0.プロローグ
Amida Kuzi:外、風の音マジやばい
Hara Kaz:こっちの方はまだ平気だなあ
私がオンラインゲーム「Aslan」にログインすると、ギルドチャットではそのような会話がされているところだった。現在日本には季節外れの大型台風が上陸中で、マンションの外は暴風雨でものすごい音がしている。
台風など雷が怖い時は、なるべくPCの電源を落としてコンセントやケーブル類を全て抜いておいた方が良いことは知っている。しかし、今日はギルドの皆とレイドモンスターを倒す約束をしていたのだ。皆社会人で忙しく、予定を合わせられるタイミングは無駄にしたくない。
Nagi Nagia:こんばんは 台風うちの方も今やばいっす
Hara Kaz:ばんわー
Amida Kuzi:やほー ナギっち関東だっけか
Nagi Nagia:はい
Amida Kuzi:ハラんとこは夜中の2時くらいに中心らしいよ
Hara Kaz:うーん寝られるかな
Nagi Nagia:停電とかしないですかね?
Amida Kuzi:やばいかもしれん
Hara Kaz:あ、タコスミートさん、電車遅延してて遅れるってツイッターで
Amida Kuzi:しまちゃんも同じみたい
Nagi Nagia:りょうかいです
そんなことをチャットで話しながらメンツが揃うのを待っていると、突然PCの電源が落ちて部屋の中が真っ暗になった。停電だ。懸念していたとおりになってしまったか。
暗闇の中スマホを探してSNSを開き、停電したので今日はもうログインできないかもしれないことを仲間に謝る。
そして、どうせログインできないのなら一応コンセントなどを抜いておくことにしようと、机の下に潜り込んでスマホの明かりを頼りにケーブルに手を触れた瞬間、バチッと火花が散った。
やばいショートした、と思った次の瞬間──────
私は森の中にいた。