最終話 真っ白な雪と…!
最終話 真っ白な雪と…!
外は雪が降りはじめたと、父が慌てていた。
さっきから降っていたことはあえて口出ししなかった。
ソワソワと落ち着かない様子なのは、理解できる。
今日は、姉の結婚式だ。
私は余興で弾くバイオリンの調弦も終わり、会場を見回した。
探しているのは、マスターだ。
「マスター!今日はご来場ありがとうございます!マスターがスーツ!ぐふふふ!」
「おい、みちる、笑うな」
「似合ってますよ!」
「顔に似合っとらんと書いとるぞ!こら!」
「ぐふふふ、バレたか!
そしたら、またあとで!」
マスターと、ハイタッチをした。
私は、姉のいる控え室に向かった。
ドアの前に立って、ノックする。
「お姉ちゃん、みちるー!ねぇ、まだ?」
「お待たせ!いーよー!開けて!」
ドアを開けると、鏡の前にウェディングドレス姿の姉が立っていた。
細やかな花の刺繍が入っていて、真っ白な美しいドレスだった。
「お姉ちゃん、キレイ!」
「ありがとう、見て!お尻のリボン大きくて可愛いかでしょう?お腹がちょっと大きくなってるからリボンを大きくしてみたとさ」
「可愛い!本当にキレイ!」
姉のあまりの美しさに言葉が出てこなかった。
「みちる、ウェディングネイル、お願いします!」
「はい!花嫁様!」
私はバックから始めに、昨日作ってきた、エンボスアート用の白い花のパーツを取り出した 。
「お姉ちゃん、私の夢叶えてくれて、ありがとう」
「夢?」
「ネイリストにとって一番の夢っていうのは、たぶん、
ウェディングネイルやと思うとさ」
「そっか!こっちこそ、ありがとう」
私は姉の微笑みに、胸が熱くなった。
エンボスアートとは、立体化したパーツのことをいう。
今回の物は、花びらがよく開いたものとツボミのものを作った。
それからテーブルセッティングがおわると、コットンとエタノールのスプレーを持って姉を見た。
「必殺!手指消毒!!」
「はいはい!合格!」
姉が半分呆れて笑った。
これからするネイルで、その呆れを取り戻そう。
「左の薬指の爪に派手に3Dアートしたら、ダメよね」
私はネイルケアをしながら、冗談を飛ばす。
「指輪、はいらんわ!」
姉の緊張はこれで解けただろう。
いつもよりももっと、素敵な爪になりますようにと祈りを込めた。
完ケツ