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第3幕:役に立たない

初異世界。興奮しますね

 近くで獣の遠吠えが聞こえ、その声でシュートは意識を取り戻す。周囲を見回すと一面木々に覆われており、空を見上げると黒々とした夜空に星が煌めいている。どうやら森の中で、しかも夜に転生したようである。早くも嫌な予感が……というか、普通は街や村といった比較的安全な場所に送ってくれるんじゃないのか? 我ながら情けないが、転生して数十秒で神様コールを行う。まずは安全確保が優先である。そもそも町でこの世界の社会情報や冒険に関する知識をしっかりと集めてから冒険をする予定だったのに……文句を言ってやる。


 しばらくするとヒルダにつながった。

「もしもし? なんか用? 転生してすぐ電話してくるなんて早すぎるわよバカ」

 あまりにも早すぎるヘルプにヒルダが悪態をついてくるが、無視してこちらの要件を的確に伝える。


「ヒルダ、いきなり森に飛ばされたんだが、一体どうなってんだ? 普通は村とか街とかに送ってくれるんじゃないのか?」

 すると恐ろしい返答が返ってきた。


「わ、わかんないよそんなの! あたしだって人を転移させるの初めてだったんだから」

 どうやらこちらの世界での冒険用に新しい肉体を用意してくれたそうなのだが、初めての事でよくわからない所に飛ばしてしまったんだそうだ。本当にポンコツ過ぎる……


「おい! いきなりやばいんだって! 夜の、しかも森で不用意に動いたらどうなるか分からない。獣に襲われる可能性もあるし……。とりあえず、安全確保をしたいので町か村の場所が聞きたい。教えてほしい!」


「そんなのあたしが知るわけないでしょ。人間の世界なんて降りたことなんかないし……」

 神様コール、早くも役に立たない。そうこうしているうちに獣の声は大きくなってきた。足音や息遣いから考えて群れのようである。


「わかった。ありがとう。とりあえずピンチが訪れそうな予感がするので集中したい。もう切るぞ。」

 俺は狼の様な獣の姿を確認すると出来るだけ息を殺し足音を消しながら静かにその場を離れ始めた。この場合、獣も血の匂いがしなければ追ってこないのではないだろうか? 後は、獣から逃げるのはいいのだが、目的地が分からないまま夜の森をさまようのは危険なのでどうにかしたいところだが……。


 気を付けているつもりではあったが暗い夜の森である。足元にある窪みなどに気づけないこともある。俺は盛大に転んでしまい、落ちている枝や葉を踏んで大きな音を立ててしまった。周囲の生物が音の出どころを探り警戒する。すると周囲の様子が変わったことを察知した先ほどの獣の群れがこちらに向かってくる。やばい! こっちにきた。俺は焦りながらも慎重にその場を離れようとしたが、顔に葉っぱがぶつかり鼻がムズムズしてくしゃみをしてしまった。


 獣は完全にこちらに気づいてしまった様ですでに戦闘態勢に入っている。かなりマズい。もはや慎重に行動してる場合ではなくなってしまい、俺は全速力で逃げ出した。夜の森で不用意に走り回るな、とか言っている場合ではない。目の前の命の危険を回避する為に、とにかく安全な場所へ行かなければ。獣はものすごい速さで追いかけてきており、追いつかれるのも時間の問題だった。俺は途中で洞窟を見つけてそこに隠れ潜んだ。暗闇でうまく紛れてやり過ごせないかと考えたのだ。しかし、相手は野生の獣、夜に活動をすることも多々ある為、夜目も利くのだ。俺の姿はすぐに見つかってしまった。


 絶体絶命だった。俺はもう後々使う事があるかもしれないから大切に取っておこうと思った神の奇跡の使用を決める。エリクサー症候群にかかっている場合ではない、急いで神の奇跡のアプリを使用した。すると、頭の中にどのような奇跡が起こるのかその情報が流れてくる。どうやら、目覚めた場所に転移するという奇跡が発動するようだ。なんかドラ〇エのル〇ラみたいな奇跡だなと思ったのが運の尽きだった。俺はおもいっきり洞窟の天井に頭をぶつけて悶絶した。


 こういうところまで再現してるんじゃねーよ! マジでふざけんな。心の中でヒルダをクソみそに罵るも、そんなことをしても依然として危機は去るはずもない。もうダメだ……。俺は地面に横たわり、完全に諦めモードに入った。獣が俺に一斉に飛び掛かってくる。すると次の瞬間、獣が一瞬で肉塊に変わった。腹部に収まっているはずの臓器が飛び出ていてかなりグロテスクで気持ち悪い。これは現実なんだと引き戻された気がして、先程生きることを諦めていた自分が浅はかだと思うと同時に生き残れたことに安堵した。


「こんなところで装備も持たずに何を考えてるんだ!」

 大剣を持った茶色い長髪の女性が俺を叱責する。


「た、助かった。これが神の奇跡か……」

 俺は、ヒルダの役に立たない奇跡よりもよっぽどありがたみのある運命のいたずらに感謝した。






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