあるって言ってたっけ。前は傭兵でもやっていたの?」

「えっと……」


 ここは齟齬の無いように話しておいた方がいいだろう。


「実は私、あまり自分自身のことを覚えていなくて。戦闘に関する知識だけはあるんですけど、具体的に自分がいつどこで何をしてっていうのがわからないんです」

「まあ。どうしてそんなことに?」

「それもわからないんです。それで困っていたところを、クルト隊長に助けてもらって」

「そうだったの」


 ケリーさんはクルトさんを興味深そうに見やった。クルトさんはなんだか気まずそうだ。


「ナギちゃんの負担ができるだけ軽く済むよう、全力を尽くすわ」

「ありがとうございます」




 ほどなくして、ひと際明るいエリアに到着した。鉱山内だというのに昼間の外のような明るさだ。それまでの通路のようなところと違い広間のようになっていて、ちょっとした体育館くらいの広さがある。


 その奥の方に、クリュスタロスが居た。話に聞いていた通り、動く素振りはない。


「鉱員が新しい採掘ルートを掘り進めていたところ、まるで巨大な岩で塞がれているような場所に突き当たったのだそうだ。その岩を取り除いてみたところ、このようになっていたらしい」

「封印でもされていたのでしょうか?」

「不明だ。調査する必要はあるが、まずはあれをどうにかしてからだな」



 そして、各人に役割が割り振られていく。私はタンク役、ケリー隊長やコネリーさんは近接攻撃役、フレデリックさんは回復役、クルトさんやアーロンさんは全体のフォロー役といった風に、得意分野を活かす感じだ。


 戦闘を始める前に、私は手近にあった石を投げていくつか「ばみり」を作った。


『クリスタルウォール』


 作った「ばみり」の周りに複数の水晶の壁が出現する。これをブレス避けにしたり足場にしたりするのだ。


「それではいきます。合図するまで攻撃は控えてください」

「承知した」


 私はクリュスタロスに向かって駆け出した。“プロテクション”や“フェザーステップ”といったバフがたくさん飛んでくる。


 ちょうど魔法の射程範囲に入ったあたりで、クリュスタロスが動いた。


『スロウ』

『フール』

『パワーダウン』

『ディフェンスブレイク』


 走りながら立て続けにステータスを下げる魔法をかけると、クリュスタロスが首を後ろに下げた。ブレスの予備動作だ。


『フライ』


 飛行した瞬間、それまで私が居た場所に向けてブレスが放たれた。ブレスはそのまま空中に居る私を追尾してきたが、回避して接近する。


『シールド』


 1回の戦闘中あらゆる攻撃を1度だけ無効化する魔法を唱えて、クリュスタロスの頭に取り付き、鼻っ柱に剣の大技“気崩壊衝”を叩きこんだ。地面に突き立てるようなモーションのため他のスキルと繋げることができないが、一撃の威力が大きいスキルだ。


「グオオオオオオオ!」


 咆哮と共にブレスと同じ威力を持つ蒼い炎が私に襲い掛かる。しかし、“シールド”で無効化されて無傷だ。“気崩壊衝”でもおそらくダメージはあまり与えられていないけれど、ファーストアタックにはなったので、これだけでだいぶ引き付けられたと思う。いったん離れてクリスタルウォールの後ろに退避する。ブレスが放たれるが私には届かない。


 ブレスが止んだタイミングを見計らって壁の上に飛び乗り、そのまま跳躍して頭部に“強撃”を放つ。鱗に弾かれるが気にしない。すると、尻尾がブンと振られるのが見えた。360度回転攻撃の予備動作だ。再び跳躍してクリュスタロスの背に飛び乗ると、そのままぐるんと視界が回る。止まったところで再び頭部に取り付き、剣スキルを連続して放つと、クリュスタロスは再び首を後ろに下げた。


『アシッドミスト』


 ブレスが放たれる前に頭部に継続ダメージを入れて、壁の後ろに退避する。今回は暗闇効果が発動すると宜しくない状況だが、クリュスタロスには高い耐性があるので問題ないはずだ。そして、そろそろクリスタルウォールの耐久がなくなる頃だ。私は一度深呼吸すると、壁から飛び出した。


『ディストラクション』

『メテオ』


 ブレスに追いつかれる前に最高レベルの攻撃魔法を頭部に放ち、“フライ”で空中へ退避する。


『ブースト』


 短時間移動速度を大幅に上昇させる魔法を使い、ブレスを振り切って再びクリュスタロスの頭部へ急接近する。そのまま連続攻撃を加えると、頭部の鱗がはがれた。もう充分だろう。


「攻撃開始してください!!」


 距離を取ってブレスを空中で回避しながら合図すると、待機していた騎士たちが一斉に攻撃を開始した。ドラゴンのコアは尻尾の付け根のあたりにあるため、そこを集中攻撃だ。


「うおおおおおおお!」

「はあああああああ!」


 コネリーさんとケリー隊長が近接攻撃役の先陣を切って掛け声と共に“強撃”を放つのが見える。やはり剣攻撃の初手としては使いやすいスキルなのだろう。クルトさんやアーロンさんは攻撃を加えながら、バフをかけ直したり回復をしたりと全体を見て立ちまわり、時おり指示を与えているようだ。


 騎士の攻撃が始まってもクリュスタロスのブレスは私に向けられたままだ。これでいい。私は空中で回避しながら、継続して頭部に攻撃魔法を撃つ。頭部を狙うのは、そこに攻撃を加えた者を一番に狙うというクリュスタロスの習性を利用するためだ。尻尾による攻撃や足元の踏みつけ、引っかき攻撃などは騎士たちを傷つけるが、即死するほどではないので後方に待機している回復役が癒していく。


 ほどなくして、鱗が剥がれコアが現れた。すぐさま近接攻撃役がコアへの攻撃を始める。思ったよりもかなり早い。流石精鋭揃いだ。



 ──────と、ここで予想外のことが起きた。



 クリュスタロスの全身が赤く発光し始めたのだ。このような前兆は見たことがない。長年のゲーマーとしての勘か、すさまじく嫌な予感がする。


「な、何か来ます! 退避してください!」

「もうすぐ破壊できる!」


 コアを攻撃していたコネリーさんから返事があったが、私の中の警鐘は鳴りやまない。



 そして、コアが破壊されるその瞬間、ふっと発光が消えた。



(──────まずい)



『エヴァーキュレーション!!!』



 咄嗟に緊急離脱魔法を唱えると同時に、クリュスタロスが自爆した。


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