動乱
どうしてしてこうなった?
彼女の前で繰り広げられている大規模な闘い……いや喧嘩と言うべきか?
40対40(上級生対下級生)の争い。それぞれが持つ物は箒やモップ等という生易しいモノ では無く最低でも木刀である。
以前に比べたら穏やかな生活だったのに……と小さく零した言葉は周囲の喧騒にかき消された。
最も普通の大きさの声であっても聞える事は無かっただろう、その位周囲には怒声や破壊音などが響いている。
その瞬間彼女の頭が反った。いや、首から上が。それと同時に左眼のモノクル(片眼鏡)が吹き飛び床に落ちた。
自らの意思では無く、前方からの力によって。
飛んできたのは硬質ゴム弾だ。 暴徒鎮圧用のそれは傷をなるべく付けず、痛みによる戦意喪失を目的としたもの……だがリオにしてみれば大した痛みではない。痛い事に変わりは無いが。
「悪戯が……過ぎる……よ?」
ゆらりと動きだした彼女の全身からは禍々しい気配が迸る。
「リオがキレた。離れろっ。巻き添えを食らうぞ」
禍々しい気配に気付いたシャルルが叫ぶ。と同時に可能な者は離脱し不可能な者は回避に専念する。
「お仕置……だよ……ね?」
ゆらり、ゆらりと幽鬼の様に進むのをチャンスとばかりに降り注ぐゴム弾を、回避し或いは弾き、確実に進む。
「はっ。ガキが切れたところで大したことねぇよ。この大剣でぶちのめしてやる」